ワーキング プア(working poor)は、正社員並みに、あるいは正社員としてフルタイムで働いても、ギリギリの生活さえ維持が困難、もしくは生活保護の水準以下の収入しか得られない就労者の社会層[1]のことである。
直訳では「働く貧者」だが、働く貧困層と解釈される。
これまでに見られた典型的な失業者をはじめとする貧困層とは異なり、先進国で見られる新しい種類の貧困として近年問題視されている。
ここでは、特に断り書きがない限り、日本での事例について述べる。
目次
1 定義について補足
2 経緯
3 規模
3.1 人件費削減
3.2 下請企業へのコスト削減圧力
4 所得階層別の推移
5 メディアによる問題提起
6 日本以外の国での事例
7 各国のワーキングプア解決への取り組み
8 ドキュメンタリー
9 脚注
10 文献
11 関連項目
12 外部リンク
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ジャーナリズムから出た用語であるため、学術的な定義があるわけではなく、政府としても明確な定義づけを行っていない。内閣総理大臣・福田康夫は「いわゆるワーキングプアについては、その範囲、定義に関してさまざまな議論があり、現在のところ、我が国では確立した概念はないものと承知している。」「これまでに、いわゆるワーキングプアと指摘された方々は、フリーター等の非正規雇用、母子世帯、生活保護世帯等であって、このような方々の状況については、既存の統計等によりましてその把握に努める」
と第168回通常国会本会議(2007年10月4日)で答えている。
1990年代、とくに橋本龍太郎内閣以降一貫して進められた自由化・規制緩和の流れの中で、労働者の就業形態が多様化したが、企業の人件費削減の中で非正規雇用が増えた。そうした流れの中で、同時期の長期不況に社会に出た「就職氷河期」の世代は正規の職を得ることができず、フリーターのような不安定な形で職に就くことが少なくなかった。また、日本の雇用慣行では、新卒として正社員の職を得られなかった場合、その後に安定した職業につくチャンスが少ない。こうした事情が、ワーキングプア増加の背景として指摘されている。このような流れは少しずつ進行したが、大きく注目されたきっかけは後述のNHKによるドキュメンタリーの放送である。
ワーキングプアにあたる所得の世帯数は、日本全国で2002年約650万世帯ほどと推定され、2006年以降、社会問題として採り上げられるようになった。推計根拠は総務省の就業構造基本調査。これに基づいて試算すると、ワーキングプアの規模は次のとおり[2]といわれている。
1997年 514万世帯 14.4%
2002年 656万世帯 18.7%
労働者単位で見ると、民間企業で働く労働者の平均年収は1998年以降減少傾向で推移しており、2006年の平均年収は435万円と9年連続で減少した。年収200万円以下の労働者は2006年には1985年以来、21年ぶりに1000万人を突破したという[3]。
ワーキングプアが大量に発生した要因として、企業の人件費削減の流れが指摘されている。
企業は
賃金水準の抑制
安い人件費を目的とした海外への進出
賃金の高い正社員の新規採用を減らす
賃金が安く、売上等状況に応じて調整を行いやすいアルバイトやパート、契約社員、派遣社員といった非正社員を増やす[4]
などにより、総人件費の抑制を図った。なお、非正社員への置き換えについては、製造現場への派遣行為を禁じていた労働者派遣法旧規程が緩和された事による、大企業の製造現場における偽装請負といった問題も発覚した。
賃金水準の抑制
労働者の賃金水準は、低下傾向にある[5]。
賃金の高い正社員の新規採用を減らす
新規採用の減少については、 ⇒リクルートワークス研究所の公表資料を参照。正社員の採用については、新卒が主流なため、新卒で就職できなかったり、あるいはいったん正社員となっても、自発的な離職、倒産やリストラなどの非自発的離職で職を失うと、特別な技能や国家資格などがあるか、即戦力となれるだけの経験・技量がある(と求人先に認められた)場合を除き、定職に就くのは厳しい。