せん妄
[Wikipedia|▼Menu]

せん妄
概要
診療科精神医学, 神経学, 心理学
分類および外部参照情報
ICD-10F05
ICD-9-CM293.0
DiseasesDB29284
eMedicinemed/3006
Patient UKせん妄
MeSHD003693
[ウィキデータで編集]

せん妄(譫妄、せんもう、: delirium)とは意識混濁に加えて奇妙で脅迫的な思考や幻覚錯覚が見られるような状態。健康な人でも睡眠中に強引に覚醒されると同症状が発生する場合がある。特に集中治療室(ICU)や冠疾患集中治療室(CCU)で管理されている患者によく発生するとされる[1]医学用語としての具体的な定義はあるものの、あらゆる種類の錯乱状態を総称する言葉として使用されることもしばしばある[2]

急激な精神運動興奮(カテーテルを引き抜くなど)や、問診上明らかな見当識障害で気がつかれることが多い。大手術後の患者(術後せん妄)、アルツハイマー病脳卒中、代謝障害、アルコール依存症の患者にもみられる。せん妄とは治療も異なる振戦せん妄は、ベンゾジアゼピン系薬物からの離脱によって起こり区別される。

通常は対症療法が行われる。一般に抗精神病薬が使われるが、その効果には議論がある。
症状

覚醒水準の低下の亢進、見当識障害、注意の散漫、判断力・集中力の低下、思考や気分の不安定化、錯覚や幻覚などの意識障害が発生し[3]、攻撃的になったり暴力を起こすこともある[4]。突然生じ経過は短いが、命にかかわることもある緊急事態である[4]

高齢者にはせん妄がしばしば出現するが、その状態像は認知症と重なる部分が多いため、高齢者の軽い意識障害は仮性認知症と呼ばれる[3]。せん妄の特徴として、発現が急性または亜急性であり、症状の発現に浮動性があり、夜間に増加する傾向があることから[4]、せん妄と認知症の鑑別は時間の経過によって行われる[3]。「入院した途端、急にボケてしまって(認知症のように見える)、自分がどこにいるのか、あるいは今日が何月何日かさえもわからなくなってしまった。」というエピソードが極めて典型的である。

また、高熱とともにせん妄を体験する場合があり、とくに子供に多い[5]。大半の患者はせん妄を覚えており、苦痛な経験だったとの調査報告があり、せん妄は意識障害だから記憶がないというのは誤解である[6]

こういった症状をおこすせん妄という病態の背景には意識障害、幻視を中心とした幻覚、精神運動興奮があると考えられている。
危険因子

認知症、高齢、重症患者、うつ状態、複数薬物、聴視覚障害(難聴白内障)、感染症、薬物の中毒症状、アルコールや薬物の離脱症状、疼痛、手術後、身体抑制などがリスクファクターと言われている。
診断基準

精神障害の診断と統計マニュアル』 (DSM) にも診断基準はあるが、より実践的なConfusion Assessment Methods (CAM) をここでは記す[7]

急性の発症と症状の動揺

注意力の欠如

思考の錯乱

意識レベルの変化

2つ目までは必須項目であり、あとひとつを満たせば診断してよい。
鑑別診断

認知症では、長期間症状が持続しており意識の混濁はないが、認知症の者にせん妄が生じることもある[4]。急性の脳損傷も似た症状を起こすが早い治療が必要なため、身体疾患の特定も必要となる[4]

薬の過剰摂取による症状は、薬物相互作用や代謝の低下した高齢者で起こりうる[4]

振戦せん妄は、アルコールやベンゾジアゼピン系薬あるいはバルビツール酸系薬の離脱症状できたすせん妄状態である。せん妄とは区別され、治療も異なる。
予防

2016年のコクランレビューは、集中治療室以外の入院患者でBispectral indexを用いて麻酔の深さをモニターすることで、せん妄発生率を低下させる中程度の質のエビデンスがあるが、抗精神病薬コリンエステラーゼ阻害剤メラトニン、メラトニン受容体作動薬では研究はされているがせん妄の発生率を低下させる明確なエビデンスはないとした[8]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:38 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef