ちきゅう
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この項目では、地球深部探査船について説明しています。太陽系第3惑星については「地球」をご覧ください。

ちきゅう

基本情報
船種地球深部探査船(掘削船
船籍横須賀港
所有者海洋研究開発機構 (JAMSTEC)
運用者日本マントル・クエスト
建造所三井造船玉野事業所 (船体部)
三菱重工業長崎造船所 (最終艤装)
母港清水港
船舶番号136960
信号符字JRAJ (総務省 無線局免許状)
IMO番号9234044
MMSI番号432522000(インマルサット有)
経歴
発注2000年3月
起工2001年4月25日
進水2002年1月18日
竣工2005年7月29日
要目
総トン数57,087 t
全長210.0 m
幅38.00 m
深さ16.20 m
喫水9.2 m
機関方式ディーゼル・エレクトリック方式
ディーゼル発電機×6基
・ディーゼル副発電機×2基
アジマススラスター×6基
サイドスラスター×1基
出力50,220馬力
最大速力12ノット
航海速力10ノット(kt)
航続距離14,800海里 (10kt巡航時)
搭載人員150名 (後に200名に拡張)
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ちきゅうは、海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球深部探査センター(CDEX)の地球深部探査船(掘削船[1][2]。運航・管理及び掘削業務は、当初はJAMSTECの自主運用、2006年からはシードリル社の協力の下でグローバルオーシャンディベロップメント(GODI)社が行ってきた[3]が、2008年からは日本マントル・クエスト社によって行われている[4]

日本米国が主導する統合国際深海掘削計画(IODP)において中心的な掘削任務を担当しており、巨大地震津波の発生メカニズムの解明、地下に広がる生命圏の解明、地球環境変動の解明、そして、人類未踏のマントルへの到達という目標を掲げている。なお、船名の「ちきゅう」は一般公募で選ばれた。
来歴

海底は地上と比べて地殻が薄い(アイソスタシー)こともあり、掘削調査による地球物理学海洋地質学の研究に適した場所とされている。1960年代初頭にアメリカ合衆国が着手したモホール計画を端緒として、60年代後半の深海掘削計画(DSDP:後に国際化してIPOD)、1985年からは国際深海掘削計画(ODP)といった掘削調査が順次に進められてきた[5]

1980年代後半、日本の科学技術庁は、21世紀の地球科学関連研究の飛躍的発展のために最も効果的な施策についての検討を行った。この際に、ODPによる貢献が非常に高く評価された。しかし、これらの諸掘削調査で用いられた掘削船は、DSDPでは「グローマー・チャレンジャー」、ODPでは「JOIDES・リゾリューション」と、いずれもライザーレス掘削にしか対応していないという技術的な限界を抱えていた。このことから、1989年に発表された報告書では、この限界を解決した新型の掘削船を開発し、国際協力のもとで研究を進める必要性が特記された。これを受けて、1990年、政府の科学技術会議は新しい深海掘削船を開発して深海掘削計画を強化することを答申し、同年より、JAMSTECにおいて新たな深海掘削システムの研究および技術開発が着手された[1][5]

1992年から1994年にかけて設計および要素技術の研究開発が行われ、ライザー掘削システムの導入を基本とした技術計画案が作成された。1995年からは全体システムに関する研究に移行し、本船設計と主要システム、概念設計などが取りまとめられた。そして1999年からは基本設計を開始。2000年3月には、三菱重工業が全体の取りまとめと掘削部分の開発、三井造船が船体部分を担当する建造契約が締結された[1]。そして2001年度の政府予算原案の国会承認に伴って建造は正式に承認され、2001年4月25日に三井造船玉野事業所で起工された。これによって建造されたのが本船である[5]
設計

船型は凹甲板型とされ、船体の前方には大きな箱型の上部構造物が配された。上甲板上7層、下1層の甲板に船橋と居住区画が設けられているほか、上端には30人乗りの大型ヘリコプターにも対応できるヘリコプター甲板が設けられている。1本の掘削期間は6ヶ月を想定しており、このために乗組員は1ヶ月おきにヘリコプターで交代するほか、長期間の船上生活を求められる研究者に配慮して、居住区の大半が1人個室とされた(1人部屋が128室、2人部屋が11室)[1]。また、外国人研究者に日本の文化に親しんでもらいながら円滑な意志疎通を図るためのレクリエーション施設として、茶室も設けられている[6]

船体中央部には、本船の外見上の特徴となるデリック(掘削やぐら)が配されている。高さは、海面上からでも約120メートル、船底からなら130メートルと、世界一である。なおこれは日本国内にあるあらゆる橋よりも高いため、入港できる港は制限されてしまっている[1]

主機関はディーゼル・エレクトリック方式を採用している。V型12気筒の三井12ADD30Vディーゼルエンジン(7,166 hp (5,344 kW) / 720 rpm)による主発電機(5,000 kW)6基と、V型6気筒の三井6ADD30Vディーセルエンジン(3,600 hp (2,700 kW) / 720 rpm)による補助発電機(2,500 kW)2基を備えている。このADD30Vディーセルエンジンは、国家的プロジェクトとして国内3メーカー(三井造船、川崎重工業日立造船)が共同開発したもので、耐摩耗セラミック溶射のシリンダー口径300mm・行程480mm)、ガス交換性に優れた一弁式給排気システムなどの最新技術が導入されている[1]

推進器としては、船首部にサイドスラスター1基とアジマススラスター3基、船尾部にアジマススラスター3基を備えている。全力航行時は6基、通常航行は5基(中央部1基を非使用とする)、出入港時は船尾部の2基(船底が後部で跳ね上がったバトック・フロー船型部に設置されている)のみを使用するものとされている。また定点保持が求められる掘削中には、これらは自動船位保持システム(DPS)によって自動制御され、水深1,000メートルでは半径15メートル以内、水深2,000メートルでは半径30メートル以内の精度で常時保持できるようになっている[1][7]。これら推進器を制御することで、風速 3m/秒、波高 4.5m、潮流 1.5ノットの海況下においても掘削が可能である[8]
装備
掘削用設備

上記の経緯により、本船ではライザー掘削システム(英語版)を備えている。これは石油プラットフォームなどによる海底油田の掘削では多用されてきたが、科学掘削船としては世界初の採用例となった[1]

従来の掘削船で用いられていたライザーレス掘削システムではドリル・パイプだけで掘り進んでいたのに対し、本船のライザー掘削システムでは、ドリル・パイプはライザーと呼ばれる中空のパイプの中を通っている。ライザーは掘削船から海底面まで達しており、そこから先はドリル・パイプだけで掘り進んでいくことになる。ドリル・パイプの先端からは比重が大きい泥水が噴出しており、掘削孔内の壁面圧力を調整するとともに、泥水のしっくい効果によって掘削孔の崩壊を防止できる。またライザーを通じて泥水や削りかすを回収する[1]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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