としまエコミューゼタウン
としまエコミューゼタウン(2015年5月)
としまエコミューゼタウンは、東京都豊島区南池袋に所在する庁舎(豊島区役所)と超高層マンションが合築となった国内初の複合施設である[注 1]。 1961年(昭和36年)7月、明治通り沿いに完成した豊島区役所旧庁舎は、老朽化のため修繕費が増大していたほか、その後の区勢の発展で業務量が増え、部署は7か所に分かれて置かれていた。このため、区民に対するサービス機能が低下し、さらにはバリアフリー対応の遅れや来庁者用駐車場不足などの理由と相まって、新庁舎建設が計画されたが、予算の問題から計画は頓挫していた[4]。しかし、区の財政健全化の道筋がつき、新庁舎建設の推進が争点となった2011年(平成23年)の区長選挙で、建設推進を掲げる現職の高野之夫が4期目を決めると、長年の課題だった新庁舎の整備は本格化した[5]。 建設地の敷地は、南側の約半分が区有地である旧日出小学校と旧南池袋児童館跡地、北側の約半分が住宅街だった[2]。再開発のきっかけは東側を通る環状5の1号線、いわゆる「明治通りバイパス」が事業化されたこと。それに伴い2004年(平成16年)、バイパスを挟む南池袋2丁目地区5.3ヘクタールが街並み再生地区(東京のしゃれた街並みづくり推進条例に基づく)に指定された[2]。敷地は第一種住居地域だが、大きな容積ボーナスが期待できる。そこで区がこの地区の再開発に参加して民間の施設と合築すれば、区の費用負担が少なくて済むうえ、周辺の再開発を後押しすることにもなる[2]。これらを踏まえ、区は2006年(平成18年)再開発準備組合に参加した[2]。 再開発は、都のまちづくり制度を使って、容積率を300%から800%に引き上げ、民間再開発事業と連携することで、デベロッパーの開発投資を呼び込み[5]、従前資産(土地・建物)と再開発建物の床(権利床)を等価で交換する「権利変換方式」で行われ、新庁舎は従前資産を権利変換して取得した権利床のほか、再開発組合から保留床の一部を購入して確保した[6]。この権利変換と移転後の旧庁舎および豊島公会堂跡地を民間に貸し出すことによって[注 2]、区は新たな財政負担無しで庁舎建て替えを実現した[9]。 議論の過程では、合築案ではなく、敷地南側に住宅棟を建てて地権者を移した後、北側に庁舎棟を建てる別棟案もあった[2]。地権者の多くは別棟案を推したが、区は「庁舎のワンフロアが狭くなって行政サービス質が低下する」、「2棟が近接しすぎて周辺の再開発の範とならない」(豊島区施設管理部庁舎建設室長)ことから合築を推し、最終的に地上49階を上下で分け合う形となった[2]。 建物名称は公募され、500件の応募から「環境と文化を意識したまちの拠点に発展させたいという思いから「としまエコミューゼタウン」に決定している[10]。 2015年度グッドデザイン賞[11]、2017年度第58回BCS賞をそれぞれ受賞[12]。 設計は日本設計が担当し、同社は首都圏不燃建築公社とともに初期の段階から再開発の検討に関わっており、2009年(平成21年)に公募プロポーザルで改めて設計者に選ばれた[2]。その際、隈研吾建築都市設計事務所とランドスケープ・プラスが設計協力者として加わった[2]。
概要
建物詳細