がめつい奴
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『がめつい奴』(がめついやつ)は、菊田一夫作の戯曲、およびそれを原作とする映画テレビドラマである。

戯曲は、1959年度の芸術祭主催公演用に芸術座に書き下ろされた。戦後の演劇史においては初めてとなるロングラン公演となり、その記録は後に劇団四季が『キャッツ』を公演するまで破られることはなかった。蝉の会1994年1998年)、大阪新劇団協議会プロデュース公演(1997年)でも上演された。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
作品解説

1950年代半ばの大阪釜ヶ崎で暮らす人々を描いた4幕6場からなる長編の戯曲で、全編を通して関西弁を用いて描かれている。一般社会との経済的な格差を実感し、人並みの生活を送りたいと奮闘する登場人物の描写が、日本版『どん底』だと評されることもある[1]

1959年10月5日月曜日から翌年の1960年7月17日日曜日まで芸術座で東宝現代劇が公演を行い、主人公のお鹿婆さんを演じた三益愛子と、その婆さんに引き取られた戦災孤児役の中山千夏のとぼけた子役ぶりに人気が集中した[2]。270日間のロングラン。

この作品で三益は1959年度の芸術祭文部大臣賞とテアトロン賞を受賞し、主人公の敵役といえる彦八役を演じた榎本健一もテアトロン賞を受賞した。また、作者の菊田も菊池寛賞芸術選奨文部科学大臣賞(演劇部門 )を受賞(芸術選奨は「がしんたれ」とあわせての受賞)した。

芸術座での公演を終えた後は地方都市での公演が行われ、1960年9月には梅田コマ劇場、10月に名古屋名鉄ホールでそれぞれ公演された。さらに九州の数か所の都市でも再演された。また、1960年には映画化され、千葉泰樹が監督を務めた。舞台や映画同様に三益を主役にしたテレビドラマ化もされていて、1964年12月には日本テレビで単発のドラマが放映され、フジテレビ系列でも1970年9月から12月まで連続ドラマが放映された[3]
あらすじ

お鹿婆さんこと向山鹿は、釜ヶ崎で1泊60円の簡易旅館「釜ヶ谷荘」を営む一方で高利貸しも行っている。がめつい性格は周辺の人々にも有名だが、戦災孤児のテコを引き取って育てる一面もある。

「釜ヶ谷荘」に定住している人々は多く、ポンコツ屋の熊吉と占い師のおたか、マッサージ師の圭子、鹿の娘である咲と共謀して美人局をしている「通天閣の雄」、ニコヨンの世話人である「播州の鉄」、麻薬屋の源さん、かつては女形の役者として活躍していた実川深之丞、千三つ屋の神田に加え、ホルモン料理の屋台を出している小山田初枝と絹の姉妹もいる。かつて、小山田姉妹の父は「釜ヶ崎荘」周辺の土地を所有していたが、家族で疎開している間に、鹿を始めとする人々に勝手に使われてしまった。妹の絹は鹿の息子の健太と親密な仲だが、姉の初枝は鹿から土地を取り返したいと強く望んでいる。そんな初枝に熊吉がおたかの目を盗んで接近し、手を貸すと告げる。戸惑いながらも初枝は熊吉の申し出を受け入れる。そんなある日、鹿の亡くなった夫の弟だという彦八がやって来て、鹿が3000万を貯め込んでいることを知っていると暗にほのめかす。

土地を返すように頼み込んでもまともに取り合おうとしない鹿に、初枝は訴訟を起こすことを告げる。そこに熊吉がやって来て、弁護士を料理屋に連れて来たから会おうと初枝を誘い、宿を出る。初枝の体を奪うとともに土地の権利書を取り上げた熊吉は、次の日に健太たちに土地の売買を持ちかけるが、鹿に拒絶され、話はなかったこととなる。熊吉が出て行った後に戻って来た初枝は、2人から権利書を売りに来たと教えられて驚き、熊吉を探しに出かける。

鹿が梅干しの瓶に入れてしまい込んでいた金を勘定していると、健太がやって来て、絹と結婚するから財産の半分をくれと頼み込む。断る鹿ともめているうちに、健太は鹿の首を絞めてしまう。騒ぎに驚いて集まった住人の1人である風船売りの「閣下」の人工呼吸によって事なきを得たところにテコがやって来て、自分の知らない男たちが「釜ヶ谷荘」を取り壊すと言っていたことを住人に告げる。あわてて出て行った住人たちと入れ違いで入って来た彦八が鹿の金の入った瓶を探していると、テコに見つかってしまう。彦八は、梅干しが好きだから800円で瓶を売ってくれと、テコに頼む。本当に梅干しが好きなのかと念を押した上で、テコは彦八に梅干しの瓶を1つ渡す。改めて彦八が瓶の中を確認すると、そこには金はなく、ただ梅干しが入っていた。

権利書を土建屋に売った熊吉がカフェーホステスをからかっていると、初枝がやって来て権利書を返して欲しいと頼み込む。馬鹿にする熊吉を初枝は隠し持っていたナイフで刺し、逃げる熊吉をなお追いかける。一方、鹿と健太は、権利書を手にした土建屋の升金と土地の売買について話し合う。


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