さん孔テープ
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紙テープ (かみテープ、: paper tape, punched tape)は、細い一定幅の長いのこと。一般に芯に巻きつけた形で提供される(紙巻テープともいう)。価格が安価であり、表面への装飾が可能である。巻きつけた形のためコンパクトであり、ドラムなどに取付けて機械的に駆動すれば時間と同期した出力を得ることができる。このことから過去において初期の記録媒体電信機テープレコーダー(磁気テープのベースとして))としても使用された。


目次

1 記録媒体としての紙テープ

1.1 フォーマット

1.1.1 寸法

1.1.2 半鑽孔テープ


1.2 用途

1.2.1 通信

1.2.2 ミニコンピュータ

1.2.3 ROM/EPROMへのプログラムデータ転送

1.2.4 キャッシュレジスタ

1.2.5 新聞業界

1.2.6 自動機械

1.2.7 暗号


1.3 制約

1.4 利点


2 記録媒体以外の紙テープ

2.1 装飾・演出用

2.2 その他


3 脚注

4 関連項目

5 外部リンク


記録媒体としての紙テープ5孔テープと8孔テープ紙テープ読取装置。ループを形成した短い5孔テープが装着されている。

コンピュータの情報を記録するために使われた。自動パンチ機で穴をあけて、穴の有無で0,1の信号を記録する。「鑽孔テープ」(さんこうテープ)や「穿孔テープ」(せんこうテープ)ともいう。情報分野としては、元々は電報用で、アルファベットのみからなるコード体系の5孔のものから始まったが、徐々に拡張され6孔や7孔、1960年代以降のバイト=オクテットの時代には8孔となった。後述するが、幅の広いテープの例もある。

コンピュータ以前にはテレタイプで実用に使われており、コンピュータが起源ではない。またさらに古くは自動演奏楽器で楽譜を記録するために用いられるもの(ピアノロールなど)に起源を求めることが出来る。ピアノロールなどは幅が広いが、幅の狭い鑽孔テープは古くは1846年、アレクサンダー・ベイン電信の自動送信機で使った例がある。また1950年代のコンピュータでも幅の広いテープがある[1]。1990年代前半あたりまではパチンコ店でジェットカウンター(玉数計数機)の出力としても使用されていた。

モスクワの宇宙征服者のオベリスク (1964) には、コンピュータまたは通信技術者と思われる人が描かれたレリーフがあり、その人物は3行の四角い穴の空いた紙テープを持っている。

1970年代のSFアニメ等に於いてはコンピュータが作動している場面のガジェットとしてオープンリールデータレコーダと共によく描かれていた。鑽孔テープのビット列をそのまま読み取って理解するのは、紙テープが記録媒体に使われていた時代のコンピュータ技師にとっては当たり前の技能であった。テープの穴の空き具合は二進法の順序立てられたものであり、0 - 9数字や若干の制御文字は容易に憶えられ、また手元にASCIIJISISOの該当する文字コードの一覧表が有れば逐一読み取る事はできる。

かつては駄菓子屋で、使用済みの鑽孔テープが商品として売られており、「スパイごっこ遊び」などで活用されていた。

紙テープは今ではほとんど記録媒体として使われていない。新規システムが入出力に紙テープを採用することはない。CNC機械は既存のデータを活用するために紙テープ装置が比較的長く使われてきたが、それも急速に他の手段に取って代わられつつある。
フォーマット

データは所定の位置に穴があるかないかで表される。最初は1列に5穴でデータを表していたが、後に6穴、7穴、8穴のものが登場した。初期の電気機械式計算機である Harvard Mark I では、1列24穴の紙テープを使っていた[2]。データを表す穴のほかに、各列で必ず開けられている小さめの穴があり、スプロケットの歯で紙テープを送るのに使われていた。後に光学読取装置がタイミングパルスを生成するのにスプロケット用の穴を使うようになった。

文章(テキスト)の符号化にはいくつかの方法がある。最初期の文字コードBaudotで、その起源は19世紀に遡る。Baudotは5穴に対応している。その後、6穴の文字コードとして Teletypesetter (TTS)、Fieldata、Friden Flexowriter の文字コード規格が登場し、広まった。1960年代に入ると、米国国家規格協会がデータ処理用汎用コードを策定するプロジェクトを開始し、ASCIIが生まれた。これを採用した7穴の紙テープを使ったテレタイプ端末テレタイプ社などが生産した。テレックスなどではBaudotを使い続けた。
寸法

鑽孔テープの厚さは0.1mm(0.00394 インチ)である。Baudot用テープの幅は17.46mm(11/16インチ)、ASCIIおよび6穴以上用テープの幅は25.4mm(1インチ)である。穴と穴の間隔はどちらの方向でも2.54mm(0.1インチ)である。データ用の穴の直径は1.83mm(0,072インチ)、フィード用の穴の直径は1.17mm(0.046インチ)である[3]。この2種類の幅の紙テープは2012年現在も販売されている[4]
半鑽孔テープ

鑽孔装置はほとんどがテープに完全に穴を開ける。その過程で必然的にチャド (chad) と呼ばれるパンチ屑が出てしまう。チャドは非常に小さい紙片であり、テレタイプ端末の機械部分に入り込んだりする問題を抱えていた。Baudotの5穴対応の半鑽孔テープ。テレタイプ社が1975年から1980年ごろに採用していたもの

その問題への対処として Chadless Printing Reperforator という紙テープ鑽孔装置が登場した。これはテレタイプ信号を受信してそれを紙テープに鑽孔しつつ、同じ紙テープ上にメッセージを印字するものである。このとき完全に穴を開けるのではなく、U字形に切れ目を入れるだけに留めるので、チャドが発生しない。これを半鑽孔テープまたはチャドレステープと呼ぶ。復号結果が印字されているので、穴を見て解読する必要がない。また、パンチ屑入れが不要となる。ただし、半鑽孔後のテープは巻こうとすると切れ目同士がひっかかることがあり、きつく巻くことができないという欠点がある。また、後に高速な光学読取装置が主流になってくると、半鑽孔テープは読み取ることができないという問題点も出てきた。それ以前の機械式の読取装置では、ばねつきの針で穴の有無を判定しており、切れ目が入っているだけでも問題なく読み取ることができていた。
用途
通信アメリカ連邦航空局のホノルル・フライト・サービスでの紙テープ中継作業の様子(1964年)

紙テープはテレタイプ端末用のメッセージ格納手段として使われてきた。オペレータがタイプしたメッセージは紙テープに格納され、その紙テープを使って回線の最高速度でメッセージを送信する。そのためオペレータは「オフライン」で普通のタイピング速度でメッセージを準備でき、送信前に間違いを訂正することもできる。熟練したオペレータは短時間なら135WPM(ワード毎分)でタイピングできた。

通信速度は75WPMだったが、常にその速度を維持できた。紙テープを媒介させてタイピングと通信を分離することで、一定速度の通信を可能としていた。一般に1つの75WPMの回線に対して、3人かそれ以上のオペレータがオフラインで作業していた。また、受信局で受信したメッセージも紙テープに鑽孔されるので、それを使って別の局に中継することもできた。これにより、大規模なストアアンドフォワード型ネットワークが形成されていた。

コンピュータは最高で毎秒1000文字の速度で紙テープを読み取ることができた[5]
ミニコンピュータData General Nova ミニコンピュータ用のソフトウェアは折りたたまれた連続紙型の紙テープに格納されていた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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