たばこ
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原料となるタバコ属の植物については「タバコ」をご覧ください。
店頭に並ぶ様々なたばこ製品(日本コンビニエンスストア2022年

たばこ(煙草、莨、tobacco)は、タバコ (Nicotiana tabacum) の葉を加工して作られる製品である。日本法令では「たばこ事業法2条3号」より、「製造たばこ」と定義され、「葉たばこを原料の全部又は一部とし、喫煙用、かみ用又はかぎ用に供し得る状態に製造されたもの」とされる。
歴史
喫煙のはじまりパレンケ遺跡で発見された、喫煙の様子を描いたレリーフ

植物としてのタバコは、原産地のアンデス山脈地方から伝播して南北アメリカ大陸全域において使用されるようになった。7世紀ごろのマヤ文明パレンケ遺跡においては発見された神がタバコを吸うレリーフは、同時期に既に喫煙の習慣がはじまっていたことを示している[1]。たばこは嗜好品として使用されるほか、薬用や宗教行事においても多用されていた[2]
タバコの伝播

1492年クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を確認してしばらくすると、新大陸中に普及していたたばこは新たにやってきたヨーロッパ人たちの目に留まるようになった。新大陸からたばこはヨーロッパへと伝播し、1571年にはスペインの医師であるニコラス・モナルデスが新大陸の薬用植物誌を書いた中でたばこの使用法や薬効を詳述している[3][4]

アジアへの伝播はスペイン人によって1575年フィリピンに持ち込まれたものが最初であり、以後17世紀初頭までのわずかな間に福建省インドジャワ、日本などにたばこが広まっていった。ほぼ同じ時期に、中東サファヴィー朝オスマン帝国にもたばこが広められている。1630年までには西アフリカに、1638年にはマダガスカルでもたばこが確認され、こうしてたばこは新大陸発見からわずか130年ほど、本格的に普及のはじまった1570年代からは60年ほどで全世界へと普及した[5]。この伝播の過程においては、アフリカを除く伝播したほとんどの文化圏(ヨーロッパ諸国、アジア、中東等)においてたばこの薬効に触れた文献が存在しており、として受容された面が大きいと考えられている[6]。ただしいったん受容されると、どの文化圏においてもたばこはすぐに嗜好品としての地位を確立するようになった。

急速に全世界へと広まったことでたばこは重要な換金作物となり、世界各地で生産が行われるようになったが、なかでもたばこ生産が経済の重要な地位を占めるようになっていたのはイギリスの植民地であったチェサピーク湾地方にあるヴァージニアメリーランドの植民地だった。ここで生産された葉たばこはイギリスに輸入されたのちヨーロッパ大陸へと再輸出され、イギリス西インド諸島北アメリカ植民地を結ぶ三角貿易の重要な一角となっていた[7]。このたばこ生産は北アメリカ植民地に独自の経済的基盤を与えることとなった。

1970年代ごろからたばこの有害性を主張する禁煙運動が盛んとなり、先進国を中心にたばこの消費は減少の一途をたどることとなった。多国籍企業による豊富な資金力は、開発途上国においてたばこの消費を増加させたため、2005年には世界保健機関 (WHO) が主導するたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(たばこ規制枠組条約)が結ばれた[8]
喫煙法の歴史的変化

古代南北アメリカにおけるたばこの使用法としては、すでに噛みたばこ嗅ぎたばこ、喫煙の3種のすべてが出そろっており、また喫煙においてもそのまま乾燥させた葉を巻いて吸う(葉巻)、トウモロコシの葉などに刻んだ煙草を巻き込む(紙巻きたばこ)、刻んだ葉を喫煙具に入れて吸う(パイプや煙管)といった現代において使用される喫煙方法が出現していた[9]

新しくたばこが伝播した国々の喫煙方法はさまざまな形態を取った。もっとも一般的だったものは喫煙具に刻みたばこを詰めて喫煙するパイプたばこであり、スペインを除く各国はまず最初にこの方式でたばこを消費し始めた。日本もこの方式であり、喫煙のための煙管が広く普及した。これに対し、新大陸の広大な領土を持ちインディオたちとの接触も密であったスペインでは、まず葉巻と嗅ぎタバコという二つの方法が主流となった。このうち嗅ぎタバコはフランスを皮切りにヨーロッパへと普及していき、18世紀後半にはヨーロッパにおいてはパイプをしのぐ人気を持つようになった[10]。アジアでは全く新しい喫煙方法として、おそらく16世紀のペルシアにおいて水タバコが発明され[11]、17世紀中にはインドや中近東、東アフリカといった地域においてこれが主流の喫煙方法となった。

ヨーロッパ大陸においては19世紀中ごろから、嗅ぎタバコからパイプたばこへとふたたび喫煙方法の転換が起こった[12]。ただしこの転換は緩やかなもので、20世紀に入ってもしばらくの間は嗅ぎタバコの消費は一定の割合を占めており、またスウェーデンのように第二次世界大戦に入るまで嗅ぎタバコが主流となっていた国家も存在した[13]。また18世紀末から、それまでほぼスペインのみで消費されていた葉巻が徐々にヨーロッパ大陸に広まるようになり[14]、19世紀には流行を見せた。アメリカにおいては、アメリカ独立戦争のころからプラグタバコなどの噛みたばこが流行を見せるようになり、19世紀のほぼ全期間にわたってアメリカで最も利用される喫煙方法となっていた。この噛みたばこの隆盛はヨーロッパ大陸ではあまり見られず、アメリカの喫煙を特徴づけるものとなっていた[15]。20世紀に入ると紙巻きたばこが全世界において急速に普及し[16]、パイプたばこのみならずそれまで嗅ぎタバコが主流だったスウェーデンや噛みたばこが主流だったアメリカにおいてもたばこ消費の主流を占めるに至った。
有害性「喫煙」、「紙巻きたばこ#有害性」、および「ライトたばこ#健康への影響」も参照

世界保健機関 (WHO)元事務局長のグロ・ハーレム・ブルントランドが「たばこは最大の殺人者である」[8] と述べているように、20世紀になってからたばこの有害性が度々指摘されている。主な害として、中毒性、発がん性心臓病のリスク向上などが挙げられている。また、たばこの流煙には、一酸化炭素 (CO)、ニコチンタールシアン化物など、多くの有害物質が含まれており、非喫煙者と比べ、がん心臓病などの生活習慣病を発病しやすくなる。

薬物に関する独立科学評議会における、ニコチン含有製品を多基準意思決定分析(英語版)によって数値化した研究では、紙巻きたばこの有害性を100とすると、小型葉巻67、パイプ22、水パイプ14、ニコチンガムパッチは約2である[17]

たばこ産業は喫煙者を安心させるために「低タール」の紙巻たばこを開発し、1980年代に入るとさらに「ウルトラライト」などの商品を販売促進してきた[18] が、近年ではむしろ肺がん死亡率が上昇してきているという疫学研究の結果が得られており[19]、こうしたタバコが原因のひとつであるとして説明されている[20]


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