その他の破傷風
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破傷風

破傷風菌の光学顕微鏡写真
概要
分類および外部参照情報
ICD-10A33-A35
ICD-9-CM037, ⇒771.3
DiseasesDB2829
MedlinePlus000615
eMedicineemerg/574
MeSHD013742
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破傷風(はしょうふう、tetanus)は、破傷風菌を病原体とする人獣共通感染症の一つ。病原菌が産生する神経毒による急性中毒である[1]
概要

破傷風は、破傷風菌と呼ばれる細菌が作る毒素で発症する感染症、病気。破傷風菌は、酸素があると増えることのできない嫌気性菌であるため、芽胞という固い殻に包まれた状態で、土などの空気に触れない環境に存在している。そのため、傷がありながら土に触れると、破傷風菌芽胞が傷口に入り込み、体内という嫌気状態で菌が増殖し、毒素を出す。破傷風菌による毒素は、神経を抑制する機能の神経に作用し、神経を「過活動の状態」にする。これが原因で、人体に筋肉のけいれんや、こわばりがおこる[2]
疫学

集団感染によるアウトブレイクは起きない[3]。日本では感染症法施行規則で5類感染症全数把握疾患に定められており、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出る。年間100件を超える届出がある[4]

世界的には、先進諸国での発症症例数の報告は少ない。これは、三種混合ワクチンの普及による所が大きい。発展途上国では正確な統計ではないが、数十万?100万程度の死亡数が推定されており、その大多数が乳幼児である。特に、新生児へその緒臍帯)の不衛生な切断による新生児破傷風が大多数を占める。

また動物においては家畜伝染病予防法上の届出伝染病であり、対象動物は水牛鹿である(家畜伝染病予防法施行規則2条)。哺乳類に対する感度が強いが、鳥類は強い抵抗性を持つ。日本では年間、牛で約90件、馬で数件の届出がある[5]
原因病原体

土壌中に生息する嫌気性生物である破傷風菌 (Clostridium Tetani) が、傷口から体内に侵入することで感染を起こす。破傷風菌は、芽胞として自然界の土壌中に世界に広く常在している。多くは自分で気づかない程度の小さな切り傷から感染している(1999-2000年では23.6%)[6]

芽胞は土中で数年間生存する。ワクチンによる抗体レベルが十分でない限り、誰もが感染し発症する。芽胞は創傷部位で発芽し、増殖する。新生児の破傷風は、衛生管理が不十分な施設での出産の際に、新生児の臍帯の切断面を汚染して発症する。ヒトからヒトへは感染しないが、呼吸や血圧の管理が可能な集中治療室などで実施することが望ましい[7]
症状

破傷風菌は毒素として、神経毒であるテタノスパスミン溶血毒であるテタノリジンを産生する[3]。テタノスパスミンは、脊髄の運動抑制ニューロン(γ-ニューロン)に作用し、重症の場合は全身の強直性痙攣を引き起こし、舌を噛んで出血したり、背骨を骨折することもある。この作用機序と毒素(および抗毒素)は1889?1890年(明治22?23年)、北里柴三郎により世界で初めて発見される。破傷風による筋肉の発作(後弓反張(英語版))で苦しむ人の絵(1809年チャールズ・ベル作)。最悪の場合背骨が折れることもある。

神経毒による症状が激烈である割に作用範囲が筋肉に留まるため、意識混濁はなく鮮明である場合が多い。このため患者は、絶命に至るまで症状に苦しめられ、古来より恐れられる要因となっている。

破傷風の病期と症状病期状態の解説・症状一般的な期間
第一期(潜伏期)身体、受傷部の違和感、頸部や顎の疲労感、寝汗、歯ぎしり1?7日間
第二期(痙攣発作前期)「破傷風顔貌」と呼ばれる状態で次第に開口障害が強くなる。語・嚥下障害、咬筋・頸部筋などの圧痛、四肢硬直数時間?1週間
第三期(全身痙攣持続期)生命に最も危険な時期。バビンスキー反射、後弓反張(英語版)、クローヌス亢進、呼吸困難2?3週間
第四期(回復期)各種の症状が緩和し全身性の痙攣はみられないが、筋の強直、腱反射亢進は残る。2?3週間

※破傷風病期と症状の表は「外傷歴のない破傷風の1例」[8]と国立感染症研究所資料[6]より引用し改変。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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