エルフ(ELF)は、いすゞ自動車が製造・販売する小型および中型トラック。1959年(昭和34年)に発売されて以来、乗用車やSUVを製造していた時代も含め、一貫していすゞ自動車の主力販売商品となっている。
なお、本項では便宜上、以下の車種についても記述する。
ライト エルフ(Light ELF)
エルフ マイパック(ELF Mypack)
エルフ 100(ELF 100)
エルフ EV(ELF EV)
エルフ ミオ(ELF mio)
エルフ ミオ EV(ELF mio EV)
1975年(昭和50年)に2トンクラストラックでシェアトップを奪って以来、日本の小型キャブオーバートラックの代表的存在として位置づけられている。一般的なトラック同様、ホイールベースと荷台のバリエーションによりさまざまな車種が存在する。エンジンはディーゼルエンジンのみならず、BEV(二次電池式電気自動車)も存在する。かつては3種類以上のディーゼルエンジンのほか、ガソリンエンジンなど多彩なエンジンが用意されており、ほかにも、LPG、CNGといったガス燃料車や、ディーゼルエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車も存在していた。しかし自動車排出ガス規制への対応から、6代目へのモデルチェンジでLPG車が廃止され、ディーゼル2機種とCNG車、ベースエンジンを共用するハイブリッド車のみとなった。7代目はディーゼル2機種とBEVを設定しているが、7代目へのモデルチェンジと同時にCNG車、ベースエンジンを共用するハイブリッド車は廃止された。 日本国内向けは最大でも中型自動車8トン限定免許の上限となる車両総重量8トンクラスの「NPR」シリーズまでの設定であるが、輸出仕様の中には車両総重量8.5トン - 9.5トンクラスの「NQR」シリーズが設定されている仕向地もある。 2004年(平成16年)の5代目のマイナーチェンジの際に、エルフのCMソングとして『いすゞのトラック』が制作された[1]。 メキシコや韓国など、日本と同じエルフの名称で販売している輸出先・現地生産先もあるものの、日本国外のほとんどの地域ではNシリーズとして発売される。2008年(平成20年)の6代目からの輸出車両は車名が「REWARD」となった[2]。 また、本車種の派生車種として、キャンピングカーベース専用車の「Be-cam」が存在するが、この翻字には「びぃーかむ」「びーかむ」「ビーカム」と言った表記揺れが見られる。 150/250シリーズは1968年-1975年、350シリーズは1970年-1978年にかけて展開。 150/250シリーズは1975年-1984年、ルートバンは1976年-1991年、350シリーズは1980年-1984年にかけて展開。
概要
初代(1959年-1968年)初代エルフ前期型
(1959 - 1965年)
1959年8月26日、初代モデル登場。当時の川崎工場にてラインオフ。初登場時はガソリンエンジンのみの設定で、GL150型と呼ばれる1500ccのエンジンを搭載。ラジオや車内ヒーターなどの快適装備やアクセサリーはオプション装備であった。
1960年3月、クラス初採用となる2000ccディーゼルエンジン搭載車を追加。初採用時のエンジンはDL200型。馬力があり経済的なディーゼルエルフは一躍人気車種となり、販売台数はトヨタ・ダイナを抜いてクラストップを獲得する。これ以降、各社ともディーゼルエンジン車をラインアップに追加する。
1963年6月、生産ラインを藤沢工場へ移設。
1965年1月、ヘッドライトを丸形2灯から丸形4灯(横2灯)に変更し、グリルデザインも変更された。キャブドアは最後まで前開きであった。
2代目(1968年-1978年)2代目エルフ150エルフハイルーフエルフマイパック
1967年8月、開発中だった2代目モデルをベースとして、丸形2灯ヘッドライト・車体色グリルを採用した1.25t積モデル「ライトエルフ」(G150型ガソリンエンジン搭載)を先行発売。
1968年4月、フルモデルチェンジで2代目登場。ウォークスルーバンの「ハイルーフ」もラインアップされる。トラック・バン共通の2連テールランプを装備。
1969年8月、ライトエルフにダブルキャブを追加。
1970年10月、3.5t積モデルのエルフ350(中・長距離輸送向け)登場。
1971年4月、ライトエルフの後継として1.5t積のエルフ150(市内配送向け)を追加。既存モデルはエルフ250(近・中距離輸送向け)に改称し、ディーゼルエンジンは2.4Lに排気量アップ。これによりエルフシリーズのグレード構成を確立。トラックのみテールランプのデザインが3連に変更される。
1972年4月、前輪駆動の「エルフマイパック」登場。荷台スペースの自由度などが注目されたが、ボンネットが突き出たスタイルゆえ通常のエルフより荷台長が短くなること、受注生産で車両価格が通常エルフの1.5倍に跳ね上がったのが災いし成功には至らなかった。なお、マイパックは350シリーズとともに、3代目にフルモデルチェンジした後も1978年まで並行生産を行っていた。
1973年1月、エルフ350にロングボディを追加。
1974年4月、エルフ150に小径ダブルタイヤ採用の低床フラットローを追加。
1975年6月、3代目にフルモデルチェンジし、2代目150/250(ルートバンを除く)生産終了。350/ルートバン/マイパックは継続生産となる。
1976年、2代目ルートバン生産終了。
1978年12月、2代目350シリーズおよびマイパック生産終了。なお、350シリーズは1980年に3代目ワイドキャブとしてフルモデルチェンジを受ける。
エルフ350
ライトエルフ
3代目(1975年-1991年)3代目エルフ中期型3代目エルフ後期型ダンプ3代目エルフワイドキャブ
1975年6月、フルモデルチェンジで3代目登場(エルフ150及び250)。テレビCMに渥美清を起用したことから、3代目前期型は通称「寅さんエルフ」とも呼ばれる。
1976年、1年遅れてルートバンもフルモデルチェンジ。
1977年1月、エルフ250に前後異径タイヤのフラットローを追加。
1977年2月、エルフ250にいすゞ独自のデザインを施した荷台を搭載した「ダンディダンプ」を追加。
1977年9月、ロングボディ車やルートバンにもフラットローを設定し、バリエーションを拡充。
1978年12月、マイナーチェンジ。フロントグリルの形状が変更。2t車は「エルフ250スーパー」として発売。 生産累計100万台達成。
1980年1月、マイナーチェンジ、昭和54年排出ガス規制適合。この時のCMに『ドカベン』が起用されたことから、3代目後期型は「ドカベンエルフ」とも呼ばれる。フロントグリルがシルバーに変更。ワイドキャブ車の「エルフ250ワイド」「エルフ350ワイド」が登場、1978年に2代目350シリーズ生産終了後、約2年半ぶりの復活としてのフルモデルチェンジとなった。チルトキャブが採用される。
1981年7月、マイナーチェンジ。フロントグリルがシルバー一色からシルバーとブラックに変更され、インパネのデザインが大幅に変更される。透過照明式メーターとエアコン対応のフルエアミックスタイプのヒーターの採用。ワイパーとドアハンドルがブラック塗装になる。
1983年3月、ディーゼルエンジン昭和58年排出ガス規制適合。
1984年7月、4代目にフルモデルチェンジ。3代目150/250/350シリーズ(ルートバンを除く)生産終了。ルートバンは継続生産。
1985年3月、ルートバンをマイナーチェンジ。フロントグリルをホワイト塗装化し、アッパーグリルがブラック塗装に変更され、4代目に似たイメージとなる。
1991年1月、3代目ルートバン生産終了。7年遅れて4代目にフルモデルチェンジしたが、3代目のバンボディを流用している。
4代目(1984年-1993年)4代目エルフ前期型4代目エルフ中期型4代目エルフ後期型
1984年7月、4代目が登場。ただしルートバンは先代型を継続生産した。フォワードジャストンはこの代から設定。また、ディーゼルエンジンは全車直噴化された。キャブ色に白を設定したことから、いすゞでは「白いエルフ」と呼んでいる。