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『どんぐりと山猫』(どんぐり と やまねこ)は、宮沢賢治の童話である。1924年(大正13年)に刊行された短編集『注文の多い料理店』に収録されている[1]。係る短編集は賢治が生前に出版した唯一の作品集である。 作品は、全員が盛岡高等農林学校の同窓生である[2]宮沢賢治・及川四郎(光原社社長[2])・近森善一の3名によって1924年12月1日[1]に刊行された短編集『注文の多い料理店』(初出時書籍名:『イーハトヴ童話 注文の多い料理店』[1])に収録されている。近森を発行人 ある秋の土曜日、一郎少年のもとに、下手くそで間違いだらけの文で書かれた怪しい葉書が届くところから物語がはじまる。翌日面倒な裁判があり、ぜひ出席してほしいという内容で、差出人は、山猫となっている。一郎少年は、葉書を秘密にして、一人で大喜びする。翌日、一郎は山猫を探しに山へ入る。 深い榧(かや)の森の奥に広がる草地で、異様な風体の馬車別当と会い、葉書を書いたのは彼であることなどを話すうちに山猫が登場し、どんぐりが集まってきて裁判が始まる。どんぐりたちは誰が一番偉いかという話題で争っており、めいめいが自分勝手な理由をつけて自分が偉いと主張するので、三日たっても決着がつかないという。馬車別当は山猫に媚びるばかりで役に立たず、裁判長である山猫は「いいかげん仲直りしたらどうだ」と和解を勧めるが、どんぐりたちが受け入れる気配など全く無く、その都度身勝手な主張を繰り返すばかりで、判決を下したくても思い付つかずに困っている。そこで一郎は山猫に「このなかでいちばんばかで、めちゃくちゃで、まるでなっていないようなのが、いちばんえらい」という法話を耳打ちし、知恵をつけて助けてやる。山猫が一郎からの受け売りほぼそのままの判決を下すと、一瞬にしてどんぐりたちの争いが解決し、どんぐりたちは固まってしまう。山猫は一郎の知恵に感心し「名誉判事」という肩書きを与え、葉書の文面を「出頭すべし」と命令調で出すことにしてよいかと訊ねるも、一郎に否定されてしまった。バツが悪そうな山猫はよそよそしくなり、謝礼として、塩鮭の頭と黄金(きん)のどんぐりのどちらかを選ばせ、一郎が黄金のどんぐりを選ぶと白いきのこの馬車で家まで送ってくれるが、黄金のどんぐりは色あせて茶色の普通のどんぐりとなり、そして二度と山猫からの葉書は来なくなってしまう。一郎は、「出頭すべし」と書いてもいいと言えばよかったとちょっと残念に思うのである。 人間である主人公(かねた一郎)と、ほか1人(馬車別当)、擬人化された生物および地形の全7種(動物2種、菌類1種、植物1種、地形1種)が登場する。主人公である人間の「かねた一郎」と、ヤマネコの、その名も「山猫」、この2名が主役である。脇役として馬車別当と大勢のどんぐりが、そして、栗の木、笛ふき滝、きのこ、栗鼠が、端役として登場する。 かねた一郎(かねた いちろう)主人公の少年。山猫から届いた謎の葉書への対応について親や友達に相談することもなく、単身で裁判に出かけてしまう。年齢は明記されていないが、馬車別当への世辞から尋常小学校の三、四年生と分かる。道を尋ねたり、馬車別当や山猫との対応もしっかりしており、いざというときは大人から聞いた法話を思い出すなど、かなり利発で機転が利いている。また、馬車別当が葉書の文や字の下手なのを恥じると世辞を言って慰めるなど、相手を思いやることができ、大人としての分別もある。一方で、異様な葉書を怪しみもせず、無謀なことが大好きで、山猫たちと会話できるなど、野生児としての要素も失っていない。 山猫(やまねこ)陣羽織のような黄色い衣装や、裁判用の黒い繻子織の衣装を着用し、巻煙草(まきたばこ)を吸うなど、威風堂々としている。客人の一郎には紳士的であるが、裁判官としては解決能力に乏しく、それを隠すために体裁ばかり気にしており、手下やどんぐりたちの前では威厳を保とうとしている。 馬車別当(ばしゃべっとう)山猫に仕える人間。背が低く、隻眼で、見えない眼は不気味で、脚も曲がって変形しており、半天姿で鞭を持っているという、異様な風体の男である。性格は卑屈で、山猫に媚びるばかり。葉書の書き方からも分かるように教養は低く、それを恥じている反面、一郎の「大学生でもあんなにうまく葉書は書けない」というような世辞を本気にして喜ぶような単純な性格でもある。裁判の体裁を整えるのも彼の役目である。
刊行の経緯
あらすじ
登場キャラクター
どんぐりたち
擬人化されたどんぐりたちで、誰も皆、金色にピカピカと美しく光り、赤いズボンを履いている。