ばんえい競走
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帯広記念・第2障害を越えるカネサブラック(2013年)ばんえい記念・ゴール前での競り合い(2010年)ばんえい十勝ナイトレースの様子ばんえい競走(2020年)

ばんえい競走(ばんえいきょうそう)とは、競走馬そりをひきながら力や速さなどを争う競馬の競走である。「曳き馬」と呼ばれる事もある。

現在、日本国内の公営競技地方競馬)としては北海道帯広市が主催する「ばんえい競馬(ばんえい十勝)」のみが行われており、世界的にみても唯一となる形態の競馬である[1]。本項目では、主に地方競馬としての「ばんえい競馬」について記述する。

「ばんえい」の漢字表記は「輓曳」であるが、現行競技における公式の表記は平仮名とされるため、ここでも平仮名を主として用いる。
概要

ばんえい競走では一般的な平地競走で使用されているサラブレッド系種などの「軽種馬」や北海道和種の「どさんこ」は使われず、古くから主に農耕馬などとして利用されてきた体重約800-1200kg前後の「ばんえい馬(重種馬。「ばん馬」ともいう)」が、騎手と重量物を積載した鉄製のそりを曳き、2箇所の障害(台形状の小さな山)が設置された直線200メートルのセパレートコースで力と速さ、および持久力や騎手のテクニックを競う[1]

このレースは農民たちが北海道開拓で活躍した農耕馬に乗り競い合うお祭りとして楽しんでいたものがシステム化され現在の形に発展したものであり、すでに30年以上の歴史をもつ[1]

帯広市が主催する地方競馬としての「ばんえい競馬」のほか、一部地域では「草ばんば」(後述)も行われるなど北海道が生み出した独自の馬文化として定着しており、それらを含めた「北海道の馬文化」が北海道遺産に選定されたほか、映画「雪に願うこと」やテレビドラマ「大地のファンファーレ」(NHK札幌放送局帯広放送局制作)など、映画やドラマの題材にも幾度か取り上げられている。2006年までばんえい競馬を開催していた岩見沢市では、岩見沢駅(3・4番ホーム)にそりを曳く「ばんばの像」が設置されている。
公営競技としてのばんえい競走

ばんえい競馬も地方競馬の一つであるが、使用する競走馬の品種や競走の性質が全く異なるため、平地競走障害競走にみられるような中央競馬や他の地方競馬、また外国競馬との人馬交流競走は行われていない。また、地方競馬全国協会(NAR)による競走馬の表彰などについても、NARグランプリにおいて各部門賞のひとつとして『ばんえい最優秀馬』の部門が設けられている。年度代表馬は各部門賞受賞馬から選出[2] するため、他地区所属の平地競走馬と同様に選出される可能性があるほか、調教師や騎手などの表彰も平地と区別なく選定される。なお、NARにおける騎手や調教師の全国リーディング集計も、騎手・調教師の成績を他の地方競馬(平地)と区別せず、同列で集計している[注 1]

競走での人馬交流はないものの、ばんえい競馬の所属騎手がばんえい競馬のPR活動を行う為、業務として平地競走の競馬場に赴き、現役のばんえい競走馬と競走で使用されるそりを運び込み、平地のダートコースなどを使用してデモンストレーションを目的とした模擬競走を行う場合がある。このような模擬競走は1973年大井競馬場[3] で初開催され、その後も1978年宇都宮競馬場(現在は廃止)[3] で、1983年には水沢競馬場[3] で開催。近年では1991年船橋競馬場[3] で開催されたほか、2001年にはフランス[3] で、2008年には川崎競馬場で実施された。また、2007年から日本中央競馬会(JRA)所属騎手との交流イベントとして「JRAジョッキーDay」を開催している。JRAの現役騎手が帯広競馬場に来場しトークショーなどのイベントを行うほか、ばんえい所属騎手とペアを組んでのエキシビションレースも行っている(詳細は当該記事を参照)。

2006年度までは帯広競馬場のほか旭川競馬場岩見沢競馬場北見競馬場を含めた4か所を巡回しながら開催してきた(後述)が、2007年度より「馬の一発逆転ライブショー・ばんえい十勝」をキャッチフレーズとして、全日程を帯広競馬場で開催している。あわせて、夏季としては初めての本格的なナイター競走「ばんえい十勝ナイトレース」も開始した[4]。ナイトレース期間中は最終競走の発走時刻を昼間開催時よりも2時間半程度繰り下げ[注 2]、日没前後からは走路沿いに新設したイルミネーションも点灯させてナイター気分を盛り上げている。なお、ナイター期間以外の一部開催日は昼間開催時よりも1時間半程度繰り下げた薄暮開催とする場合もある[注 3]

1994年秋より比較的積雪量が少ない帯広競馬場で馬場にヒーティング設備を敷設し、冬季でも馬場が凍結することなく競走が行えるようになった。これにより、従来は11月で終了していた開催期間を延長することが可能になった[5]2005年度からは長期の休催期間を設けない事実上の通年開催となり[6](現在は3月下旬に閉幕後、次年度の開幕まで3週間程度休催)、北海道で唯一冬季も開催を行う公営競技となっている。

通常、ばんえい競馬は昼間・薄暮・ナイター開催ともに土曜から月曜、ホッカイドウ競馬は全日程ナイター開催で火曜から木曜に開催するローテーションが組まれており、一部を除いて両者の開催日程が重なることがないため、道内では多くの場外発売所で両者の相互場外発売が行われている。詳細は「場外発売所」の節を参照。
新馬券の導入詳細は賭式の節を参照

2010年1月8日:5重勝単勝式投票券「OddsPark LOTO」を発売開始。

2011年8月5日:3連単3連複を発売開始(他地区場外発売。ばんえい帯広競馬での発売は8月6日より)[7]

2012年12月15日:7重勝単勝式投票券「OddsPark LOTO」を発売開始[8]

存廃についての動き

2006年度までは帯広競馬場のほか、北見競馬場岩見沢競馬場旭川競馬場の4箇所を巡回して開催していた。1997年までは北見を除く3場で平地競走(ホッカイドウ競馬)が併催されていたが、1998年以降は旭川のみがばんえい・平地の併催となっていた。

2006年度は史上初めて帯広で開幕し、上記4場で順次開催されたが、売上の減少による累積赤字の増大から旭川市・北見市・岩見沢市が2006年度限りでの撤退を表明、残る帯広市も負担が大きすぎるとして単独での開催継続に難色を示したことから、ばんえい競馬の廃止が濃厚と見られていたが、ファンらの嘆願や寄付の申し出に加え、2006年12月13日にはソフトバンク子会社のソフトバンク・プレイヤーズ(現・SBプレイヤーズ)が帯広市の単独開催に対する支援を申し出たことから、2007年度より帯広市が単独で開催を継続することが決定した。これについて農林水産大臣松岡利勝(当時)は「喜ばしいことだ。正式に要請があれば、スムーズに処理できるようにするし、できる限り支援したい」と述べていた。

これに伴い、ばんえい競馬の運営実務を担ってきた一部事務組合「北海道市営競馬組合」は解散し、2007年2月1日に一部業務を受託する運営会社「オッズパーク・ばんえい・マネジメント株式会社(OPBM)」が設立された。また、帯広市はファンなど個人・法人からの寄付もあわせて受け付け、「ばんえい競馬振興基金」を開設、個人・法人からの寄付も毎年のように寄せられている。特に楽天は、子会社の楽天競馬が地方競馬のインターネット発売を請け負っていることもあり、寄付金のほか売上額から一定割合を積み立て、ばん馬の飼料用としてニンジンや牧草ロールを寄贈している。


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