Βシート
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βシート(: β-sheet)は、βプリーツシート(: β-pleated sheet)とも呼ばれ、正常なタンパク質の二次構造における共通モチーフである。βシートは、βストランド(β-strand、β鎖)が、少なくとも2?3本の骨格(英語版)水素結合によって横方向に結合して構成され、全体的にねじれたプリーツ(折り目)状シートを形成している。βストランドとは、一般的に3?10アミノ酸長のポリペプチド鎖の区間であり、骨格は伸長したコンフォメーション(立体配座)になっている。このβシートの超分子会合は、アルツハイマー病などのアミロイドーシスで見られるフィブリルタンパク質凝集体の形成に関与していると考えられている。
歴史カタラーゼ酵素の結晶構造から得られた4本ストランドの逆平行βシート断片の例。(PDB: 1GWE​、分解能0.88 A)
a) 正面図。隣接するストランドのペプチドN-H基とC=O基の間の逆平行水素結合(点線)を示している。矢印はストランドの方向を示し、電子密度の等高線は水素以外の原子の輪郭を示している。酸素原子は赤玉、窒素原子は青玉、水素原子は簡略化のために省略している。側鎖は最初の側鎖炭素原子(緑)のみ表示している。
b) aの中央の2本のβストランドを端から見た図。右巻きのねじれと、シートから逆方向に交互に突き出たCαと側鎖のプリーツ(折り目)を示している。

最初のβシート構造は、1930年代にウィリアム・アストベリーによって提案された。彼は、平行または逆平行に伸長したβストランドのペプチド結合間の水素結合というアイデアを提案した。しかし、アストベリーは、正確なモデルを構築するために必要なアミノ酸の結合形状に関するデータを持っておらず、特に、ペプチド結合が平面であることを知らなかった。1951年にライナス・ポーリングロバート・コリーによって改良版が提案された。このモデルには、ペプチド結合の平面性が組み込まれていた(ケト-エノール互変異性化によるものと彼らが以前に説明したもの)。
構造と配向
ジオメトリβプリーツ・シート。2本のβストランドが水素結合(点線)で結合し、プリーツ(折り目)を形成する。

大半のストランドは、別のストランドに隣接して配列して、一方のストランド骨格のN-H基が隣接するもう一方のストランド骨格のC=O基水素結合を形成することで、広範な水素結合ネットワークを形成している。完全に伸長したβストランドにおいては、連続した側鎖が真上、次に真下、次に真上などを指す。βシートの中で隣り合うβストランドは、Cα原子が隣り合い、側鎖が同じ方向を向くように配置される。βストランドが「プリーツ」状に見えるのは、Cα原子の四面体化学結合によるものである。たとえば、側鎖が真上を向いている場合、C′の結合角は約109.5°であるため、その結合はわずかに下を向いている必要がある。このプリーツにより、Cα
i と Cα
i + 2 の間の距離は、完全に伸長した2つのトランスペプチドから予想される7.6A(0.76 nm)ではなく、約6A(0.60 nm)となる。水素結合したβストランド内の隣接するCα原子間の「横方向」の距離は約5A(0.50 nm)である。約10万点の高解像度データのラマチャンドラン(φ, ψ)プロット。左上のβ文字は、βシートアミノ酸残基の典型的なコンフォメーションの周辺にある幅広い有利な領域を示している。

しかし、βストランドが完全に伸長することはほとんどなく、むしろねじれを示す。エネルギー的に有利とされる (φ, ψ) = (?135°, 135°) 付近の二面角(左図:ラマチャンドランプロットの左上の広い領域)は、完全に伸長したコンフォメーション (φ, ψ) = (?180°, 180°) から大きく乖離(かいり)している[1]。このねじれは、大きなシートに含まれる個々のβストランドがばらばらになるのを防ぐために、二面角の交互の変動に関連することが多い。強くねじれたβヘアピンの好例はタンパク質BPTI(アプロチニン)(英語版)で見られる。

側鎖はプリーツの折り目から外側に向かってシートの平面に対してほぼ垂直に伸びている。連続したアミノ酸残基はシートの交互の面で外側に向かっている。
水素結合パターン.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}逆平行βシートの水素結合パターンを点線で表した。酸素原子は赤、窒素原子は青で色分けされている。平行βシートの水素結合パターンを点線で表した。酸素原子は赤、窒素原子は青で色分けされている。

ペプチド鎖にはN末端C末端による方向性があるため、βストランドでも方向性があると言える。それらは通常、タンパク質トポロジー図でC末端を指す矢印で表される。隣接するβストランドは、逆平行、平行、または混合配列で水素結合を形成することができる。

逆平行配列では、連続したβストランドが交互に方向を変え、一方のストランドのN末端が次のストランドのC末端に隣接する。これは、カルボニルとアミンの間のストランド間水素結合が有利な配向である平面になるため、最も強いストランド間安定性を生み出す配置である。ペプチド骨格の二面角(φ, ψ)は、逆平行シートでは約(?140°, 135°)である。この場合、2つの原子 Cα
i と Cα
j が水素結合した2つのβストランドで隣接していれば、互いのペプチド基に2つの共有骨格の水素結合を形成することになる。これは近接ペア水素結合として知られている。

平行配列では、連続するストランドのN末端がすべて同じ方向に向いている。この配列は、ストランド間の水素結合パターンに非平面性が生じるため、わずかに不安定になる可能性がある。


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