かもめのジョナサン
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『かもめのジョナサン』(Jonathan Livingston Seagull)は、リチャード・バックによる小説寓話的作品。1970年アメリカで出版され、最初は当時のアメリカのヒッピー文化とあいまって口コミで徐々に広がり、1972年6月以降に大ヒットした。1970年の初版の英語タイトルは「Jonathan Livingston Seagull ? a story.」。ラッセル・マンソン(英語版)によるカモメの写真が随所に挿入されている。全3部構成で出版されていた[1]

1972年年後半にニューヨーク・タイムズのベストセラーリストの1位となり、38週もの間 1位を保ちつづけた。1972年と1973年の『パブリッシャーズ・ウィークリー』誌の全米週間ベストセラーリスト・小説部門(英語版)でも1位。1973年には当作品を原作とする映画が制作された。1974年10月時点(映画が日本で公開された時点)で、米国では『風と共に去りぬ』を抜いて[2]1500万部のベストセラーになった。2014年時点で世界で4000万部売れていた[1]

日本では1974年新潮社より五木寛之の訳(下訳はのち東大教授となる國重純二)で出版され、(当時)120万部のベストセラーとなり[2]、その後も読まれ、2014年時点で270万部を超えた[1]。が、1974年版のあとがきにも書いている通り、五木はこの作品には当初から違和感を覚えている。「五木寛之#人物」も参照


キリスト教の異端的潮流ニューソートの思想が反映されていると指摘されており[3]の影響を感じるとも言われる[1]。読者たちを精神世界の探究、宗教的な探究などへといざない、自己啓発本のようにも読まれている[1]

2012年8月、作者は小型飛行機の操縦中に墜落事故をおこし重傷を負った[4]。その際いろいろ想う所があったらしく、元々全4部の作品として書いていたが第4部を封印して世に出していたのだ、と語り[1]、2014年2月、44年前に封印していたという幻の第4部を含めた「完全版」を電子書籍形式で発表した。日本ではこれを「かもめのジョナサン完成版」と題し、同年7月に[5]紙の書籍で発売された。出版社/第4章の訳者は従来と同じく新潮社/五木寛之。(ただし「完成版」では五木訳は“ 創訳 ”として記載されている。)
あらすじ
第1部

主人公のカモメのジョナサン・リヴィングストンは、他のカモメたちが餌を摂るためにしか飛ばないのに対して、飛ぶという行為自体に価値を見出す。そして、どこまで低速で飛べるか試してみたり、どれほど低空を飛べるか試した。ジョナサンは、食事をするのも忘れて飛行の探究に打ち込んだために、「骨と羽根だけ」の状態になっていた。あきれて注意する母に、彼は、「自分が空でできることは何で、できないことは何かを知りたいのだ」と説明した。さらに、時速数百kmという高速で飛ぶことを探究するために、高高度から急降下する危険な練習を重ねた。だが、それらの奇行を見とがめられ変わり者扱いされ、ある日のこと、群れの「評議集会」に呼び出され、長老から"無責任"などと決めつけられ、カモメはただ餌を食べ可能な限り長生きするために生まれてきたのだ、などと言われる。そこで、ジョナサンは、生きることの意味やより高い目的を発見するカモメこそ責任感があるのだ、と群れのカモメたちに考えを伝えようとするのだが、理解されず群れ社会から追放されてしまう。追放されて一羽になっても速く飛ぶための訓練をやめないジョナサンの前に、2羽の光り輝くカモメが現れ、より高次なる世界へと導いて行く。
第2部以降

「目覚めたカモメたち」の世界でジョナサンは、より高度な飛行術を身に付けたすえ、長老チャンから「瞬間移動」を伝授されることになる。そしてある日、弟子を連れて下界に降り、カモメの人生は飛ぶことにあるという「思想」を下界のカモメに広めようと試みるが、下界のカモメからは悪魔と恐れられるようになるなどトリックスターの側面を醸し出していく。そしてある時ジョナサンは自由を求めて弟子たちからも離れ、それから数年の歳月が流れた。若いカモメたちの間ではジョナサンは「伝説のカモメ」として神格化され、ジョナサンの言葉、仕草、目は何色だったかなど、些細なことを知りたがり崇めるようになるが、一方で直接ジョナサンから学んだ弟子たちは、そのようなことに夢中になってジョナサンの教えの神髄たる「真に飛ぶことを求める」訓練や努力をおろそかにする若いカモメたちに懐疑的になる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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