フェルマーの最終定理(フェルマーのさいしゅうていり)とは、3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組み合わせがない、という定理のことである。フェルマーの大定理とも呼ばれる。n = 2 のとき、上の式を満たす整数の組は無数に存在し、ピタゴラス数と呼ばれる。このような数は具体的に書き表わすことができる。
フェルマーが驚くべき証明を得たと書き残したと伝えられ、長らくその証明も反例も知られなかったことからフェルマー予想とも称されたが、360年後にワイルズによって完全な証明が発見され、フェルマー・ワイルズの定理と呼ばれるに至る。
目次
1 概略
2 個別研究の時代
2.1 n = 4 :フェルマー
2.2 n = 3 :オイラー
2.3 n = 5 :ソフィ・ジェルマン
2.4 n = 14 および 7 :ラメ
2.5 クンマーの理想数
3 近代的アプローチへ
3.1 モジュラー形式
3.2 モーデル予想
3.3 谷山・志村予想
3.4 フライ・セール予想
4 最終的解決
5 備考
6 脚注
7 参考文献
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17世紀、フランスの数学者ピエール・ド・フェルマー(1601年 - 1665年)には、ディオファントスの著作『算術』を読みながら本文中の記述に関連した着想を得ると、それを余白に書き残しておくという習慣があった。狭い余白であるために証明を省略された。ただし、充分な余白がある場合にもフェルマーはしばしば証明抜きで彼の発見を発表した。例えばフェルマーの小定理を実際に証明したのはライプニッツである。これらの定理あるいは予想が知られるようになったのは、フェルマーの没後、彼の息子サミュエルによってフェルマーの書き込み入りの『算術』が再刊されてからである(フェルマーの手書きのメモが入った『算術』は今日では失われている)。[1] これら48ヶ所の書き込みのうち、『算術』第2巻第8問「x2 + y2 = z2 の有理数解を求めよ」の欄外余白に「n が3以上のとき、一つの n 冪を二つの n 冪の和に分けることはできない。この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる」と書き残した。
しかし彼の残した他の予想は全て決着が着いたのにもかかわらず、この予想だけは証明することも反例をあげることもできなかったために、フェルマーの最終定理と呼ばれるようになり、プロとアマチュアとを問わず、無数の数学者がその証明に挑んだ。
証明は、n = 4のときと n が素数のときのみ考えればよい。たとえば、n = 6 のときは (x2)3 + (y2)3 = (z2)3 と書き直すことができるからだ。n が具体的な値をとるいくつかの場合についてはさまざまな証明が与えられた。
オイラーは1753年にゴールドバッハへ宛てた書簡の中で n = 3 の場合の証明法について言及し、1770年に刊行した著書でそれを明らかにした。ただし、この証明は虚数のレベルまで因数分解を行ったものであったが、虚数のレベルまで因数分解をすると様々な複素数の積に分解できてしまうという不備があったので、のちに補正された。
ソフィ・ジェルマンは、フェルマー予想を「1) x, y, z のいずれかが n で割り切れる」「2) x, y, z のいずれも n では割り切れない」という二つのパターンに分類し、100以下のすべての n について、パターン 1) に関してはフェルマー予想が正しいことを証明した。しかし、フェルマー予想の反例が含まれるかもしれないパターン 2) に関しての研究は難航した。パターン 2) も含めて n = 5 の場合を完全に証明したのはディリクレとルジャンドルであるが、ジェルマンまでは(そしてジェルマン以降も当面は)「n = 3 のとき」あるいは「n = 4 のとき」といった個別研究の域を出なかったこの問題に対し、指数の範囲が限られているとはいえ包括的な証明を与えようとした点において、ジェルマンの研究成果の意義はきわめて大きい。