むすめごころ
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夕映少女
著者
川端康成
イラスト装幀:石井友太郎
発行日1946年 4月25日
発行元円頂書房
ジャンル短編小説
日本
言語日本語
形態上製本
ページ数266

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『夕映少女』(ゆうばえしょうじょ)は、川端康成短編小説。海岸の保養地を舞台に、夕映えのように美しい少女と胸を患う少年の悲しい恋愛と、その2人の結末を眺めていた不思議な性格の窃視症の女と、少女の肖像画を描いた画家夫婦の絡まりを、一人の男の視点で描いた物語[1]。夕映えの海辺で振り向いた少女の画像が印象的な、哀しく美しい趣の作品となっている[1]。作中に登場する「夕映少女」は、川端作品に通じる主題である「純潔な少女」の象徴ともなっている[2]

2008年(平成20年)1月26日に船曳真珠監督によりオムニバス映画夕映え少女』の4話目として映画化された。
目次

1 発表経過

2 あらすじ

3 登場人物

4 作品評価・解説

5 映画化

6 関連作品

6.1 むすめごころ

6.1.1 翻案作品


6.2 イタリアの歌

6.2.1 翻案作品


6.3 童謡

6.4 金塊

6.5 浅草の姉妹

6.5.1 翻案作品


6.6 正月三ヶ日


7 おもな刊行本

8 脚注

8.1 注釈

8.2 出典


9 参考文献

発表経過

1936年(昭和11年)、スタア社発行の雑誌『333』12月号に掲載され[注釈 1]、翌年1937年(昭和12年)6月12日に創元社より刊行の『雪國』に収録された。その後1946年(昭和21年)4月25日に単行本『夕映少女』が丹頂書房より刊行された。なお、1977年(昭和52年)刊行の集英社文庫版などは『夕映え少女』と表記されているが、1980年(昭和55年)刊行の新版『川端康成全集第5巻』では原題通り『夕映少女』となっている。
あらすじ

海岸が近い松林の別荘保養地にやって来た瀬沼は、ある日曜日の夕方散歩中、海岸で美しい少女を見かけた。自転車を止めて弟と一緒に夕日を見ていた少女がこちらを振り向いた瞬間、瀬沼はこの前見た展覧会の絵の少女が彼女だとすぐに分かった。鷹のように光っている目の美しいその少女は、阪見という家の令嬢で、体の弱い弟の保養のため、別荘のあるこの地に住んでいた。瀬沼の昔の知り合いの春子は画家の夫・松本と共に、阪見家別荘の隣りに住み、松本が少女の肖像画を描いたのだった。

瀬沼が宿泊している割烹旅館「松葉館」の女中・お栄は、働き者の陽気な女で、犬と庭でごろ寝してしまうような野性と健康的な身体だったが、どこか冷たいような影があり、実家の肉親への愛着も薄いようだった。瀬沼はそんな野蛮な美のお栄や、海岸で出会った少女に興味を持ち、受持ちの女中から様々な話を耳にした。お栄には、お客の部屋の前で立ち聞きをしたり、覗き見をする秘密の趣味があり、その病的な癖は治らないらしかった。お栄の意外な秘密を知った瀬沼には、それがお栄の不思議さに似つかわしいようにも思われ、お栄という女の魅力がなまなましく触れてくるような気がした。

「松葉館」の離れには、肋膜炎の予後を静養している竹田少年が滞在していた。竹田少年は、阪見家の少女姉弟と親しく、少女は自転車の後ろに弟を乗せて訪ねて来るらしかった。竹田少年の部屋の壁には、あの少女の胸像の絵が飾ってあった。竹田少年が静かに横たわって、その絵の少女をじっと見上げているのを瀬沼は目撃した。

次の土曜日の夜更け、にわかに旅館が騒がしくなった。阪見家の少女と竹田少年が行方不明になっていた。竹田少年は胸の病気が腎臓に転移して手術をしなければならないのを恐がり、そのことを少女が同情して心中したと憶測された。人々が右往左往する中、瀬沼はお栄を見た。お栄は人々の陰に座ってポロポロ泣いていた。お栄は、少年と少女の恋愛をつぶさに知っていて、その後をつけて心中を見届けて帰ったのを、瀬沼は直感した。

2人の恋愛のなりゆきを誰にも言わずに密かに楽しみ、少年少女の血を啜ってきたようなお栄を瀬沼が見下ろしていると、お栄ははっとそれに気づいて、うつ向けに突っ伏して激しくむせび泣いた。その艶めいて残酷な姿を見ているうちに瀬沼は、自転車の少女の姿を思い出した。弟を後ろに乗せて、夕映えの空に昇天してゆく少女の絵を描くことを、松本(春子の夫)に勧める時もあろうと瀬沼は思った。
登場人物
瀬沼
海岸が近い松林の別荘地帯にある
割烹旅館「松葉館」に宿泊中。物語の進行役。作者・川端康成自身が投影された人物[1][2]


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