本大会は、スペインが前身の欧州ネイションズカップ時代以来となる、11大会ぶり2回目の優勝を果たした。
過去のFIFAワールドカップやユーロで、期待されながらの早期敗退を繰り返してきたスペインだったが、本大会のスペインは大会前の親善試合で16戦連続無敗を記録し、有力な優勝候補として開幕を迎えた。そして蓋を開けると、本大会限りでの勇退が決まっていたルイス・アラゴネス監督の下、「クアトロ・フゴーネス(4人の創造者)」と名づけられたシャビ、アンドレス・イニエスタ、ダビド・シルバ、セスク・ファブレガスという4人のゲームメーカーを中心とした華麗なパスサッカーは、予想以上に大会を席巻した。初戦のロシア戦をダビド・ビジャのEURO史上7人目のハットトリックで圧勝すると、以後も全く危なげなく勝利を重ねて順調に決勝戦へ進出。決勝では、調子が上がらないながらもしぶとく勝ち上がってきたドイツを終始圧倒し、スコア以上の完勝で44年ぶりの栄冠(フランス以来の24年ぶりの全勝優勝)を手にした。タレント揃いの攻撃陣に加え、相手のスペースをことごとく潰し続けたマルコス・セナ、闘志溢れるプレーでチームを引っ張ったカルレス・プジョル、神がかりなスーパーセーブを連発し、イタリア戦ではPK戦勝利の立役者となったキャプテンイケル・カシージャスなど守備陣の奮闘もあり、「大舞台で勝負弱い」というこれまでのスペインのイメージを完全に払拭した、圧倒的な優勝劇だった。
スペインと並んで大会を盛り上げたのが、ともに下馬評は低かったトルコとロシアの躍進である。
予選や親善試合でも良い成績を残せず、完全なアウトサイダーとして大会に乗り込んだトルコは、グループリーグ初戦のポルトガル戦で完敗を喫し、決勝トーナメント進出は絶望的かと思われた。ところが、スイスと対戦した2戦目、トルコは先制点を許しながらも、後半ロスタイムに決勝点を決める逆転勝ちを収め、開催国に引導を渡す。更に3戦目のチェコ戦では、残り15分の時点で2点差をつけられるという厳しい状況から、75分、87分、89分に立て続けに3ゴールを奪い逆転勝ち。奇跡的なグループリーグ突破を果たした。
トルコの奇跡が頂点に達したのは、準々決勝のクロアチア戦である。0-0のまま延長戦に突入したこの試合は、残り1分となった延長後半14分に、クロアチアが決定的な先制点を挙げる。ところが、このゴール直後のロスタイム、トルコはセミフ・シェンテュルクが起死回生の同点ゴールを挙げ、試合は土壇場で引き分けに終わる。そしてこの後のPK戦を制し、トルコは史上初のベスト4に進出したのである。準決勝のドイツ戦でも、残り4分で同点に追いつく粘りを見せたものの、これまでのお株を奪われるロスタイムの決勝点により敗退。しかし、勝利の全てをロスタイムの逆転勝ちで挙げた「ミラクル・トルコ」は、世界中を驚かせた。
一方、過去にオランダ、韓国をワールドカップ4位、オーストラリアを同ベスト16に導いた名将フース・ヒディンクに率いられたロシアは、監督の知名度からダークホースに挙げられることはあったが、選手レベルが高くないこと、エースのアンドレイ・アルシャヴィンが予選最終戦の退場により開幕から2試合に出られないことから、やはり下馬評は低かった。実際、初戦のスペイン戦で何も出来ずに完敗した際は、誰もがヒディンクの神通力もここまでだと考えた。
しかし、2戦目のギリシャ戦を何とかものにすると、アルシャヴィンが復帰した3戦目でロシアは圧倒的な強さを見せる。有力国の一角だったスウェーデンに完勝して決勝トーナメント進出を決めると、準々決勝ではグループリーグでイタリア、フランスに圧勝していた優勝候補オランダを、アルシャヴィンの大活躍により3-1で粉砕。ベスト4入りを成し遂げた。準決勝ではスペインに再度完敗したが、ヒディンクは名将の誉れをさらに高め、ローカルスターだったアルシャヴィンはこの大会で世界的選手の仲間入りを果たした。
この他、イタリア・フランスの二大強国に圧勝し序盤戦の話題を独占したオランダ、若いビリッチ監督に率いられ躍動的なサッカーを見せたクロアチアも、ベスト8ながらポジティブな印象を残したチームであった。
逆に、ドイツW杯でベスト4に入った4ヶ国(イタリア・フランス・ドイツ・ポルトガル)下馬評は高かったものの、期待通りの結果・内容を見せることはできなかった。
特にフランスはオランダ戦で4失点を献上するなどベテラン選手中心の守備陣が崩壊。攻撃もフランク・リベリー以外にアクセントをつけられる人材が見当たらず(そのリベリーが負傷退場したイタリア戦は攻撃が機能不全に陥った)、ジネディーヌ・ジダン引退後の世代交代に完全に失敗した印象を与えてしまった。更に、不慣れなCBで起用されたエリック・アビダルが一発退場処分となるなど、監督のレイモン・ドメネクの采配にも非難が集中した。
イタリアもやはりオランダ戦で自慢の守備陣が崩壊し0-3と惨敗。ディフェンスラインを入れ替えた2戦目以降、守備は建て直しを見せたものの、攻撃はエースのルカ・トニが絶不調なのが響き、セットプレーでしか得点ができなかった。