かぐや
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「かぐや」のその他の用法については「かぐや (曖昧さ回避)」をご覧ください。

月周回衛星「かぐや(SELENE)」
所属宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
主製造業者NEC東芝スペースシステム
公式ページ月周回衛星「かぐや (SELENE)」
国際標識番号2007-039A
カタログ番号32054
状態運用終了
目的月の周回観測
観測対象
計画の期間約1年間
設計寿命1年1ヶ月
打上げ機H-IIAロケット 13号機
打上げ日時2007年9月14日
10時31分01秒
軌道投入日2007年10月4日
最接近日2009年6月11日(衝突)
運用終了日2009年6月11日
物理的特長
本体寸法2.1 m x 2.1 m x 4.8 m
質量主衛星 : 2,914 kg(打上げ時)
リレー衛星 : 53 kg
VRAD衛星 : 53 kg
発生電力3.5 kW(最大)
3.3 kW以上(寿命末期)
主な推進器化学スラスタ (500N)
姿勢制御方式3軸姿勢制御(主衛星)
スピン安定(リレー衛星,VRAD衛星)
軌道要素
周回対象月
軌道円軌道
高度 (h)100 km ± 30 km
軌道傾斜角 (i)約90度
軌道周期 (P)約2時間
回帰日数約30日
観測機器
XRS蛍光X線分光計
GRSガンマ線分光計
MIマルチバンドイメージャ
SPスペクトルプロファイラ
TC地形カメラ
LRS月レーダサウンダー
LMAG月磁場観測装置
LALTレーザ高度計
PACEプラズマ観測装置
CPS粒子線計測器
RS電波科学
UPI超高層大気プラズマイメージャ
VRADVLBI電波源
RSATリレー衛星
HDTVハイビジョンカメラ
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かぐや(SELENE, Selenological and Engineering Explorer、セレーネ)は、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の周回衛星。開発・製造はNEC東芝スペースシステムが担当した。「SELENE」はギリシア神話の月の女神セレネ (Σελ?νη, Selene) にちなんだ名称である。この衛星を利用した月探査計画はSELENE Project(セレーネ計画)と呼ばれ、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のアポロ計画以降、最大の月探査計画とされる(日本初の月探査は1990年打ち上げのひてん)。主衛星と2機の子衛星で構成され、14種類の観測機器を搭載していた。

「かぐや」の愛称は、JAXAの行った一般公募によって決定された[1]。後に子衛星2機にも愛称がつけられ、リレー衛星は「おきな」(OKINA)、VRAD衛星は「おうな」(OUNA) と命名された。それぞれ、竹取物語の中で月へと帰るかぐや姫と、育ての親の翁(おきな)、嫗(おうな)にちなむ[2]

当初は2007年8月16日に打上げが予定されていたが、キャパシタの取り付けミスや天候悪化などのため9月14日に延期された[3][4]。打ち上げ後は順調に飛行を続け、予定通りに月周回軌道に入り、2機の子衛星を分離後に月面から高度100kmの月周回観測軌道に投入された[5]

かぐやはその後の中国嫦娥1号)・インドチャンドラヤーン1号)・アメリカルナー・リコネサンス・オービター)と続く一連の月探査機群の先陣を切るプロジェクトとなった。太陽系探査はもともとアジアでは日本が大きく先行していた分野だったが、すでに中国が米ロに次ぐ宇宙大国と認識されていた当時、かぐやは日本が中国に追い付くものとして日本国外メディアからも注目された[6]

2009年6月に月面に制御落下させられるまで、約1年半にわたり月を周回しながら様々な観測を行った。NHKハイビジョンカメラを搭載し、 かぐやの周回に伴って月に隠れていた地球が見えてくる「地球の出(アース・ライズ)」なども撮影されている[7]
目的

月の起源と進化を解明するためと将来の月の利用のため、さまざまな観測をすることを目的としている。

同時に周回衛星に搭載された観測機器で、プラズマ電磁場高エネルギー粒子などの月周辺空間の環境・計測を行った。

将来的には、かぐや後継機による月面着陸の構想もある。
主衛星による主な観測項目

月表面の元素/鉱物組成

地形

表面付近の地下構造

磁気異常

重力場の観測

VRAD衛星による主な観測項目

VLBI(
超長基線電波干渉法)による、主衛星/リレー衛星との電波差異による月の周回運動の詳細観測。

機器概要

リレー衛星(おきな)をRstar、VRAD衛星(おうな)をVstarと呼称する。両者は軽量化のために姿勢制御装置やスラスターモータを搭載しないため、主衛星からの分離時の姿勢とスピンが重要な開発研究の要点として進められた。
主衛星

縦・横: 2.1 m

高さ: 4.2 m(上部モジュール: 2.8 m、下部モジュール: 1.2 m)

重さ: 1.6トン

エンジン: 500
Nメインエンジン1台、20Nスラスタ4本×3系統、1Nスラスタ4本×2系統

上部モジュールにリレー/VRAD衛星が取り付けられ、周回軌道投入時に切り離される。

月表面の画像撮影のために、高信頼性ハイビジョン (Hi-Vison) カメラを搭載。その他、月の物理学・測地学探査に重要な観測機器を搭載。観測機器の安定のため、スラスターモータ及び3軸加速度計による3軸安定姿勢制御システムによる制御を実施。
リレー衛星(おきな)

ダイポールアンテナを持つ八角柱の形をした直径1m、高さ0.65mの小型衛星。主目的は、主衛星の電波を月の裏側から中継することと、月の重力を測定することである。軽量化と重力測定精度の向上のため、姿勢制御装置やスラスターモータを搭載せず、主衛星からの切り離し時にばね仕掛けで回転を与え安定させる方式を採り、主衛星からの分離時の姿勢とスピンを要点として開発が進められた[8]

リレー衛星は、2007年10月9日に主衛星から分離され、月周回軌道(約100km×2400km)に投入された[9]。2009年2月12日までに運用を終了し、同日19時46分頃に月の裏側にあるミヌールDクレーター付近に落下したと推定されている[10]
VRAD衛星(おうな)

VRADとは differential Vlbi RADio sources の略。リレー衛星と同じ寸法・形状の小型衛星で、姿勢制御についても同様のスピン制御を採用している。主衛星、リレー衛星、VRAD衛星間でのVLBI測定を行うことを主な目的とし、そのための電波送信源としての役割を担っている。

VRAD衛星はリレー衛星分離から3日後の10月12日に正常に主衛星から分離(約100km×800km)された[2]。主衛星落下後もデータ校正のための運用が続けられ、2009年6月29日に停波され運用が終了した[11]
搭載機器
元素分析
蛍光エックス線
分光計
太陽から放射されるX線によって月面の元素が放つ蛍光X線を捉えることで、における元素の分布を調べる装置。
ガンマ線分光計
銀河宇宙線が降り注ぐことにより月面から放射されるガンマ線や、天然放射性元素から放出されるガンマ線を捉えることで、月面におけるチタンマグネシウムアルミニウムカリウムトリウムウランカルシウム珪素酸素、及び極域の水素といった元素の分布を調べる装置。
地質学鉱物学分析
マルチバンドイメージャー
可視光から近赤外領域にかけての広い波長で光を観測することによって、地質鉱物の放つ光を観測し、その分布や組成を調査する装置。特に、
元素分析装置との違いは、捉える波長の違いにより、鉱物のスペクトルの識別を行う点である。


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