サン・マイクロシステムズのPWI (Public Windows Initiative) やWabi[7](Windows APIのパブリックドメインソフトウェアによる完全代替を目指したもの)の影響を受け、ボブ・アムスタッドとエリック・ヤングデイルによりWindowsアプリケーションをLinux上で動作させることを目的としてWineプロジェクトは1993年にネットニュース上で創始された[8]。当初はWindows 3.1用(16ビット)アプリケーションに主眼を置いたが、現在は32ビット中心に開発されている。1994年以降はアレクサンダー・ジュリアードがプロジェクトリーダーを務めている[9]。
プロジェクトは困難を極め、なかなか互換性が高まらなかった。特に1990年代は、日本語環境においてアプリケーションが思うように動かせない状況が続き、Wineのインストールや動作にもそれなりのスキルが必要とされていた。
Wineプロジェクトに着目したコーレルなどの支援によって一時的に状況は好転したが、マイクロソフトのコーレルへの大規模投資が原因となって、この支援は中止された[10]。
現在はCodeWeaversがジュリアードらを雇っている[9]。また、GoogleはLinux版PicasaでWineを利用し、Wineの開発を支援している[11]。
最初のベータ版となったバージョン0.9は2005年10月25日にリリースされ、最初のリリース候補版 (1.0-rc1) は2008年5月9日にリリースされた。2008年6月17日には Wine 1.0 がリリースされた[12]。
Wine における Windows アプリケーションの動作状態は Wine アプリケーションデータベース (AppDB) で調べることができる。Wine AppDB では Wine ユーザからの動作報告がデータベース化されており、アプリケーションが動作状況の良い順に「Platinum」、「Gold」、「Silver」、「Bronze」、「Garbage」で格付けされている[13]。一般に Wine のバージョン毎に格付けが変わる。
Wine 1.0 で
Adobe Photoshop CS2 体験版
Microsoft PowerPoint Viewer 97 と 2003
Microsoft Word Viewer 97 と 2003
Microsoft Excel Viewer 97 と 2003
がリリース基準に使われた[14]こともあり、Wine 1.0 ではこれらのアプリケーションが問題なく動作すると報告されている[15][16][17][18]。
Wine には wine コマンドを中心として様々なプログラムやツールが含まれている[19]。
wine - 一般に Wine がインストールされた環境で Windows プログラムを起動するには EXE ファイルをダブルクリックすればよい。しかし、場合によってはデバッグなどの目的でコマンドラインからプログラムを起動させたいことがある。wine はこのようなときに用いるコマンドで、引数に Windows プログラムを指定する。
Wine設定 (winecfg) - Wine 全体の設定を GUI で行うためのプログラムである。
Wine File (winefile) - MDI 型のファイルマネージャであり、Windows Explorer に対応する。コマンドラインから wine explorer と入力することでも起動する。
Wine Application Uninstaller (uninstaller) - GUI でプログラムをアンインストールするためのツールであり、Windows の「プログラムの変更と削除」に対応する。
regedit - GUI でレジストリを編集するためのプログラムであり、同名の Windows 付属プログラムに対応する。
コマンドプロンプト (cmd)、メモ帳 (notepad)、タスクマネージャ (taskmgr)、マインスイーパ (winemine) やワードパッド (wordpad) なども含まれている。コマンドラインから起動する場合、cmd、taskmgr や wordpad など一部のプログラムについては、wine コマンドの引数としてプログラム名を指定して起動する。例えば、ワードパッドを起動するにはwine wordpad
と入力する。
Wine やアプリケーションの EXE ファイルやレジストリなどはホームディレクトリ内の .wine ディレクトリ下に保存される。保存先は環境変数 WINEPREFIX を設定することで変更できる[20]。かつて Wine の設定ファイルとして config というファイルがあったが、2005年に廃止され[21]現在は拡張子が reg のファイルに設定が保存されるようになっている。
アプリケーションのデスクトップエントリファイルやアイコンなどはホームディレクトリ下の
.config/menus/applications-merged
.local/share/applications/wine
.local/share/desktop-directories
.local/share/icons
にインストールされる[22]。これらのディレクトリにインストールされるファイルは GNOME や KDE などでメニューに使われる。
Wineに似た他のプロジェクト
CodeWeavers - アメリカの会社で、Windows向けのブラウザ用プラグインソフトをLinux上で動作させるCodeWeavers Pluginなどを開発・販売している。Wineベース。また、Windows アプリケーションを動作させるCrossOver Linuxという製品や、Mac OS X上でWin32 アプリケーションを動作させるCrossOver Macを出荷している。
cedega - ⇒TransGaming Technologies社のWineの改良版プロジェクト。 DirectXに対応しているのが特徴。主にWindows用ゲームをLinux上で動かすことを主目的にしている。
ReactOS - Windows NTとバイナリレベル・ドライバレベルでの互換性を確保することを目標とした、オープンソースプロジェクト。