あの、夏の日
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あの、夏の日
とんでろ じいちゃん
監督
大林宣彦
脚本石森史郎
大林宣彦
製作芥川保志
大林恭子
音楽學草太郎
撮影坂本典隆
配給東映
公開 1999年7月3日
上映時間123分
製作国 日本
言語日本語
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『あの、夏の日 とんでろ じいちゃん』(あの なつのひ とんでろ じいちゃん)は、大林宣彦監督の映画作品。「新尾道三部作」の第3作。原作は山中恒の小説『とんでろ じいちゃん』[1]
作品概要

1998年尾道市制100周年を記念し、“新尾道三部作”と称して“尾道三部作”(『転校生』・『時をかける少女』・『さびしんぼう』)に倣った尾道を舞台にする3映画作品が制作されることになり、それに伴い『ふたり』・『あした』に続く最終作として制作されたのが本映画である。1998年の夏に撮影が行われ、1998年12月13日に試写会が行われた[2]

それまでに制作された“尾道三部作”・“新尾道三部作”の計5作品とは異なり、主人公には老父とその孫を登用した、幻想的な展開の作品になっている。また、それまでの映画ではほとんど使われていなかった尾道弁も頻繁に表れている。

なお原作者は、この作品が尾道を舞台に映画化すると言う提案を受けたとき、内容が破天荒なこの作品で本当にいいのかと、問い返したとされている。

文部省(現・文部科学省)選定。日本PTA全国協議会特別推薦、厚生省(現・厚生労働省)・中央児童福祉審議会推薦、青少年育成国民会議推薦、全国防犯協会連合会推薦映画[3]

冒頭のテロップで、「20世紀を生きたおじいちゃんと、21世紀を生きるこどもたちにこの映画を贈る」と表記される[3]

なお、原作には尾道は一切登場せず、西方町と言う架空の市町村が登場した。
ストーリー(映画)

おじいちゃん(大井賢司郎)に認知症の症状が見られるということを知った大井由太の両親はおじいちゃんのお見舞いに行こうとする。しかし、2人とも仕事が忙しくて父の故郷である尾道までどうしても行くことができない。そこで、いつも一人で考え事をしていて、「ボケタ」とあだ名をつけられた孫の由太が、夏休みの間おじいちゃんのもとへ行くことに。

尾道の祖父宅に着いた由太は、おじいちゃんと会話して「しっかりしてるようだけど本当にボケちゃったのかな?」と半信半疑。そんな由太に、おじいちゃんは「わしはボケとらん!」と言った後、子供時代のタマムシの思い出を聞かせ、「夢のまきまきに…」と古い歌を口ずさむ。その日から由太は、おじいちゃんとスイカを食べたり花火をして尾道の夏を過ごしていくが、そこで不思議なことをたくさん知ることになる。

ある日メダカ取りに誘われて家の外に出る由太だが、おじいちゃんが呪文[注 1]を唱えた途端体がフワッと浮いて空と時間を飛び超える。過去の向島にたどり着いたおじいちゃんと由太(以下、2人と表記)は、おじいちゃんの少年時代の悪友・多吉や喋るコイ、父の子供時代の学友たちに出会う[注 2]など不思議な体験をする。おじいちゃんの呪文で祖父宅(現在)に戻った由太は「さっきのは夢?」と思うが、後日向島の住民の話で数十年前に多吉が実在したことを知る。その人の話では、「多吉は1922年[注 3]に長恵寺(ちょうけいじ)の弥勒像の右の小指を誤って紛失し、バチが当たって翌日死んだ」という。

多吉やおじいちゃんの過去に興味を持った由太は、おじいちゃんの不思議な力で再び時空を超えて過去の向島に訪れる。向島で少年時代のおじいちゃん(以下、〈賢司郎〉と表記)を見つけた2人は、彼の行動をこっそり覗き見することに。多吉に呼ばれて長恵寺に行った〈賢司郎〉は、弥勒像の右手に留まるタマムシを取ろうとする。しかし誤って像の右小指を紛失した〈賢司郎〉は、多吉から「身代わりになるから口止め料がほしい」との頼みを聞いてしまう。

その後由太は、〈賢司郎〉と病弱な少女・お玉との淡い恋模様を目撃し、「夢のまきまきに…」の歌がおじいちゃんとお玉の思い出の歌だと知る。お玉は「秋まで生きること」を〈賢司郎〉と指切りげんまんするが、約束が果たされることなく秋になる前に天国に旅立ってしまう。由太と現在に戻ったおじいちゃんは、「わしが弥勒像の小指を失くしたからお玉が死んだに違いない」と自分を責める。

しかし違和感を感じた由太はおじいちゃんを励ました後、真実を確かめに〈賢司郎〉がタマムシを取りに行く直前の長恵寺へと向かう。すると像の右小指を壊した真犯人は多吉で、〈賢司郎〉はその罪をなすり付けられていたことが判明する。真実を知ったおじいちゃんは安堵し、おじいちゃんの少年時代を知ることができた由太も満足する。

2人が現在に戻った後、長恵寺では突然像の右小指が見つかり、弥勒像の右手は修復されて無事元通りになる。その後おじいちゃんは倒れてとうとう亡くなり、由太はこの夏を通しておじいちゃんが尾道を大事に思っている事や自分で体験することの大切さ、人生の輝きと儚さなど子供ながらに色々と学んだ。そして由太は、おじいちゃんと過ごした夏の日や、2人で飛んだ尾道の空を思い出に東京へと帰っていく。数日後、由太が自宅の窓からふと外を見上げると、亡くなってから空を飛ぶおじいちゃんとの思わぬ再会に笑顔を見せるのだった。
キャスト
大井賢司郎/大井賢之助
演 -
小林桂樹一人二役)年は80歳前後[4]。元教員であり、過去に尾道の高校の校長先生もしていた威厳のある人物であるため家族や周囲からも一目置かれており、小さい頃に会った由太からは「立派な人だけどおっかない性格」と評されている。最近おかしな言動をするようになったため、亀乃など身近な人たちから“ボケてきた”と思われている(磯谷と言う家の葬式でラジオ体操の号泣をかけたり、勝手によその家に上がり込んで仏壇のお供物の白玉団子を食べるなどしていた)。日常生活で時々「夢のまきまきに…」の歌(「ジョスランの子守歌」)を口ずさむ。外出時はカンカン帽にアイボリー色の着物を着て下駄を履いて杖をついて歩く。昔気質な性格なため尾道の街並みが時代の流れにより変わっていく事を嘆いており、地元と向島を繋ぐ尾道大橋やフェリーなどは利用しない(生前は尾道大橋を渡った事が一度も無かったが、亡くなってからお棺に納められて霊柩車で火葬場へ運ばれる時に初めて尾道大橋のお世話になった)。そしてさらには1人息子の昌文が実家を継がずに上京した事や香里と恋愛結婚及びできちゃった結婚した事も快く思っておらず、そのため香里やエリカの事も快く思っていない(昌文が子供の頃は彼の事をとても可愛がっており、よく向島までメダカやドジョウを捕りに連れて行っていた)。作中では普段メガネをかけているが、実は伊達眼鏡[5]である。趣味は日本刀鑑賞。由太とは違って泳ぎが得意であり、向島までは泳いで渡ろうとして尾道水道へ飛び込んで泳ぎ出す程である。さらには手品も得意であり、由太の通信簿を丸めてゴミ箱に投げ捨てたように見せたり、弥勒様の小指をミカリのブラウスのポケットに分からないまま入れたりした(ミカリのブラウスのポケットに弥勒様の小指が入っていたのが分かったのは彼女の母が彼女のブラウスを洗濯しようとした時である)。ふんどしを着用している。由太の夏休み後半に突然倒れて救急車で病院へ運ばれ、それから花火大会の日に亡くなったが、終盤では亀乃とお玉と共に空を飛んで由太の元へ現れた(妻の亀乃は自身が亡くなってしばらくしてから亡くなった)。原作ではメガネをかけていると言う描写は一切無く、それに水色でひょうたん柄の着物をいつも着ており、ちなみに元教員だと言う事まで明かされていない。賢之助は賢司郎の祖父であり、由太にとって高祖父にあたる。賢司郎に輪をかけて厳しい性格で、孫が悪いことをした時などにお仕置きをする。メガネはかけておらず口ひげを生やしているが、同じような和装姿なため賢司郎とそっくり。賢司郎が過去の向島へ訪れた時には多吉や過去の中村和尚などから賢之助と間違えられている。ちなみにその賢之助は映画のオリジナルキャラクターであり、原作には登場していない。
大井由太(ボケタ)
演 - 厚木拓郎小学生で5年B組に所属。日常的によく考え事をしているが、周りからは「ボケっとしている」と思われている。夏休みの間は父(パパ)の実家で賢司郎に見張り役と言うへんてこなアルバイトをする事となる。尾道へは小学校入学前に行ったことがあるため賢司郎とも面識はある。冒頭の尾道に行く前に、香里から「あんたは無愛想だから、とにかくニコニコしていなさい」と言われたため、尾道にいる間は時々愛想笑いをしている。勉強はあまり得意ではなく、それに賢司郎と違って水泳も苦手。本人は「僕はママ似」と認識している。現在は恐竜に興味を持っており、『世界恐竜大図鑑』を欲しがっている。原作では一人称が僕ではなく俺であり、それに小学校の3年生ぐらいと言う事になっており、しかも考え事ばかりしていると言う描写や恐竜に興味を持っていると言う描写などは一切無い。
大井亀乃
演 - 菅井きん賢司郎の妻で、由太の祖母。東京からやって来た由太を尾道駅で出迎え、自宅に行く道すがら賢司郎の奇妙な言動について話す。また自宅に着いた後由太に賢司郎のおかしな行動を撮影した証拠ビデオを見せて、夏の間夫に付き添ってくれるよう告げる。賢司郎とは見合い結婚で夫婦仲は悪くはないが、賢司郎の最近の変な言動に手を焼いている。賢司郎からは内心「わしがおかしな行動をするのを密かに楽しみにしている」と思われており、陰で「ババァ」呼ばわりされている。賢司郎が亡くなってしばらくしてから後を追うように亡くなり、賢司郎とお玉と共に空を飛んで由太の元へ現れた。原作では下の名前まで明かされておらず、それに賢司郎の亡き後に亡くなって空を飛んだと言う描写は一切無い。
少年時代の賢司郎〈賢司郎〉
演 - 久光邦彦過去のシーンに登場。本作ではシーンによって、現在の賢司郎と別人格として同時に登場したり[注 4]、現在の賢司郎が〈賢司郎〉の姿に変わる場合[注 5]がある。麦わら帽子に、白地に黒い井桁絣(いげたがすり)の着物を着ている。お玉に好意を寄せている。ある日野原で2人で会った時にお玉からお願い事をされ、彼女と指切りげんまんをする。おじいさんとなった現在の賢司郎とは違い気弱な性格。自身は多吉と特に親しいと思っていないが、彼に渋々付き合ってあげている状態。
魚谷の多吉
演 - 小磯勝弥過去のシーンに登場。漁師の息子。故人。通称・“ホラタコの多吉”。ボロボロで汚れた丈の短い着物を着ている。「海辺で自分と同じくらいの大きなタコと決闘した」と周りの人に話したことから、「ホラを吹く」から転じて“ホラタコの多吉”と呼ばれるようになった。〈賢司郎〉のことを一方的に慕っており、“賢司郎様”と呼んで勝手に彼の家来のように振る舞っている。漁師である父親と共に採れたての魚を毎日長恵寺に届けていることから、過去の小林和尚とも顔見知り。長恵寺の弥勒様にとまったタマムシを採ろうとしてその弥勒様の手首を折った張本人であり、それがきっかけでバチが当たったらしく、海辺で決闘した大きなタコにくわえ込まれて死亡した。原作では漁師の息子ではなく三島屋と言う大きな荒物問屋の息子であるため三島屋の多吉となっており、それに本名が中村多吉だと言う事が明かされている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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