あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
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あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
小説
著者
汐見夏衛
イラストpomodorosa(スターツ出版文庫版)
三湊かおり(野いちごジュニア文庫版)
ふすい(単行本)
出版社スターツ出版
掲載サイト野いちご
レーベルスターツ出版文庫
野いちごジュニア文庫
巻数スターツ出版文庫版:全1冊
野いちごジュニア文庫版:全1冊
単行本:全1冊
漫画
原作・原案など汐見夏衛
作画マツセダイチ
出版社KADOKAWA
掲載誌電撃コミック レグルス
レーベル電撃コミックスNEXT
発表期間2021年9月17日 - 2022年7月15日
巻数全2巻
映画
原作汐見夏衛
監督成田洋一
脚本山浦雅大、成田洋一
音楽ノグチリョウ
制作ダーウィン
製作「あの花が咲く丘で、君とまた
出会えたら。」製作委員会
配給松竹
封切日2023年12月8日
上映時間128分
テンプレート - ノート
プロジェクトライトノベル漫画映画
ポータル文学映画

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(あのはながさくおかできみとまたであえたら)は、汐見夏衛による日本の小説[1]

小説投稿サイト「野いちご」で『可視光の夏?特攻隊と過ごした日々?』(原題)として公開され[2]、2016年7月に改題の上、スターツ出版文庫として刊行された[1]。TikTokで話題になり、シリーズ累計発行部数100万部を突破している[3][4][5]

1945年、第二次大戦末期の日本にタイムスリップした現代の女子中学生[注 1]・加納百合と特攻隊員の青年・佐久間彰との時空を超えた切ない恋の物語が描かれる。

2023年12月8日に映画版が公開された[6]
製作

本作品は、鹿児島県出身の作者の汐見が中学生の時に社会科見学で訪れた知覧特攻平和会館での衝撃や感情を元に構想したという[7][8]。作中には「特攻の母」と呼ばれる鳥濱トメをモデルにした人物も登場する[9]

汐見は高校教員時代に今の高校生が戦争の話をあまり知らず、特攻隊についてもよくは知らないという現実に直面したという[9]

また、「祖父母などから戦時中の生きた体験談を聞いた時の言葉にならない衝撃、自分の中核に飛び込んでくるような心を揺さぶられる感覚、そうしたものを自分より若い世代の人たちに継承しなければという思いで作品を執筆した」、「これからの未来を形成していく若者たちが社会の中心的な立場になった時に忘れてはいけないものを、本作を通して伝えることができれば」と語っている[9]

現代の中学生(映画では高校生)が時空を超えて戦時中にやってきたという設定については、汐見が「現代の子を主人公にして、自分たちと同じような価値観で、自分たちと同じような考え方の女の子の目で戦争を見たら、どう映るか。自分たちの身に寄せて考えてくれるのではないか」としている[10][11]
あらすじ

女子中学生の加納百合は、学校や親、周囲に対して苛立ちを隠せずにいる。ある日の夕方に母親と口論になり、制服のまま家を飛び出してしまい、誰とも会わない場所と考えて裏山の防空壕跡で一夜を過ごすが、翌朝目覚めて外を見るといつもの見慣れた街や学校もなく景色が全く違っていた。

スマホも圏外で、炎天下の中を知っている場所を探して歩き回るうちに、昨日から何も口にしていなかった百合は体調不良で動けなくなってしまう。そこに佐久間彰という青年が通りかかり、百合に水を飲ませるなど介抱の上、近くの鶴屋食堂に連れて行き、女将・ツルを紹介してくれる。

百合は彰とツルが戦争のことや特攻隊などと意味不明の会話をしているのに混乱して、ふと目にした新聞の日付は昭和20年6月10日となっている。百合は1945年、終戦間際の日本にタイムスリップしたらしいと気付く。

もう一度防空壕で一夜を過ごせば元の世界に戻れるかもしれないと試してみるが、目覚めても何も変わらなかった。行き場のない百合にツルが住み込みで働くよう勧めてくれ、百合はそのまま鶴屋食堂でお世話になることになる。

数日後、彰が鶴屋食堂を仲間の特攻隊員とともに訪れる。隊員たちはみんな百合のことを大切に扱ってくれ、食堂の看板娘のように人気者になるが、彰は慣れない生活を送る百合のことを気遣い、一面の百合の花の咲く丘に連れて行ったりして元気づける。

そんなある日、百合は戦災孤児の痩せ細った小さな男の子が空腹で野菜を盗み、店の人に殴られたことを知り、その子に野菜をあげて「早く日本が負けて戦争が終われば、普通の生活に戻れるのに」と言ってしまう。

そこに通りかかった警官にいきなり高圧的に問い詰められ、反論した百合は警棒で殴られてしまう。さらに殴りかかろうとするところをツルと彰がかばって、代わりに殴られてしまう。百合はふたりに謝りながらも、こんな戦争が正しいわけがないという思いは抑えられず訴えかける百合の言葉を彰は何も言わずに聞いてくれていた。

ある日、ツルのお使いで外出した百合は大きな空襲に遭遇し、地獄のような惨状を目の当たりにしてショックを受ける。百合も焼け崩れてきた家の下敷きになり足を挟まれて動けなくなってしまい命の危険を感じるが、火の海の中を必死の思いで現れた彰に間一髪のところで救出される。百合は何度も危ないところを助けてくれた彰を慕うようになっていく。

だが、ついに鶴屋食堂で彰たち特攻隊の隊員がツルと百合に3日後に出撃命令が出たと話をされる。百合は彰に初めて告白して、特攻に行かないように何度も頼み込むが、彰を説得することはできなかった。

特攻の前日、百合は鶴屋食堂で隊員のみんなと最後のお別れをし、最後に残った彰にすがりつくが、これ以上は迷惑と引き留めるのを諦めた百合を彰が抱きしめる。

特攻機[注 2]に乗り出撃しようとする彰に精一杯名前を呼ぶ百合に向かって彰が優しい笑みを浮かべて胸元の何かを投げる。受け取ったのは美しく花開いた百合だった。

百合は地面に倒れ込み意識を失う。そして目を覚ますと現代に戻っており、自宅に帰ると一晩中百合を探していたという母が泣きながら叱ってくれる。1945年ではかなりの期間を過ごしたはずだが、現代では一晩が過ぎただけだった。

1945年の世界から戻った百合は家でも学校でも人が変わったように素直になっていた。学校では社会科見学で「特攻資料館」に行くことになる。訪れた展示室には特攻隊員の顔写真や手紙などが展示されており、その中には百合もよく知っている隊員の写真や手紙があった。

そして、視線を移した先には彰の4通の手紙があり、その最後の手紙は「百合へ」と書かれており、「君のことを愛していた」と百合に対する思いが切々と綴られていた。百合は涙が止まらず、心配する同級生たちの前で泣き続ける。

先生たちに抱きかかえられるようにして外に連れ出され、ベンチで涙が枯れるまで泣いて、先生が買ってきてくれたミネラルウォーターを一口飲んで空を見上げた百合は「ここは新しい世界だ」と感じて、彰や仲間の特攻隊員の事を思い、「あなたたちが命を懸けて守った未来を私は精一杯生きます」と静かに誓う。
登場人物

※ 映画版では、ほとんどの人物に年齢や名前など様々な設定変更がされており、登場しない人物もいる。
主要人物
加納百合(かのう ゆり)
14歳。中学2年生。物心ついた頃から母親と2人暮らしで、父親が誰なのかは知らない。母親と喧嘩して家を飛び出し、1945年の終戦間際の世界にタイムスリップしてしまい、彰と出会う。
佐久間彰(さくま あきら)
特攻隊員。20歳。北国出身。体調不良で動けなくなっていた百合と出会い助ける。両親と年の離れた弟、妹がいる。早稲田大学で哲学の研究をしていたが、召集令状を受け入隊する。
百合の関係者(現代)
百合の母
21歳で百合を出産して以来ずっとシングルマザー。昼間はスーパーのパート、夜は繁華街のスナックで働いている。
ヤマダ
[注 3]
百合の中学校の社会教師。ふてくされた態度の百合に威圧的な口調になる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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