もやもや病
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もやもや病のデータ
ICD-10I675
統計出典:WHO
世界の患者数
日本の患者数15,177人
(2012年)[1]
○○学会
日本日本脳神経外科学会
世界 ⇒アジア脳神経外科学会
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もやもや病
概要
診療科神経学
分類および外部参照情報
ICD-10I67.5
ICD-9-CM437.5
OMIM252350
DiseasesDB8384
eMedicineneuro/616
Patient UKもやもや病
MeSHD009072
KEGG 疾患H01396
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脳底の動脈の模式図

もやもや病(もやもやびょう、: Moyamoya disease[注釈 1][2])は、脳底部に異常血管網がみられる脳血管障害。脳血管造影の画像において、異常血管網が煙草のようにモヤモヤして見えることからこの病名となっている。

2002年度(平成14年度)まではウィリス動脈輪閉塞症(ウィリスどうみゃくりんへいそくしょう)が日本における正式な疾患呼称だった。
定義

もやもや病の本質的な病態は、内頸動脈終末部の進行性狭窄・閉塞である。もやもや血管は主幹動脈の閉塞により代償的に穿通枝などが異常に拡張した側副血行路である。診断基準によれば脳血管造影で以下の所見を呈するものをいう。

頭蓋内内頸動脈終末部、前・中大脳動脈近位部に狭窄または閉塞がある

狭窄または閉塞部分付近に異常血管網が発達している

このような現象が両側性に見られる

医学上の定義と社会福祉制度上もしくは運用上の定義は、2014年時点の日本国では、必ずしも一致していない。もやもや病の症状を確認できた場合でも、動脈硬化が原因と考えられる内頚動脈閉塞性病変、自己免疫性疾患髄膜炎脳腫瘍ダウン症候群フォンレックリングハウゼン病、頭部外傷、頭部放射線照射の既往、その他のもやもや病以外の原因が特定される脳血管病変がある場合は、難病認定から除外されることがある[1]第2次安倍内閣施政下の2014年5月20日、小西洋之参議院厚生労働委員会で、「もやもや病の小児患者が投薬治療などを受けているときに投薬などが原因で難病を発症した場合、難病の助成対象にならないことが懸念されている。難病は難病であって当然制度の対象にならなければおかしい」と質した。これに対し政府委員の佐藤利信(当時厚労省健康局長)は、「現時点では原因が特定できる患者については制度救済対象にならない。難病対策は発症メカニズムが明らかでないときに医療費助成と一体となった研究をすることを目的としている」と答弁した[3]
症状・病態

無症状で偶然発見されるものから固定制神経症状を起こすものまで、症状は軽重多岐にわたる[1]。脳の動脈に狭窄があると、当該血管支配領域の脳は血液不足(虚血)に陥る。そこで代償的に新たな血管(もやもや血管)が構築される。しかしこれらの血管は細く、脳虚血・または脳出血に起因する種々の発作の原因となる。

虚血の発作は過換気(過呼吸)が原因で起こる。過換気状態になると血液中の二酸化炭素分圧が低下する。二酸化炭素は血管を拡張させる働きがあるので、これが減少すると血管が収縮する。すると、元々細い異常血管網(もやもや血管)はさらに収縮を起こして脳に送るべき酸素の供給が不足する状態になる。こうして失神や脱力発作が起こる。典型的な過換気状態は、熱い蕎麦ラーメンなどを冷ます「吹き冷まし」行為や、啼泣、リコーダーピアニカなどの吹奏楽器演奏時など、必要以上の呼吸を伴う動作で発生する。また、成人発症例では動脈硬化が関与して狭窄を引き起こすものと考えられている。

一方出血の発作は、脳の血液需要に応じるための大量の血液を送る血管(もやもや血管)が細いために破綻するものと考えられている。成人発症例に多い。

出血箇所が悪い場合、致命傷となる。また、成人に近い成長期に出血すると脳全体に脳浮腫(加速的な腫れ)を発症し、多くの場合、助からない。最も留意すべきは補助的に作られた即席・もやもや血管は壁が薄く破れやすい所にある。本疾患は原則両側性に起こるが、その程度は様々である。一方の内頸動脈の狭窄は重度であるがもう一方は極めて軽度であるということもある。

小児例では脳虚血症状が大半を占め、成人例には頭蓋内出血をきたす例が30-40%みられる[1]。以下、初発症状で多いものを示す。
小児例

意識障害
[1]失神

脱力発作(四肢麻痺、片麻痺、単麻痺)[1]

感覚異常[1]

不随意運動[1]痙攣

知能障害

反復性の頭痛

成人例

脳出血(脳室内出血、くも膜下出血、脳内出血[1])

脳梗塞

片麻痺

頭痛

意識障害

脳血栓

合併症

小児例では知能障害、成人例では脳出血
病理組織学

病理組織学的にはウィリス動脈輪を構成する血管の低形成を示し、著名な内弾性板の蛇行、内膜の線維性肥厚による内腔狭窄を認める。動脈瘤血栓形成を伴うこともある。
原因

社会保障制度上は「原因不明の疾患」ということになっている[1]。原因となる感受性遺伝子はRNF213遺伝子の多型p.R4810Kである(感受性遺伝子とは疾患への感受性を高める遺伝子をいい、遺伝子異常だけで起こる原因遺伝子とは区別される)[4]。RNF213をクローニングしたゲノムは591-kDaの細胞質に存在するタンパクをコードしており、ゼブラフィッシュによって発達期にこの遺伝子の発現を抑制すると、頭蓋内の眼動脈や脊椎動脈の分岐の異常が出ることから、血管形成に重要な新たな遺伝子であることも分かった。また、この遺伝子を持っている人が全て発症するわけでなく、環境要因の関与も疑われている。さらにp.R4810Kは推定1万5千年の中国韓国、日本共通の祖先にまでにさかのぼることも分かり、東アジアの歴史の中で広がっていった遺伝子であることも分かった。

2019年2月1日、京都産業大学の研究グループが、発症のメカニズムの一部を特定し、2019年1月31日付けで、細胞生物学の専門誌「The Journal of Cell Biology」(ロックフェラー大学出版)のオンライン速報版に公開したことを発表した。「もやもや病」の遺伝的なリスク要因として新規遺伝子ミステリン(別名RNF213)の変異が同定され、この変異により「もやもや病」の罹患率は100倍以上、上昇する。この遺伝子の生理機能および変異によって生じる病態機能を突き止めるため、ミステリン遺伝子の分子クローニングを初めて行い、その後も継続して機能解析を続けてきた。ミステリンの酵素活性や分子構造などを明らかにしてきたが、今回、ミステリンが細胞内の脂肪貯蔵部位である「脂肪滴」に局在して、脂肪分解酵素から脂肪滴を保護し、細胞内の脂肪蓄積を増やすはたらきを持つ「脂肪代謝の制御因子」であることを突き止めた。脂肪が過剰に蓄積した肥満状態が、動脈硬化や糖尿病を含む種々の生活習慣病を引き起こすことが知られているが、これまで「もやもや病患者」において顕著な脂質代謝異常は見いだされておらず、もやもや病と脂質代謝の関係について着目されていなかった。今回の発見は「もやもや病」が代謝バランスの異常によって引き起こされる疾患である可能性を示唆しており、今後、「もやもや病」と「代謝異常」の関連について研究が進むことが期待される[5]
統計

年間発症率は10万人あたり0.35-0.5人と推定されている。日本では年間約400-500人程度の新患の登録があり、2012年時点で15,177人の医療受給者証保持者がおり[1]、実際の発症者人数はそれよりも多いと推定される。


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