けものみち_(松本清張)
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けものみち
小説中の「ニュー・ローヤル・ホテル」が所在する設定とされる、東京・赤坂周辺。
小説執筆当時、プルデンシャルタワー(写真左上)所在地に「ホテルニュージャパン」が立地していた。
著者松本清張
発行日1964年5月
発行元新潮社
ジャンル小説
日本
言語日本語
コードISBN 978-4101109695文庫本

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『けものみち』は、松本清張の長編小説。「けものみち」[1]に迷い込み、戦後日本の権力構造を垣間見た者たちの運命の変転を描く、著者の社会派サスペンスの代表的長編。『週刊新潮』(1962年1月8日号 - 1963年12月30日号、連載時の挿絵は生沢朗[2])に連載され、1964年5月、新潮社から単行本として刊行された。後に電子書籍版も発売されている。

1965年東宝映画化、また3度テレビドラマ化されている。
あらすじ

成沢民子は脳軟化症のために動けなくなった夫・成沢寛次を養うため、割烹旅館・芳仙閣で住み込みの女中をしていた。しかし、寛次はそんな民子をいたわるどころか、日々、猜疑心を募らせ、民子が家に戻るたびに、執拗にいたぶるのだった。

ある日、芳仙閣にニュー・ローヤル・ホテルの支配人・小滝章二郎が訪れる。小滝は民子に、今の生活から抜け出し、もっと安楽な生活に導く手助けをするようなことをほのめかす。民子は小滝の誘いに乗ることを決意し、失火に見せかけて夫を焼き殺す。そして、民子は弁護士・秦野重武によって、政財界の黒幕・鬼頭洪太の邸宅に連れて行かれる。小滝の誘いとは、鬼頭の愛人になることだったのである。民子は鬼頭の相手を務める一方、小滝とも関係を持ち、鬼頭の後ろ盾を得て、奔放な生活を送るようになる。

そのころ、寛次の焼死事件は、小滝が民子のアリバイを証言したこともあり、警察消防によって失火と断定された。しかし、事件を担当した刑事・久恒義夫は、事件に不審を抱いて独自に捜査を進め、民子が夫を焼き殺したという結論に達する。民子の美貌に魅せられた久恒は、自分が集めた証拠を民子にちらつかせ、民子にたびたび関係を迫る。

しかし、逆に久恒はささいな理由で警察官を免職される。自分を免職にした上司の背後に鬼頭の姿を見た久恒は、自分が調べ上げた鬼頭の闇の部分を手紙にしたため、新聞社に持ち込むが、鬼頭の力を恐れる新聞社は久恒のネタをどこも採用しなかった。改めて鬼頭の実力を知った久恒は、失踪した鬼頭家の女中頭・米子の殺害事件の証拠を集めて鬼頭を追い詰めようとする。
登場人物
成沢民子(なるさわ たみこ)
旅館「芳仙閣」の女中。31歳。現在の閉鎖的な生活から逃げ出したいと思っている。
小滝章二郎(こたき しょうじろう)
赤坂の「ニュー・ローヤル・ホテル」支配人。
鬼頭洪太(きとう こうた)
政財界に不思議な実力を持っている怪物的老人。麻布の大邸宅に住む。2年前より脳軟化症を患っている。
秦野重武(はたの しげたけ)
ニュー・ローヤル・ホテルにすでに2年逗留し続けている男。
久恒義夫(ひさつね よしお)
警視庁捜査一課の古参刑事。
成沢寛次(なるさわ かんじ)
民子の夫。脳軟化症で寝たきりとなる。
米子(よねこ)
鬼頭邸を取り仕切る女中頭。かつては鬼頭の愛人だった。
黒谷(くろたに)
鬼頭邸をうろつく得体の知れないグループの一人。
エピソード

和田勉によれば、著者が本作を書くきっかけは、仲居からの一通の身の上相談の手紙であったという[3]。本作は(以前に連載された)『わるいやつら』以上の評判を呼び、本作連載時の『週刊新潮』は120万部を発行し、増刷となった[4]

小説中の「ニュー・ローヤル・ホテル」は、赤坂の高台にある3年前に新築されたホテルと描写されているが[5]、モデルをホテルニュージャパンとする推測がなされている[6]

本小説に登場する鬼頭洪太のモデルについて、推理小説評論家の権田萬治は、児玉誉士夫と推測し、加えて、辻トシ子(元・岸内閣副総理秘書官)の証言からトシ子の父である辻嘉六とする説も紹介している[7]。また、当時清張の専属速記者を務めた福岡隆は、秦野重武にはモデルがあるとしている[8]。文芸評論家の細谷正充は、「政財界を裏から操る黒幕」という設定は、大藪春彦森村誠一の小説、のちにはコミックなどのエンターテイメント作品に広く流布されているが、本作は、政財界の設定を使い勝手の良いガジェットとして扱うのではなく、政財界の闇そのものを真正面から取り上げ、徹底的にリアルな掘り下げをした点で、意外なほど少ない、例外的な作品となっていると評している[9]

映画

けものみち
Beast Alley
監督
須川栄三
脚本白坂依志夫
須川栄三
製作藤本真澄
金子正且
出演者池内淳子
池部良
小沢栄太郎
小林桂樹
伊藤雄之助
森塚敏
大塚道子
黒部進
千田是也
矢野宣
土屋嘉男
中丸忠雄
音楽武満徹
撮影福沢康道
編集黒岩義民
配給東宝
公開 1965年9月5日
上映時間150分
製作国 日本
言語日本語
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1965年9月5日東宝製作・配給で公開された。DVD化されている。
キャスト

成沢民子 -
池内淳子

小滝章二郎 - 池部良

鬼頭洪太 - 小沢栄太郎

久恒義三 - 小林桂樹

秦野重武 - 伊藤雄之助

成沢寛次 - 森塚敏

渡部米子 - 大塚道子


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