かげろうお銀(かげろう おぎん)は、TBS系列の時代劇『水戸黄門』の第16部(1986年放映)から第28部(2000年放映)に登場する架空の忍者(くノ一)。配役は由美かおる。
本項では、第29部(2001年放映)以降に登場し、お銀と同様に由美かおるが演じる後継キャラクター・疾風のお娟(はやてのおえん)についても記述する。 以前から何度か水戸黄門にゲスト出演(第6部 第2話、第7部 第33話、第8部 第12話、第10部 第8話、第12部 第19話、第13部 第20話、第14部 第33話)していた由美かおるが、第16部から正式にレギュラー出演することとなった。その際、制作の逸見稔から由美に対し「今までにない新しいキャラクターを登場させたい」という話があり、逸見の意向を受け、由美が自身の特技であったバレエのレオタードや網タイツをモチーフに紺色の忍装束のデザインを自分で行い、由美の知り合いの店に装束の製作を依頼してかげろうお銀のキャラクターイメージを作りあげていった。「かげろうお銀は由美さんのために作った役」と言われての起用であった。忍装束のデザインについて「江戸時代にブーツや網タイツはないだろう」と言うスタッフもいたが、アクション時の動きやすさを優先した[1]。起用に疾風のお娟の衣装も含めて第43部まで忍装束の基本的なスタイルは同じであったが、シリーズが進むにつれて細部のデザインは変遷している。 着物姿から宙返りをして一瞬で忍装束に着替える(変身)、颯爽と敵の目の前に登場し仁王立ちで立ちはだかる(決めポーズ)、跳び蹴りやハイキックといった特撮ヒーローが得意とする技を多用するなど、時代劇の登場人物でありながらそのキャラクター造形は1970年代・1980年代の特撮ヒーロー・特撮ヒロインのテイストを色濃く反映させたものであった。また、由美かおるの特技がバレエであったことを反映した為か、当初の立ち回り(殺陣)のシーンでは、お銀がバレエのピルエットのように片足を軸にしてクルクルとターンを繰り返しながら手に持った刀で周囲の敵に斬りつけるという技を繰り出すことがあった。 大和国(現在の奈良県)・月ヶ瀬村[2]出身。伊賀忍の上忍三家の一角である藤林一門の頭領・藤林無門(佐野浅夫)の孫娘であり、唯一の肉親である(なお第27部 第14話「母と逢わせた観音様 -大館-」では生まれた時から二親の顔を知らないと発言している)。今でこそお銀で通っているが、当初は「かげろう」が忍びの間での通称であった。 初登場は上述の通り第16部の第1話である。困窮する藤林一門の再興を果たすべく、何者かが懸けた500両の賞金を目当てに配下の火薬使いである煙の又平(せんだみつお)と組んで水戸光圀(西村晃)の命を狙い、光圀一行の目的地に先回りして立ちはだかる。しかし、第9話で祖父・無門に一喝され、またお銀が自分を狙っていた事情を知ってこれを赦した光圀の寛大さに触れたことで己の不明を恥じて光圀一行に加わり、以後も一行にとって不可欠な存在となった。しかし、無門に一喝される以前から光圀の暗殺に失敗した刺客が次々と始末される状況を目の当たりにし心境が変わりつつある描写もある。第11話で水戸老公一行に追いつき、伴をすることを許されている。第14話では又平も追いついてきて、一行に加わる。ただし、第16部においては毎回登場していたわけではなく、休演した回(第6話、第8話、第25話?第27話、第32話、第36話、第38話)もある。それにともない、今シリーズは風車の弥七(中谷一郎)とお銀・又平コンビの少なくともどちらかが登場する形になっていた。 佐々木助三郎に気があるらしい描写が劇中で何度かあった。第16部の最終話(第39話)では助三郎の妻・志乃と初めて顔を合わせ(第1話にも志乃は登場していたが、お銀とは顔を合わせていなかった)、折に志乃の誤解を招いて喧嘩になっているが、仲直りし、志乃の最後の登場となった第17部の第1話では志乃とすっかり親しくなっており、志乃が霞のお新にお銀を紹介した。その折に、水戸老公の供をしてきた先輩くノ一であるお新から激励されている。 なお、志乃とお新、お銀の女性キャラクター3人が登場したのは第17部の第1話のみで、最終話には志乃とお新は登場しなかった。 第18部で助三郎役が里見浩太朗からあおい輝彦に変わった際に助三郎の設定が所帯持ちから独身に変更されており、第18部以降の劇中では再び助三郎に気があるらしい描写が何度か出てくるようになったが、最終的に助三郎と結ばれることはなかった。 風車の弥七を演じる中谷一郎の負担を軽くするために第16部からはお銀が、第17部からは柘植の飛猿(野村将希)が加わった。 煙の又平は第17部の第1話で命を落とし、第9話で又平の仇を討った。なお、このシリーズ以降、お銀と柘植の飛猿は毎回出演している(ただし第25部で、第10話と弥七の過去のエピソードが描かれた回(第26話)には2人とも出演しなかった)。 生年月日や年齢の詳細な設定は存在していないが、当初は少女らしい溌剌とした部分や若さ故の血気盛んな部分が強調されており、敵から「小娘」呼ばわりされることもあった[3]。劇中の時間経過に伴い年齢設定が変更されていったキャラクターであり、シリーズが進むごとに溌剌とした少女から妖艶な大人の女性へと成長を遂げていくこととなった。 向こう見ずでサッパリとした性格。情に厚い性格がいまいち忍向きではないと又平が漏らしていた。時に、忍びの掟で自決を遂げる忍者達の無情な末路に遭遇しては、忍びの道の厳しさに苦悶する一面も見せる。 若くして武芸十六般と各種忍術を修めている天才的なくノ一であり、第16部の第1話に登場した時点で、忍びの男3人に襲われても1人で撃退してしまえるほど単独での戦闘能力は高かった。反面、当初は経験が少なく精神的に未熟であった為にピンチに陥ったり敵に捕まったりすることもあった。 光圀一行に加わった後は、戦闘だけでなく、悪人の屋敷に潜入して色仕掛けで悪人から証拠を奪うなどくノ一としての利点を活かした活躍を見せた。敵の忍び集団と対決の際には、敵の忍びと互角の戦いを演じ、時には敵の忍びを圧倒する活躍を見せることもあったが、敵の罠にかかったり、人質を取られて敵に捕まってしまう場合も多々あった[4]。敵に捕まった際には、敵のアジトで激しい拷問[5]を受け、時には光圀をおびき寄せるための人質にされてしまう場合もあった。第16部・第18部[6]で敵に捕まった際には、忍装束を脱がされ、レオタード姿で縄で縛られて、苦痛の表情を浮かべるシーンがある[7]。 普段は鳥追い(三味線奏者)に扮して助さん・格さん・うっかり八兵衛らの光圀一行と行動を共にすることも多いが、少し離れて行動し、同じ忍者である風車の弥七・柘植の飛猿らと共に別働隊として諜報活動に当たることも少なくない。 最後の立ち回りの場面では第24部までほとんど忍装束姿だったが、第25部からほとんど鳥追いや芸者姿などであり、忍装束姿は数話[8]のみである。 戦闘スタイルは忍者刀や蹴りが主であり、由美の特技が合気道(四段)であることから、投げ技や固め技を用いることもあるが、こちらは立ち回りのシーンよりも、潜入時(後述の救出の任務の際など)に用いられることが多い。『水戸黄門外伝 かげろう忍法帖』や第24部では、敵の体に肩車の態勢で乗っかるなどして、両太腿で敵の首を絞めあげて倒すという大技を披露する事もあった。 鳥追いの姿の場合は三味線による打撃や簪(銀針)[9]を手裏剣のように扱う。また、この簪は忍装束姿でも使う場合もあり、弥七が使う風車のように矢文として活用したり錠前を解除する際にも使われる。 稀に忍術を応用したとみられる、手妻(奇術)を用いることもあった。 第28部では第1話から戦闘時の忍装束が従来の紺色から赤色のものに改められているのだが、その理由については触れられる事はなかった。また、赤い忍装束を着用していた際には同時に黒いマントを着用しており、立ち回りのシーンでこのマントを用いて敵を翻弄することもあった。[10] 風呂に入っている時に「どうだい、この色艶」と自分の肉体美を自画自賛したり[11]、悪人に対して「こんないい女を放っておくだなんて」と言い放つなど、自分の美貌と色香には自信を持っている描写がある。 光圀一行が赤ん坊を拾った際、うっかり八兵衛から赤ん坊に乳をやってみたらどうだと言われて「生娘のアタイにお乳が出るわけないだろ」と返答している[12]。この他に芸妓に扮して悪人の相手をしている時などにも自身が生娘であると発言したことがあるが、冗談を言っているとも受け取れる状況の為、真相は不明である。 お銀は劇中で専ら、色仕掛けで悪人に迫り上機嫌にさせたところで悪事を聞き出す、もしくは悪事の証拠(証書等)を奪取するといったパターンの諜報活動を行っている。その中でも、特に入浴シーンはお銀の代名詞とも言える存在になっており、番組中では終盤に印籠を出すシーンと並んでお銀の入浴シーンは視聴率が瞬間的に上がるとされていた[13]。 お銀の諜報活動は概ね、以下の4パターンのどれかに分類される。
概要
登場
経歴
人物
設定・エピソード
くノ一としての任務
諜報活動
パターン1(入浴)お銀が町娘に扮し、代官や悪徳商人の屋敷に「下働きがしたい」と言って上がり込む。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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