Winny 事件の立件にあたって、検察側はファイル交換用P2Pソフトウェアの開発自体を違法行為としているのか判断の明示を避けているが、この一件は日本国内でのP2Pソフトウェア開発・配布者の開発行為を萎縮させると懸念されると、2004年に開かれた初公判の中で金子は述べており、これに賛同するソフトウェア開発・配布者も少なくない。
日本製とされるファイル交換用のP2Pソフトウェアで、主に同様の目的で使われる種類のものとしては、「うたたね」、「Marie」、「Share」、「新月」、「AsgumoWeb」、「RinGOch」、「Ansem」、「Speranza」、「Sparrow」、「Zigumo」、「Cabos」、そして「Perfect Dark」などが存在している。
この中で開発・配布行為に責任を問われた事例は現在のところ存在しない。 P2P技術と、違法なファイルの交換を容易にする技術は全く別のものであり、P2P技術自体は Skype のような利用も可能である。 P2P技術と違法なファイルの交換を容易にする技術を組み合わせたものが幇助に問われたからといって、P2P技術に法的責任が問われる可能性があるというのは杞憂を通り越して単なる事実誤認である。また、日本の法律では技術そのものが違法という考え方は成立しない。金子が幇助に問われているのは違法なファイルの交換を容易にする技術を実装したことと、そのソフトウェアの配布の態様にあると考えられる。 ⇒判例タイムズ1229号(2007年3月15日号) 違法なファイルの交換を容易にしたりしないような中立的なソフトウェアの実装方式・配布方法であれば現状では問題ないと解される。
さらに、開発・配布者の逮捕に伴って Winny の使用法を解説したウェブサイト「WinnyTips」の制作者も自宅を家宅捜索され、ウェブサイトは閉鎖となっている。
この件については、間接的にではあるが事件そのものとは係わり合いのない個人のウェブサイトを閉鎖に追いやったことから、警察による表現の自由の侵害ではないかといった声もあがった( ⇒2004年5月17日、ITmedia)。
2004年5月31日、Winnyの開発・配布者である金子は京都地方検察庁によって京都地方裁判所に起訴された。
起訴するにあたっては、正犯である群馬県高崎市の男による著作権侵害行為への幇助が起訴事実として挙げられた。
また、京都府警の聴取に対して金子が「インターネットが普及した現在、デジタルコンテンツが違法にやりとりされるのは仕方ない。新たなビジネススタイルを模索せず警察の取り締まりで現体制を維持させているのはおかしい」などと供述していたことから、京都地検はプログラム自体の違法性などの是非には言及せず、そのソフトを作成、配布した金子の行為に幇助の故意を認め、雑誌などにより違法に使われている実態がすでに明らかになった後も開発を続けていたことから悪質であると断じた。
これらの起訴事実について、金子は正犯との面識がないことなどをあげて全面的に否認し、以後、検察側と弁護側が全面的に争うこととなる。
2004年6月1日、保釈。
2006年7月3日、検察側は論告において金子に対して懲役1年を求刑した。
第1審は2006年9月の弁護側最終弁論で結審。
2006年12月13日、著作権法違反の幇助により罰金150万円の有罪判決が京都地方裁判所(氷室眞裁判長)で言い渡された。 同日、判決を不服とし大阪高等裁判所に控訴、今なお係争中。
開発・配布者である金子に対する批判的な声として、Winnyの主たる目的は著作権法とわいせつ物頒布罪を犯した違法なファイル交換にあるというものがある。
これらの批判を展開する者は、Winnyが最初に発表された場所である2ちゃんねるのダウンロードソフト板がそれ以前からネット上で著作権法違反をする者らの温床と化していた点を指摘した上で、Winnyの開発目的として「(前略) ⇒ネット上に著作権法違反を蔓延させようと思った」といった金子が警察に対する供述の中で述べた発言などを引用し、ソフトウェアの持つ目的について元々、著作権侵害の意図があったものなのではないかと主張する。
発言の中から一例を挙げれば、2ちゃんねるのダウンロードソフト板に書き込まれた投稿の中で「(Winnyの)β8.1は匿名性に穴があります。違法なファイルのやり取りは行わないようにお願いします。」と“47氏”は述べたことがある(2002年5月12日)。
この発言については、著作権侵害者であるユーザーが侵害の事実を後々追跡される恐れがないよう“47氏”が助言していると考えられ、金子が悪意を持っていたことの証拠とみなせるとする声もある。
こうした声がある一方で、仮にソフトウェアそれ自体が犯罪行為に使用可能だとしても、ソフトウェアを開発したという金子の行為それ自体は犯罪を構成するものではないとする意見も存在する。
また、実際“47氏”の発言にはその意図が曖昧であるものが多く、開発目的については金子の動機を立証することは不可能であり、そもそも、金子と“47氏”が同一人物であるということも特に個々の発言については同様に証明不可能であるという見解もある。
“47氏”は「Winnyで違法なファイルのやりとりが確認されましたので、これ以降の開発を中止致します。」と述べたり(2002年6月18日)、市販のPCソフトの著作権侵害を発見した場合は著作権管理団体であるコンピュータソフトウェア著作権協会へ通報するようにアドバイスを与える(2002年8月2日)など、特に開発初期において違法行為を戒める発言をたびたびしている。(参考: ⇒47氏発言集)
2ちゃんねる管理人西村博之は発行しているメールマガジンで、当時ダウンロードソフト板は書き込みのログを保存しておらず、“47氏”名義での発言が金子本人のものであるかどうかの裏付けは困難なのではないかと発言した。
一方、京都府警はソースコードや開発に使用されたパソコン等を押収しており、金子しか知り得ない情報がどのようなものか把握しているとされる。“47氏”は、現行制度を変えるためには法律を犯す必要性があるとする趣旨の書き込みを残しており、これらの事実からも、“47氏”と金子が同一人物であるとすれば、金子自身も自分のしていることやWinnyに何らかの違法性があると認識していたと考えられる。
しかしながら、前述のように2004年から現在も続いている裁判においても金子は著作権侵害の意図については全面的に否定しており、裁判において金子の弁護団は“47氏”との同一性についても否定する姿勢をとっている。
そのため、公判の中で京都地検が指摘したように「Winnyの利用実態として著作権侵害を目的としたもの以外の利用行為がほとんどない」にも拘らず、それは本来の製作者の意図したところではないというものが、金子がとっている現在の立場であったが、京都地裁判決で証拠採用された、押収物から発見されたと思われる金子と姉の間のメールのやりとりが明らかとなっている。
ア 平成14年8月21日,被告人の姉から被告人に対し「勇ちゃんが,軽く作ってみたものが,これだけ話題になるなんてやっぱり,勇ちゃんてすごいのね,と感心してます。あとは,ぬかりなく気をつけてね。法律上とか,著作権とか,自分の職場とか,これから先のこととか,健康の事とか。活躍を期待してます。」などという内容のメールが送信された。これに対する返信として,同月23日,被告人は姉に対し「とりあえず何か一般に広まるソフトを作るというのだけは決まってるけど何やるかは決まってないし,といってすぐ広まるようなもんは,たいてい悪用が効くようなものに決まってるということで,これは予備みたいなもんかな。まあ,何やったらまずいかは良く把握してるんで(おかげで最近は著作権法とかに詳しくなったけど)気は付けてます。作るだけならぜんぜん問題ないんだけど作者が悪用できることを明らかに宣伝するとまずいはず。その辺は抜かりないはず。とりあえず公に作者だとしてあまり名前出せないようなもん作っていても仕方ないんだけど,悪貨は良貨を駆逐するってのはいつの時代でもそうで悪用できるようなソフトは特に宣伝しないでも簡単に広まるね。もう少し名前出しやすい方向への応用は考えてるんでそっちも期待だけど,そちらは表に出てくるのがちと時間かかりそう。」などという内容のメールを送信した。 また,同年9月10日,被告人は姉に対して「とりあえずWinnyの方はこちらの想定以上に大事になってますが,(WinMXという今まででのデファクトソフトが使えなくなったので人が移動してきている)こちらはソフト作っているだけなので警察沙汰にはならないと思います。作者なので自由に手を入れられるのでテストの時は絶対に外にファイルをUPしたりしないようにしてるし(現行法律下ではファイルを無差別に他の人に渡すと著作権その他で問題がでる)。