きみはいい子
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きみはいい子
著者
中脇初枝
発行日2012年5月20日
発行元ポプラ社
ジャンル連作短編集
日本
言語日本語
形態四六判上製本
ページ数319
公式サイト ⇒http://www.poplar.co.jp/
コードISBN 978-4-591-12938-8
ISBN 978-4-591-13975-2文庫本

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『きみはいい子』(きみはいいこ)は、中脇初枝による日本の連作短編集児童虐待を題材に書き下ろし、2012年5月20日ポプラ社より刊行された。どこにでもある新興住宅街を舞台に、育児放棄や児童虐待を“される側”のみならず“する側”の問題にも焦点を当てて描く。第28回(2012年度)坪田譲治文学賞受賞作。呉美保監督により映画化され2015年に公開された。
目次

1 概要

2 収録作品

2.1 「サンタさんの来ない家」

2.2 「べっぴんさん」

2.3 「うそつき」

2.4 「こんにちは、さようなら」

2.5 「うばすて山」


3 書籍情報

4 映画

4.1 キャスト

4.2 スタッフ

4.3 製作

4.4 封切り

4.4.1 関連商品


4.5 作品の評価


5 脚注

6 外部リンク

概要

2010年大阪2幼児置き去り死事件をきっかけに執筆された児童虐待をテーマとした作品[1]。語り手は章ごとに異なるが[2]、共通して描かれているのは区内最大の児童数を有し、窓から富士山が見える開校40周年間近の桜が丘小学校や、“パンダ公園”と呼ばれる烏ヶ谷(うがや)公園がある桜が丘という町での出来事。どこにでもあるような谷を埋めた新興住宅街を舞台[1][2]に、重いテーマを扱いながらも全ての作品が誰かの思いやりや言葉によって光がもたらされる優しい結末となっている[3]。これには、人間どんなことが起こったとしても、同じ日・同じ時間・同じ場所にいる誰かがほんの少し関わるだけで、救ったり救われたりする可能性があるということを示したいという著者の思いが込められている[4]

育児放棄や虐待を“される側”だけでなく“する側”の心の問題にもスポットを当て、丁寧に描いたことで反響を呼んだ[5]。書店員らの間でも話題となり、有志の書店員によって「きみはいい子応援会」なるものも結成され[6]2012年6月30日放送の『王様のブランチ』でも紹介された[7]2012年に静岡書店大賞[8]2013年に第28回坪田譲治文学賞を受賞した[9]。同年の本屋大賞は第4位[10]

同じ桜が丘を舞台として共通する世界観で描かれた『わたしをみつけて』が2013年に刊行された[4]
収録作品
「サンタさんの来ない家」
あらすじ
桜が丘小学校に赴任した教師2年目の岡野匡は、1年生の担任となる。最初は順調に滑り出したものの、下校途中にクラスの男の子3人が民家の呼び鈴を鳴らして逃げたり、女の子が教室でおもらしをしてしまったりと次第に問題が起き始める。民家のおばあさんは笑って許してくれたが、女の子の保護者からは「先生が怖くて言い出せなかったせいだ」と言われ、岡野は学年主任や副校長らから注意を受ける。しかし言われるがまま、いつも微笑んで怒らず怖がらせないことを徹底したところ、授業中にトイレに行く子が続出、次第に誰も席につかなくなり6月にはクラスは崩壊してしまう。それでもなんとか1年をやり過ごし、次の年は4年の担任となった岡野だったが、陰でクラスメイトを非難する紙が回っていたり、力を持つ子がグループの長となって特定の子をいじめていたりとクラスはやはり問題を抱えていた。そんな中、岡野は学校が休みなのにも関わらずうさぎ小屋の前にずっと佇む神田さんを見つける。彼は親が給食費を一切払っておらず、クラスでもそのことでからかわれていた。雨が降っても帰ろうとしない神田さんに事情を聞くと、父親に「5時までは絶対に家に帰ってくるな」と言われていることがわかる。「僕がわるい子だからお父さんは怒るし、僕の家にはサンタさんが来ない。」と言う神田さんに、岡野は「そんなことないよ。神田さんはいい子だよ。」と必死で伝える。しかし実際に彼を家まで送って問題の父親と対面し、閉じられたドアの奥で彼が
虐待されているのを感じても、それ以上踏み込むことまではできなかった。自宅に帰り、自分の悩みにしっかり耳を傾けてくれる家族と過ごした岡野は、「自分はこんなに恵まれているのに」と神田さんを不憫に思い、自身の行動を反省する。なんとかしたいと痛切に思った岡野は自分の父親の言葉をヒントに、翌日、生徒達に「家族に抱きしめられてくること」という宿題を出す。
登場人物

岡野 匡(おかの ただし)
教師になって2年目。大学を出て初めて着任した桜が丘小学校で1年生を受け持つ。県立高校から指定校推薦で入った私立大学の学部がたまたま教育学部であり、ピアノ教室経営の母親の影響でピアノが演奏できたため、それが優位に働き競争率も低いと考え小学校教諭を志望した。父・母・姉と4人暮らし。父親は元商社マン。10歳年上の姉は留学先で知り合ったアメリカ人と結婚したが、暴力をふるわれたために5歳の娘を置いて出戻り、現在離婚調停中で、本人は旅行代理店に勤めている。「うそつき」や「こんにちは、さようなら」にもちらっと登場する。
校長
桜が丘小学校の女性校長。髪を真っ黒に染めて白粉を塗りたくっているため年齢不詳だが、定年に限りなく近そうに見える。
副校長
桜が丘小学校の副校長。頭はバーコード状態。1年生の背丈まで岡野をしゃがませ、1年生から見た大人の大きさを優しく諭す。
おばあさん
桜が丘小学校の通学路にある家に住んでおり、毎年のように児童にピンポンダッシュをされるが、怒ることもなく「こどもは元気なのが1番」と笑う。「こんにちは、さようなら」で「あきこ」としてメインで登場する。
清水(しみず)
岡野が4年で担当するクラスの女子生徒。色白で髪の長く、きれいな顔立ちをしている。どちらかというとおとなしく、中休みは本を読んでいることが多い。
大熊(おおくま)
岡野が4年で担当するクラスの男子生徒。体が大きく、時にいじめなどのやんちゃな面も目立ち、男子の中心にいる。勉強はできないがサッカーはうまい。父親がおらず、3人の弟たちとは母親が異なる。「うそつき」でもちらっと登場する。実は学校での怪我を家に帰っても親に全く手当してもらえていない。
星(ほし)
岡野が4年で担当するクラスの女子生徒。大人っぽく、派手な女子グループの代表で、いつもミニスカートを履いている。清水を率先していじめる。「うそつき」でもちらっと登場する。母親がおらず、参観日にはいつも祖母が来ていたが、実は自宅に赤ちゃんの頃の写真が1枚もない。
櫻井(さくらい)
個別支援学級の男子生徒。漢字の読み書きやかけ算や割り算はできないが、「こんにちは、さようなら」と挨拶はきっちりできる。「こんにちは、さようなら」にメインで登場する。
神田(かんだ)
岡野が4年で担当するクラスの男子生徒。2年の後期の途中で東京から引っ越してきた。クラスの中でも小さい方で、目もくりくりなため最初は女の子に思われることもある。まつげは長くて濃いが、身体は細くてうすっぺらく、存在感も薄い。給食を率先しておかわりするが、親は給食費を1年から4年まで一度も払ったことがない。季節に合わない服を着ていることも多く、上履きも洗った形跡がない。兄弟はおらず一人っ子。母親は忙しく、参観日はおろか個人面談も懇談会にも来たことがない。
神田の父
血のつながりはない。眉間と唇の上下とあごに銀色のピアスをしていて、いかにも柄の悪そうな男。仕事はしておらず、家にいて寝ているかパチンコをしているかのどちらかである。
「べっぴんさん」
あらすじ
「あたし」はいつものようにあやねを連れて、同じママ友達が集う烏ヶ谷公園(通称:パンダ公園)へ行く。ここではみんなが常にニコニコとしていて、自分の子供がどんなことをしても怒らないが、それはきっと表向きの姿だと「あたし」で、「あたし」が家に帰って、1日の行動を思い出して「これはブランコに割り込んだ分」「これはお砂場道具を片付けなかった分」と、あやねの髪をつかんでひきずったり太ももを叩いたり、背中を蹴ったりしているみたいに、きっとどのママも同じことをしているに違いないと思っている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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