ある物理量について1種類の単位(例えば長さについてのメートル)しかなかったら、非常に大きな数字や小さな数字を扱わなければならなくなる。尺貫法、ヤード・ポンド法などの伝統的な単位系では、異なる値の複数の単位(例えば里、尺、寸)を用意し、それらを組み合わせて値を表現していた。これで、扱う数字を小さくするという目的は達せられたが、色々な単位を覚えなければならず、また、計算をする際には単位を相互に換算する必要が出てくる。
そこでメートル法では、それぞれの物理量に対しては1つの単位だけを定義し、それに、10の累乗倍の数を示す「接頭辞」を添えることとした。例えば、接頭辞「キロ」は1000倍を表す。よって、「キロ」メートルは1000メートルに、「キロ」ワットは1000ワットになる。接頭辞「ミリ」は1000分の1を表す。よって、「ミリ」メートルは1000分の1メートルに(すなわち1メートルは1000ミリメートル)、「ミリ」リットルは1000分の1リットルになる。これによって、同じ接頭辞を様々な単位につけるだけで単位を様々な大きさにすることができ、伝統的な単位系のような大きさによって全く別の単位を覚える必要がなく、十進法なので計算のための換算も簡単にできる。これがメートル法の大きな利点の一つである。
SI接頭辞10n接頭辞記号漢数字表記十進数表記
1024ヨタ (yotta)Y一?1 000 000 000 000 000 000 000 000
1021ゼタ (zetta)Z十垓1 000 000 000 000 000 000 000
1018エクサ (exa)E百京1 000 000 000 000 000 000
1015ペタ (peta)P千兆1 000 000 000 000 000
1012テラ (tera)T一兆1 000 000 000 000
109ギガ (giga)G十億1 000 000 000
106メガ (mega)M百万1 000 000
103キロ (kilo)k千1 000
102ヘクト (hecto)h百100
101デカ (deca, deka)da十10
100なしなし一1
10?1デシ (deci)d十分の一(分)0.1
10?2センチ (centi)c百分の一(厘)0.01
10?3ミリ (milli)m千分の一(毛)0.001
10?6マイクロ (micro)μ百万分の一0.000 001
10?9ナノ (nano)n十億分の一0.000 000 001
10?12ピコ (pico)p一兆分の一0.000 000 000 001
10?15フェムト (femto)f千兆分の一0.000 000 000 000 001
10?18アト (atto)a百京分の一0.000 000 000 000 000 001
10?21ゼプト (zepto)z十垓分の一0.000 000 000 000 000 000 001
10?24ヨクト (yocto)y一?分の一0.000 000 000 000 000 000 000 001
参照: 非SI接頭辞
例:
5 cm = 5 × 10?2 m = 5 × 0.01 m = 0.05 m
3 MW = 3 × 106 W = 3 × 1 000 000 W = 3 000 000 W
SI接頭辞の名称には、以下のような決まりがある。
倍量の接頭辞は語尾がaで終わり、記号は大文字
分量の接頭辞は語尾がoで終わり、記号は小文字
ただし、メートル法の初期に作られた接頭辞には、このルールに従っていないものもある。
複数の接頭辞は同時に使用することはできない。例えば10-9メートルは 1 mμm(ミリマイクロメートル)ではなく 1 nm(ナノメートル)と書く。
接頭辞は常に累乗に優先する。例えば “km2” は「平方キロメートル」であって「キロ平方メートル」ではない。3 km2 は3 000 000 m2 であって 3000 m2 ではないし、もちろん 9 000 000 m2 ではない。SI接頭辞は通常は1000倍ごとのステップとなるが、2の累乗を伴う場合は1 000 000(100万)倍ごと、3の累乗を伴う場合は1 000 000 000(10億)倍ごとのステップとなる。そのため、このような場合には、大きな数字を使わなければならなくなる。
SI接頭辞は3の倍数の累乗となっているものを使用するのが推奨される。よって 1 hm(ヘクトメートル)よりも 100 m と書く方が良い。著名な例外はセンチメートル、ヘクタール(hecto-are)、センチリットル、立方センチメートル(これはミリリットルと等しい)、ヘクトパスカル、デシベルである。外国ではセンチリットルなどのも使用されている。かつて使われていた接頭辞に「ミリア」(myria, 104)、「ミリオ」(myrio, 10-4)というものがあったが、SIが導入される以前の1960年に廃止された。それは、これらの接頭辞が3の倍数の累乗のパターンに入っていないことや、これらの接頭辞に割り当てられる記号がない(M, m, μ は既に使われている)こと、そしてあまり用いられていなかったことのためである。
二重接頭辞、例えば「マイクロマイクロファラド」(ピコファラド)、「ヘクトキロメートル」(100キロメートル)、「ミリミクロン」または「マイクロミリメートル」(ナノメートル)のようなものも使われていたことがあったが、SI導入の際に廃止された。
キログラムはSI基本単位の中で唯一接頭辞がついており、グラムはその質量の1000分の1として定義されている。しかし、SIでは二重接頭辞は認めていないので、接頭辞はキログラムではなくグラムに対してつけられる。
SI接頭辞の原則には適っていても、接頭辞と単位の組み合わせの多くは、科学や技術の分野を含めてほとんど使用されることがない。
質量: ヘクトグラム、グラム、ミリグラム、マイクログラム、およびそれよりも小さいものが使用される。しかし、大きいものが使用されるのはまれであり、代わりにトンや指数表記が使用される。トンと等しいメガグラムは、非SIのトンとSIに基づくトンを明確に区別するために用いられることがある。
リットルによる体積: リットル、デシリットル、センチリットル、ミリリットル、マイクロリットル、およびそれよりも小さいものは使用される。大きなものでは、キロリットル、メガリットル、ギガリットルが使用される。
長さ: キロメートル、メートル、デシメートル、センチメートル、ミリメートル、およびそれ以下のものが使用される。メガメートル、ギガメートル、およびそれ以上のものが使用されるのはまれである。大きな長さ(距離)を示すときには天文単位、光年、パーセクが使用されており、天文単位は非SI単位であるがSIと併用して良い単位とされている。
時間: 秒、ミリ秒、マイクロ秒、およびそれより小さなものは使用される。キロ秒、メガ秒は使用されることがあるが、秒よりも大きな時間には通常は分、時などや指数表記が使用される。ただし、分や時間にSI接頭辞を付けて「キロ分」のようにすることはできない(秒はよい)。