くしゃみ
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この項目では、生理現象および症候について説明しています。平野啓一郎の小説『くしゃみ』については「滴り落ちる時計たちの波紋」を、ともさかりえの楽曲については「くしゃみ (曲)」をご覧ください。
くしゃみシャドーグラフ(英語版)によるサージカルマスク、N95マスクなどを付けた場合のエアロゾル視覚化比較

くしゃみ(嚔、: sneeze)とは、一回ないし数回痙攣状の吸気を行った後に強い呼気をされること[1]。くしゃみ反応は不随意運動であり「自力で抑制」することはできない。
原因

くしゃみの基本的な機能は二つある。一つは、体温を上げるための生理現象である。人は、吸気があっても、吐気で鼻腔(鼻の穴)内の体温を保とうとするが、鼻腔内の体温が著しく下がったとき、鼻腔内の知覚神経は脳に体を振動させて体温を上げる命令を出す。これがくしゃみである。二つめは、鼻腔内の、異物を体外に排出するための噴出機能である。

鼻腔内には、埃などを知覚しヒスタミンを出して脳が排出するよう判断する機能はあるが、ウイルスに対する知覚機能ではないため、鼻腔など上気道に付着したウイルスなどの異物を激しい呼気とともに体外に排出しようとして起こる呼吸器における反射的な反応ではない。くしゃみが続く現象は、鼻腔に接続する血管や、毛細血管の狭窄やつまりによって、鼻腔内の体温の継続的な格差が生じるためである。くしゃみをする原因としては物理的な刺激(鼻粘膜毛髪などで刺激する、冷気を吸うなど)や刺激物質の吸引、アレルギー反応などがある。風邪花粉症などのアレルギー性鼻炎の人でも一般的な症状である。また激しい光刺激(突然の強い太陽光 等々)でも発生することがある(光くしゃみ反射)。

アレルギーによらずに埃や冷気を急に吸い込むなどした物理的な刺激によるものも、ほぼ同様にして反射が起こる。通常は連続することは少ないが、自律神経の異常や精神的ストレスなどが原因で、アレルギーではないにもかかわらず過剰に反応することがある(血管運動性鼻炎)。風邪の場合は、炎症により鼻の粘膜が過敏になっているために発生する。

化学的刺激でも起きる場合がある[注釈 1]胡椒の粉末を吸い込んだ場合などは、異物が付着したという物理的刺激のほか、胡椒自体の刺激性物質による化学的刺激もあるためくしゃみが発生しやすい。

人為的には、花粉症などアレルギー性鼻炎の患者の鼻腔内にヒスタミンを噴霧することにより、ほぼ30秒以内にくしゃみを発生させることができる。また、こよりなどで鼻腔を刺激することでもくしゃみを発生させることができる(出かかったくしゃみが途中で止まってしまいすっきりさせたい場合にわざと行われることがある)。
メカニズム

くしゃみ反射の詳細なメカニズムは完全には明らかになっていないが、例えばアレルギー性鼻炎の場合は、アレルゲンの吸入により肥満細胞からヒスタミンなどが分泌され、それが鼻粘膜における知覚神経である三叉神経終末にあるヒスタミン受容体(H1受容体)と結合する。そこから求心性インパルスが延髄のくしゃみ中枢へ伝わり、刺激を受けたくしゃみ中枢から遠心性インパルスが各種神経を通って呼吸筋(横隔筋、肋間筋など)、喉頭筋、顔面筋へと伝わりくしゃみが起こる。

なお、くしゃみは不随意運動ではあるが、演技でくしゃみ反応と同様の動作を意図的に行うことは可能であり、コントやコメディ(喜劇)などでも使われる。例えば日本では加藤茶の持ちネタの一つである。
医療・医学

くしゃみはほぼ上半身全体の筋肉を激しく運動させるほか、が乱れ呼吸が阻害されるため、くしゃみは連続して発生すると、体力を著しく消耗する。口腔内の唾液を吸い込んでしまい、続けてをする事もある。肋骨を損傷するおそれもあるため、多発する場合は抗ヒスタミン薬等が使用される。

通年性アレルギー性鼻炎における調査では、1回のくしゃみ発作回数が多いほど、1日の発作回数が多いという相関がみられている[要出典]。

アレルギー性鼻炎や風邪などの際には、抗ヒスタミン剤を服用または点鼻することにより抑える事ができる。ただしこれはくしゃみの発生原因の除去ではなく対症療法である。

くしゃみはごく一般的な症状のため、単体では疾病の種類が特定しづらい。
クシャミによって起こる弊害
一般にくしゃみ発作の際には目をつぶる。また、体の他の部位のコントロールがきかないだけでなく、腕などの筋肉の収縮あるいは硬直を伴うため、自動車の運転や機械操作の際には危険な状態となる。熱い飲み物が入ったコップを持っている時なども同様に火傷の可能性があるので危険である。瞬間的かつ急激におこる激しい運動であるため、肋骨の損傷・骨折や、いわゆるぎっくり腰の原因ともなる。とくに腰に心配があることがあらかじめわかっている人は、くしゃみの前兆を感じたら座り込んでしまうか、近くにある壁などに手をついて体を固定するように心がけるとよい。
我慢した場合の弊害
瞬間的に大きな圧力を発生させる現象なので、無理に我慢すると弊害が起きる。喉や鼻腔・中耳・内耳の損傷、耳の感染症、鼓膜の破裂、脳脊髄圧や血圧が上がり脳の血管にも作用するなどが起きる[2][3]
エチケットくしゃみによる唾液の飛散

くしゃみにより排出される呼気の風速は時速約320kmである[4]。また、呼気に含まれる唾液の飛沫は、時速約36km、秒速約10mの速度で[5]約4m先まで飛ぶ[4]。埃によるものなど一般的で単発のくしゃみであれば、飛沫が近くの物品や人にかからないように横や下を向いたり手などで口を覆えばよいが、風邪など病気の場合にはこの呼気と共にウイルスが飛散し(飛散量は約100万個[4])、飛沫感染のもととなる。よって病気の場合はマスクをするなどして飛沫の拡散を防ぐことが重要であり、特に日本では一般にマナーとなっている(これはでも同じである)。鼻腔内に鼻水がある場合は、くしゃみと共にそれも出てしまうため、マスクはそれを他人の目に触れさせないためにも有効である。マスクを外した後は、内側を触らずに折り畳んで捨てる。病気の場合でマスクがない場合は、ハンカチやティッシュで受け止め、それらもない場合は腕で受け止める。これは、手で受け止めると手摺やドアノブなどを介して感染経路が広がるからである。万が一手で受け止めた場合は、速やかに手を洗う[6]
文化、民俗
擬声語詳細は「くしゃみへの周りの反応」を参照

擬声語は言語ごとに異なり、多様である。が、ほとんどの言語が擬声語を「ア」音で始める。英語では「ahchoo! アチュー」。フランス語では「atchoum!」。日本語は例外的で(「h」音が入り)「ハクション」。
くしゃみをした人への声がけ詳細は「くしゃみへの周りの反応」を参照

くしゃみをしている人を見た時に、くしゃみをしている人に対し何か言葉をかける習慣が多くの国にある。欧米圏では何かしら決まった言葉を言うことが一般的であり、街角・駅などで見ず知らずの人がくしゃみをしてもしばしば声をかける。

スペイン語圏ではくしゃみをした人に対し "!Salud!" (健康)と声をかけることがある。この習慣はカトリック教会を中心として教皇グレゴリウス1世 (540年 - 604年) の時代に広まったものとされる。さらに、2 回くしゃみをすると "Salud y dinero" (健康とお金)、3 回くしゃみをすると"Salud, dinero y amor" (健康とお金と愛)と言う。

フランス語では "A tes [vos] souhaits ! ア・テ・スエ(ア・ヴォ・スエ)" (願いが叶うように)と言う。さらに、2 回くしゃみをすると "A tes [vos] amours ! ア・テ・ザムール" (恋愛が上手く行くように)と言う(どちらも冗談ぽい表現)。他には、"Dieu te [vous] benisse ! デュー・トゥ(ヴ)・ベニス" ("Que dieu te [vous] benisse ! ク・デュー・トゥ(ヴ)・ベニス") (神の御加護がありますように)とか、"Dieu te [vous] assiste !"(同前)などと言う。いずれも、[ ]内の語句は目上の人などへの言い方で用いる。他の言語圏と同じ意味合いで "Sante ! サンテ" (健康)とも言う。

イタリア語では "Salute! サルーテ" (健康)と言う。

英語圏では、ほぼ反射的に "Bless you ブレス・ユー" と言うことが一般的である。これは「God Bless you」の略で、「神の祝福あれ」という意味。

ドイツ語圏では、反射的に "Gesundheit ゲズントハイト" (健康)と言う。

トルコ語では "Cok ya?a チョク・ヤシャ" と声をかける。これは「長生きして下さい」という意味である。この言葉をかけられた側は"Sen de gorun セン・デ・ギョリュン"と返答する事が一般的である。


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