ジオスペース探査衛星「あらせ」
(ERG)
軌道上でのERG衛星、想像図(c)ISAS/JAXA
所属宇宙航空研究開発機構
主製造業者日本電気
公式ページジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)
あらせは、宇宙科学研究所が2016年12月20日に打ち上げたジオスペース探査衛星である[3]。命名前の通称は計画名のERG(エルグ、英語: Exploration of energization and Radiation in Geospace)。開発・製造は日本電気が担当した。 ひさき(SPRINT-A)に続く小型科学衛星シリーズの2機目で、内之浦宇宙空間観測所からイプシロンロケットで打ち上げられた。地球近傍の放射線帯(ヴァン・アレン帯)における高エネルギー粒子の生成と消滅、磁気嵐の発達のメカニズムの解明のための観測を行う[2]。 当初計画では2015年度に打ち上げ予定であったが、事前に予見し得なかった技術的課題の解決などを理由に、打ち上げ予定が2016年度に変更され[4]、2016年12月20日20時00分(日本標準時)に打ち上げられた[5]。これを受けてJAXAはERGの愛称として「あらせ」と命名した[5]。ERGが荒々しい高エネルギー粒子に満ちたヴァン・アレン帯という宇宙の「荒瀬」に漕ぎ出していく衛星であること、肝付町の「荒瀬川」に鳥の美しい鳴き声に関する伝説がありコーラス(宇宙空間に存在する周波数が数kHzの可聴帯の電磁波)を観測する本衛星にふさわしいことに由来する[5]。 衛星バスにはNECとJAXAが開発したSPRINTバスを採用する。機体重量は350kgである。コンピュータシステムのRTOSは、T-Kernel 2.0がベースの航空宇宙分野向け高信頼RTOS「T-Kernel 2.0 AeroSpace(T2AS)」である[6]。
概要
機体構成
観測機器
低エネルギー電子分析器(LEP-e)[7]
低エネルギーイオン質量分析器(LEP-i)[7]
中間エネルギー電子分析器(MEP-e)[7]
中間エネルギーイオン質量分析器(MEP-i)[7]
高エネルギー電子分析器(HEP)[7]
超高エネルギー電子分析器(XEP)[7]
磁場観測器(MGF)[7]
プラズマ波動・電場観測機器(PWE)[7]
ソフトウェア型波動粒子相互作用解析装置(S-WPIA)[7]
運用
計画・開発段階
2007年度 - 戦略的開発研究経費により衛星系検討・基礎設計を実施
2008年度 - ミッション提案(採択されず)
2009年度 - ミッション再提案
2009年8月5日小型科学衛星2号機候補として採択、プリプロジェクト化
2012年8月 - ジオスペース探査プロジェクトとしてプロジェクト化
2014年11月 - ミッション部総合試験開始
2015年
4月 - 一次噛合せ試験を実施(6月18日終了)
10月 - フライトモデル総合試験開始
打ち上げ・観測
2016年
9月29日 - 相模原キャンパスで報道関係者向け機体公開を実施。
10月3日 - 相模原キャンパスから内之浦宇宙空間観測所へ輸送開始。
10月20日 - 内之浦宇宙空間観測所で報道機関向け機体公開を実施。
12月20日 - 20時00分打ち上げ[5]、近地点高度約 214 km・遠地点高度約 32,250 km の楕円軌道に投入[1]。同日20時37分、サンチアゴ局で太陽電池パドルの展開が正常に行われたことを確認[5]。
2017年
1月7日 - 軌道変更(近地点高度上昇)の完了を確認。近地点高度約 460 km、遠地点高度約 32,110 km の軌道に遷移する[1]。
1月16日 - プラズマ波動・電場観測機(PWE)を構成するワイヤーアンテナの伸展を確認[8]。
1月23日 - クリティカル運用期間を終了[9]。
3月29日 - 定常運用への移行を発表[10]。
脚注^ a b c d e f g “ジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)の軌道変更運用(近地点高度上昇)の完了について
^ a b “ジオスペース探査衛星「ERG」パンフレット
^ “日本、固体燃料ロケット「イプシロン」2号機の打ち上げに成功”. 中央日報 (2016年12月21日). 2020年10月15日閲覧。
^ “第15回宇宙科学・探査部会 資料1「宇宙科学・探査プロジェクトの検討状況について」”. JAXA (2014年8月27日). 2015年1月8日閲覧。
^ a b c d e 『ジオスペース探査衛星(ERG)の太陽電池パドル展開及び衛星の愛称について』(プレスリリース)JAXA、2016年12月20日。https://www.jaxa.jp/press/2016/12/20161220_arase_j.html。