毎日子午線を通過する天体を観測することによって、地球の自転に基づいた時刻を測定することができる。天文学者は測定方法として太陽を観測するよりも恒星の子午線通過を観測する方をよく用いる。恒星を使う方がより精度の良い観測を行えるためである。今日では、VLBIを用いて遠方のクエーサーを観測することで国際原子時(TAI)と関連したUTを決定している。この方法ではマイクロ秒の精度で時刻を決めることが可能である。ほとんどの時刻源や天球座標系の基準として使われる世界時としてUTと言った場合、通常はUT1が使われるが時としてUTCを意味する場合もある。
地球の自転とUTは国際地球回転観測事業(IERS)によって監視されている。時刻標準の制定には国際天文学連合(IAU)も関わっているが、時刻標準を配信する最終的な責任者は国際電気通信連合(ITU)である。
地球の自転はいくらか不規則であり、また1日の長さも月の永年加速によって非常にゆっくりと延びている。さらに1秒の長さは1750年から1890年までの月の観測から決められた慣習的な値に基づいているため、これも平均太陽日の平均値が86,400SI秒よりも長くなりつつある原因となっている。UTの刻みにはわずかな不規則性があるため、天文学者は暦表時を導入した。これは現在は地球時(TT)に置き換えられている。しかしUTは昼夜に同期しており、原子時計を用いたより高精度の時刻基準がUTに対してずれていくため閏秒と呼ばれる原子時に対する補正値を求めて、原子時計の時間間隔精度を持つ市民時刻を配信するためにUTは今でも使われている。よって、時刻と時間間隔の標準時報は、常は閏秒の合計分だけずれた値でTAIに同期しており、平均太陽時からあまり大きくずれないように時々閏秒を挿入して値が飛ぶという妥協策をとっている。地球時はTAI+32.184秒である。
原子時の一形態である太陽系力学時(TDB)は、主に2つの理由から惑星やその他の太陽系天体の天体暦を作る際に使われる時刻である。第一の理由はこれらの暦は惑星運動の光学・レーダー観測と結び付いており、一般相対性理論の補正の下でニュートンの運動方程式が成り立つようにTDB時刻系が作られているためである。第二は、地球の自転に基づく時刻系は一様に進まないので太陽系天体の運動の予測には使いにくいためである。
1928年に、グリニッジ標準時(Greenwich Mean Time)よりも正確な用語として世界時(Universal Time)という語が国際的に採用された。これは、GMTという語が正午を起点とする天文学的な「日」と深夜を起点とする市民向けの「日」のどちらを指す場合もあるためである。しかしグリニッジ標準時という語は今日でも一般の時刻基準を指す言葉として依然として広く使われている。
世界時にはいくつかの種類が存在する。
UT0は天文台で恒星や銀河系外電波源の日周運動の観測、あるいは月や人工衛星の継続観測によって決められる世界時である。UT0は地球の地理学的極が自転の極からずれた分の補正を含まない。このずれは極運動と呼ばれ、地球上の任意の場所の地理学的位置が数メートルずれる原因となる。そのため、異なる天文台で同じ瞬時に求めたUT0は異なる値になる。よってUT0は厳密な意味では"Universal"ではない。
UT1はUT0から観測地の経度に表れる極運動の効果を補正して計算される値である。UT1は地球上のどこでも同じ時刻であり、静止座標系に対する地球の真の回転角を定義する。地球の自転速度は一様ではないため、UT1は1日あたり±3ミリ秒程度の不確定性を持つ。
UT1RはUT1から35日以内の短周期の変動を取り除いたもので、UT1よりも進度が滑らかな時刻である。
UT2は現在ではほとんど使われず、ほぼ歴史的興味の対象である。UT2はUT1を均した時刻である。UT1には周期変動以外の不規則性も含まれている。その不規則性には季節変動の効果があり、以下の慣習的な補正式によって大部分を取り除くことができる。
ここでのtはベッセル年で表した時間である。
UTC(協定世界時)は市民向けの常用時刻が基準としている国際標準である。UTCは原子時計で測定され、必要に応じて閏秒と呼ばれる1秒を導入することによってUT1との差が0.9秒以内に保たれている。現在までのところ、閏秒の値は常に正である。1秒未満の精度が必要でなければ、UTCをUT1の近似として使うことができる。
参考文献
Peter Galison. Einstein's clocks, Poincare's maps: Empires of time. New York: W.W. Norton & Company, 2003. ISBN 0393020010. Discusses the history of time standardization.
O'Malley, Michael. Keeping watch: A history of American time. Washington: Smithsonian, 1996. ISBN 1560986727
Seidelman, P. Kenneth, ed. Explanatory supplement to the Astronomical Almanac. Mill Valley, California: University Science Books, 1992. ISBN 0935702687.
関連項目
サンドフォード・フレミング
恒星時
時刻系
カテゴリ: 時間
更新日時:2008年9月14日(日)07:21
取得日時:2008/11/17 12:46