そして誰もいなくなった
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、アガサ・クリスティーの小説について説明しています。その他の用法については「そして誰もいなくなった (曖昧さ回避)」をご覧ください。

そして誰もいなくなった
And Then There Were None
著者アガサ・クリスティー
訳者清水俊二 など
発行日

1939年11月6日

1955年6月

発行元

クライム・クラブ(英語版)

早川書房

ジャンル推理小説
イギリス
言語英語
形態ハードカバー
ページ数256
前作黄色いアイリス
次作杉の柩
公式サイトwww.agathachristie.com

ウィキポータル 文学

[ ウィキデータ項目を編集 ]

テンプレートを表示

『そして誰もいなくなった』(そしてだれもいなくなった、原題: And Then There Were None)は、1939年イギリスで刊行されたアガサ・クリスティの長編推理小説である。

本作の評価はクリスティ作品中でも特に高く、代表作に挙げられることが多い(詳しくは#ランキングを参照)。また、「絶海の孤島」を舞台にしたクローズド・サークルの代表作品であると同時に、見立て殺人の代表的作品とも評される[注 1](詳しくは#作風とテーマを参照)。

作者自身により戯曲化されている。また、ルネ・クレール監督の映画を初めとして、多数の映画化作品や舞台化作品、テレビドラマ化作品がある(詳しくは#翻案作品を参照)。
概要

本作はアガサ・クリスティベストセラー小説家にした作品の一つである[2]。同著者の最も多く出版された作品で、1億冊以上が出版され[3]、世界中のミステリ作品の中で最も販売されたベストセラー本であり、2009年時点で『聖書』を1位とするすべての書籍の中で6番目に多く販売されていた[4]

孤島の兵隊島を舞台にして、10人の登場人物が部屋に飾られていた童謡「十人の小さな兵隊さん」の詩になぞらえて殺されていく。10人全員が死亡することで題名どおりに『そして誰もいなくなった』事態を迎える。物語はエピローグに続き、警察の捜査では迷宮入りとなった後に真犯人による独白手記が見つかり、真相が明かされることで終結する。

初期のイギリス版の題名はTen Little Niggersであったが、1940年にアメリカ版が出版された際にAnd Then There Were Noneとなった[5]。日本語訳は1939年に雑誌『スタア』で清水俊二が「死人島」として連載したものが初出で[6]、1955年6月に早川書房から『そして誰もいなくなった』として刊行された[7]
あらすじ
序章から顛末

イギリスデヴォン州の兵隊島に、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれた。2人の召使が出迎えたが、招待状の差出人でこの島の主でもあるオーエン夫妻は、姿を現さないままだった。やがてその招待状は虚偽のものであることがわかった。

不安に包まれた晩餐のさなか、彼らの過去の罪を告発する謎の声が響き渡った。告発された罪は事故とも事件ともつかないものだった。その声は蓄音機からのものとすぐに知れるのだが、その直後に生意気な青年アンソニー・ジェームズ・マーストンが毒薬により死亡する。

さらに翌朝には、召使の女性エセル・ロジャースが死んでしまう。残された者は、それが童謡「10人のインディアン」を連想させる死に方であること、また10個あったインディアン人形が8個に減っていることに気づく。その上、迎えの船が来なくなったため、残された8人は島から出ることができなくなり、完全な孤立状態となってしまう。

さらに老将軍ジョン・ゴードン・マッカーサーの撲殺された死体が発見され、人形もまた1つ減っているのを確認するに至り、皆はこれは自分たちを殺すための招待であり、犯人は島に残された7人の中の誰かなのだ、と確信する。

誰が犯人かわからない疑心暗鬼の中で、召使のトマス・ロジャースが斧で後頭部を割られて撲殺。続いて、老婦人のエミリー・キャロライン・ブレントは毒物を注射されて、蜂に刺されたように見せかけられて毒殺されてしまう。

そして、元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、判事の正装に見立てた格好にされたうえで銃殺。医師のエドワード・ジョージ・アームストロングは嵐の海に突き落とされ溺死により死亡し、次々と彼らに見立てた人形も減っていく。

そして、残された3人のうち元警部の探偵ウィリアム・ヘンリー・ブロアは熊の形をした大理石の置物を脳天に落とされて死亡。元陸軍大尉のフィリップ・ロンバードは、互いに疑心暗鬼に陥った末に女性教師のヴェラ・エリザベス・クレイソーンに隙をつかれて銃を奪われて射殺される。

最後の1人となったヴェラも、犯人がわからないまま精神的に追いつめられて自殺し、……そして誰もいなくなった。
後日の捜査

後日、救難信号に気がついたボーイスカウトから連絡を受けた救助隊が、島で10人の死体を発見し、事件の発生が明らかとなる。

事件を担当するロンドン警視庁の副警視総監であるトマス・レッグ卿は、被害者達が残した日記やメモ、そして死体の状況などから(それは読者が知りえたのと同じくらいに)、事件の経緯、大まかな流れをつかむ。そして、当時の島の状況から、犯人が10人の中にいると考えると矛盾が生じるため「11人目がいた」と推理するが、それが何者で島のどこに潜んでいてどこに消えてしまったのかまではわからない。

しかし、ある漁師が「ボトルに入った手紙」を見つけることですべての謎が解明する。
事件の真相

ボトルの中の手紙は真犯人による告白文であった。真犯人は被害者の1人と思われた招待客の1人、ローレンス・ウォーグレイヴ判事であり、事件で不明だった犯行方法・犯行動機などすべての謎に対する真相をボトルの中の手紙に記していた。

ウォーグレイヴ判事は幼少より、「生物を殺すことに快楽を感じる性質」を持っていたが、同時に正義感や罪なき人間を傷付けることへの抵抗感も強かったため、判事として罪人に死刑を言い渡すという迂遠な手段で殺人願望を満たしていた。

しかし、病を患ったことを機に「自らの手で人を殺したい」という欲望を抑えきれなくなったウォーグレイヴ判事は、欲望を満たしかつ正義を行えることとして、法律では裁かれなかった殺人を犯した9人の人間を集めて、1人ずつ殺していく計画を実行したのである。

ウォーグレイヴ判事は作中で殺害されることになるが、それは巧妙な偽装死であり、すべてが終わった後に告白文を書き、海に流して本当に自殺した。真犯人が最後のページで死ぬことを語ることによって幕を閉じる。
登場人物
オーエン夫妻
孤島の持ち主。夫はユリック・ノーマン・オーエン (Ulick Norman Owen)、妻はユナ・ナンシー・オーエン (Una Nancy Owen) と名乗って、招待客への招待状の差出人になっている。
アンソニー・ジェームズ・マーストン
遊び好きで生意気な青年。謎の声によると、危険運転で2人の子どもを轢き殺した。
エセル・ロジャース
オーエンに雇われた召使で料理人。トマスの妻。謎の声によると、以前仕えていた高齢の独身婦人の心不全の発作に際し、救護せず、消極的に殺害し遺産を手に入れた。
ジョン・ゴードン・マッカーサー
退役した老将軍。謎の声によると、大戦の際に妻の愛人だった部下を故意に死地に追いやった。
トマス・ロジャース
オーエンに雇われた召使。エセルの夫。謎の声によると、妻と共謀して当時の雇用主を心不全に追いやり、その遺産を手に入れた。
エミリー・キャロライン・ブレント
キリスト教の信仰に篤い、厳格な老婦人。謎の声によると、雇っていた10代のメイドの妊娠が発覚した際、彼女を自殺に追い込んだ。
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ
著名な元判事。謎の声によると、多くの者が被告の無実を確信していた殺人事件で、陪審員を誘導して不当な死刑判決を出した。
エドワード・ジョージ・アームストロング
医師。謎の声によると、酔ったまま手術をして患者を死なせた。
ウィリアム・ヘンリー・ブロア
元警部の探偵。謎の声によると、犯罪組織から賄賂を受け取って法廷で嘘の証言を行い、無実の男に銀行強盗および殺人の罪を着せた。
フィリップ・ロンバード
元陸軍大尉。謎の声によると、東アフリカで部下の先住民を見捨てて食糧を奪い、21人を死なせた。
ヴェラ・エリザベス・クレイソーン
教師。謎の声によると、家庭教師をしていた病弱な子供に、泳げるはずのない距離を泳ぐことを許可して溺死させた。
フレッド・ナラカット
孤島への船を操縦した人物。食事等も彼が運んでくる予定であったが、結局姿を現さなかった。
アイザック・モリス
オーエン夫妻の代理として、孤島の売買や管理を手配していた。
トマス・レッグ卿
ロンドン警視庁副警視総監。
十人の小さな兵隊さん作品内で登場するTen Little Soldier Boys

「十人の小さな兵隊さん」(: Ten Little Soldier Boys)は、作中に登場する童謡である[8]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:133 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef