ぬかるみの女
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『ぬかるみの女』(ぬかるみのおんな)は、花登筺による小説、およびそれを原作としたテレビドラマ化作品である。

戦後の高度成長期、それでも女が単身で子供を育てるのは困難であった。また、水商売に今より偏見が強かった時代、何かしら訳がある女性が身を沈めるところ、そんなイメージが強かった。そういう「ぬかるみ」に身を沈めざるを得なかった女性たちを中心に、そういう偏見から立身し、正業として突き詰め、登りつめていく姿を、花登ワールドの真骨頂である、ドロドロとド根性を交えて描いた作品である。

同じ花登作品である『どてらい男』、『細うで繁盛記』などと同様に、実在の人物である大阪のクラブジュンのオーナー(放送当時)である塚本純子をモデルとしている。また、正編で登場する「メトロ」も、実在する巨大キャバレーであった。
TVドラマ

1980年1月7日 - 9月26日に第1シリーズ(全190話)が[1]1981年9月28日 - 12月30日に『続・ぬかるみの女』のタイトルで第2シリーズ(全83話)が、いずれも東海テレビ昼ドラ枠にて放送された。
あらすじ

主人公の文子は、下関から博多の海産物問屋に嫁ぎ、1女2男の子があった。元々性格に問題があった夫は、戦後闇市で儲けたことをいい事に放蕩三昧を繰り返すばかりか、文子にも手を上げる始末。やがて闇市も廃れ商売も傾くが、夫は中洲のキャバレーのダンサーの女に入れあげたあげく、店ばかりか家と土地まで売ってしまう。

数々の仕打ちに愛想をつかした文子は、離婚を決意。3人の子供を連れて家出し、下関時代の父の友人で、幼い頃に可愛がってくれた桐山を訪ね、大阪へ向かう。しかし桐山は、彼女の援助の申し出を受け入れないばかりか、こともあろうに、家庭崩壊の元凶でもあるキャバレーのダンサーになることを勧める。しかしこれは桐山が、子供3人をかかえて生きていくために文子を自立させるための優しい気持ちであった。桐山に見捨てられたと思った文子は、職を探そうとする。しかし手に何の職も無い女が子供3人を食べさせていく事がいかに困難なことであるかを悟り、桐山の紹介状を手にミナミのキャバレー、「メトロ」で、ダンサー「準子」として働くことになる。

正編では、準子が、同僚のナンバー1ダンサーであるアケミの数々のいじめや、文子らとダンサー仲間で住むアパート「清正荘」の管理人、緑川の悪態に耐えながら、知恵を絞り、仲間とともにメトロのナンバー1ダンサーに登りつめる姿を描く。桐山も、客として、また時には後見人として、彼女を見守っていた。

続編では、メトロを退店し、自前の店「クラブ準子」を開店したマダムとなった準子が、真の接客業を追求する姿を軸に、正編で知り合った山村との恋愛模様、山村の妻を名乗るたねの二人の仲を裂こうとする過激な仕打ち、準子の店の向かいにあるライバル店「クラブアーバン」のマダム皇子と、その店のマダム代理となっていたアケミのいやがらせなどが展開される。
キャラクター・キャスト

(正)は『ぬかるみの女』、(続)は『続・ぬかるみの女』への出演を示す
家族
塚原文子(店名・準子) -
星由里子(正、続)、小学生時代 - 原口裕子(正)
下関の海産物店、海幸屋を営む塚原家の養女。それ以降、博多で婚姻生活を送っていた時分(井関姓)以外は、塚原姓を名乗っている。女学校に通うなど何不自由なく育てられたが、太平洋戦争と養父の死により一変する。戦時中に、会った事もない博多の井関商店長男、正博の嫁となるが、彼は結婚後すぐに徴兵される。正博は性格的に問題があり、復員後は闇市を始めて儲けるが、景気安定と共に左前になる。やがてキャバレーのダンサーと支配人に騙され、貢いだ挙句、家と土地を売却しようとする。そんな正博を見限り、昭和28年12月、子供3人を連れて、旧知の桐山を訪ねて大阪へ。その時、27歳。しかし、お嬢様育ちであるがゆえ、このままでは親子で生計を立てるのは無理と判断した桐山は、おそらく素人の女性が自立できる唯一の方法と考えたダンサーへの転進を進言、紹介状を渡す。当初は頑なに拒んだ文子であったが、職探しをしてゆくうちに桐山の言うとおりと悟り、紹介状をもち、ミナミのマンモスキャバレー、「メトロ」に入店する。準子と言う店名は、店から半ば強制的に割り当てられたもの。せめてもの抵抗として、純真を表す白のドレスを纏うのだが、一着しか買う余裕がないため、毎日洗濯を行うはめに。だがやがて、サービス業に目覚め、いかにお客様に喜ばれるかを模索し始める。話題を豊富にするための勉強、お得意様の会社の概要の暗記、膝をついての挨拶、来店の手書きの礼状、高級料亭をまねた客の奥方への赤飯の付け届けなど、その努力が実り、売れっ子ダンサーへと登りつめる。自ら発案した、法人のパーティへのホステス(田代の注進で、昼間ということもあり、ダンサーではなくホステスと改称された)派遣の責任者となったが、それが大ブレーク。パーティの客がそのままメトロに流れるため、本業でも指名が激増することとなり、一気にトップダンサーとなる。そして、ミナミに小さな店「クラブ準子」を開く。家庭的な雰囲気で、接待客よりも、接待後に落ち着きたい常連客向けに決め細やかな接客を行い成功する。その後、パトロンの商工会での力をかさに、強引で不遜な接客に終始するクラブアーバンに対抗するためにキタに、それもアーバンの真向かいに出店する。そこでも、客が連れてきた秘書用の控え部屋を作るなど、新しいサービスを展開する。偶然知り合った山村と相思相愛になり、文子の借家で子供たちも交え同居を始めるが、思春期の子供の複雑な反応や、たねの妨害などが入り、安泰な生活はなかなかおくれない。
博子 - 幼少時代嶺川貴子、少女時代:蝦名由紀子(正、続)
文子の長女。姉弟のなかで、離婚時に唯一物心がついていたため、環境の激変や、文子が働きに行っている間に母親代わりを務めなければならない重圧などから、反抗的な態度をとることもしばしば。そのようなこともあり、思春期には、母親の職業や、山村を父と呼ぶことに反発などもしていたが、やがて理解を示し、銀座で母の職業を継ぐことになる。
正 - 幼少時代斉藤雅晴、少年時代丹呉年克(正、続)
文子の第二子で長男。父親似で、気が弱い面がある。
務 - 幼少時代矢口純、少年時代倉沢満夫(正、続)
文子の次男。すこしひねくれたところがあり反抗的な性格。
山村一郎 - 本郷功次郎(正、続)
神戸の製菓工場、山村商店(山村興産製菓部)の創業経営者。硬くならないを開発し、鏡餅として発売したところ大ヒットし、売上を伸ばした。実直で働き者。戦後復員して栄養失調で死にかけていたのを関原という闇屋の元締めに救われ、しばらくそこで働いていた。闇商売から足を洗うと倉敷パチンコ屋を経営する山村興産を創業、その後現体制に転換する。大阪には、山村興産時代に事務所を開いた関係で、住むようになった。幼稚園の遊具で遊ぶ文子の子供たちの相手をしていて、文子に出会う。やがて、メトロで働いていることを知り、そこに通い、交流を続けるうちに彼女を愛するようになる。しかし、たねに無断で婚姻届を出されているため、書類上は既婚者。それゆえ文子と入籍できないばかりか、たねに理不尽な要求を数々受け続ける。ついに会社のすべての権利を渡すという条件で離婚しようと提案するが交渉は決裂、その直後に不運にも癌で倒れ余命わずかと知る。危篤状態にもかかわらず、たねらに文子のアパートから連れ出されたが、会社の権利をすべて文子の子供たちに譲るとの遺言状を文子に残した。
井関正和 - 三波豊和(正、続)
文子の元夫、正博の実弟。放蕩な兄を怨みつつ、文子を慕い、なにかと肩入れする。博多の実家が騙し取られたあと、大阪に行き、文子の居所を探しながら、職を転々としていたが、やがて再会し、その縁もあってメトロでボーイとして働くようになる。


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