HSST-03形(岡崎南公園)HSST-100形(愛知高速交通東部丘陵線)
HSST(High Speed Surface Transport、エイチエスエスティ)は、日本で開発が進められている磁気浮上式鉄道のことである。日本航空と名古屋鉄道が中心となり開発が進められ、運転速度および輸送能力に応じてHSST-100、HSST-200、HSST-300の3システムが開発された。このうちHSST-100形が1989年の横浜博覧会で国内初の営業運転。2005年3月に初の常設実用線として愛知高速交通東部丘陵線が営業運転を開始した。
目次
1 開発経緯
2 基本技術
2.1 浮上・案内
2.2 推進
3 車両技術
3.1 モジュール
3.2 ブレーキ
3.3 給電装置
3.4 車上電源
4 軌道
5 消費電力
6 環境への影響
6.1 騒音
6.2 磁界
7 ランニングコスト
8 HSSTシステムの種類
8.1 HSST-100形
8.2 HSST-200形
8.3 HSST-300形
9 実験車両
9.1 HSST-01
9.2 HSST-02
9.3 HSST-03
9.4 HSST-04
9.5 HSST-05
9.6 HSST-100
10 実用化への動き
10.1 愛知高速交通東部丘陵線
10.2 ドリーム開発ドリームランド線(ドリームランドモノレール)
10.3 広島空港連絡鉄道
10.4 海外へのシステム販売
11 歴史
12 参考文献
13 外部リンク
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都心から60km以上離れた成田空港へのアクセスが問題となっていたことが開発のきっかけであった。問題の解決策として、当時の運輸省や国鉄は成田新幹線の導入を考えていたが、日本航空も空港アクセス交通システムを独自に調査・研究を行っていた。日本航空では当時の西ドイツで開発が進んでいた磁気浮上鉄道に注目し、航空機技術と組み合わせれば最適な交通システムが作れると判断。当時の西ドイツのクラウス=マッファイ社から基本技術を導入し、1974年頃から開発が開始された。当時の開発目標として最高時速300kmとした。
基本技術HSSTの構造図。車両とレール側のU字構造の頭頂部同士に働く吸引力で浮上および案内力が生ずる。
浮上・案内には電磁吸引制御式が採用されている。HSSTの特徴でもあるが、1つの機構で浮上力と案内力を兼用して発生させる方式である。軌道側に鉄製の浮上案内レールが下向きに取り付けられており、車両側に取り付けられた電磁石はレールと対向している。この電磁石がレールを吸引する力により浮上力を得る。この方式で安定した浮上力を得るためには、レールと電磁石の間のギャップを常にセンサにより測定し、一定距離を保つように電磁石を制御する必要がある。浮上量は約10mm程度である。
また、レールおよび吸引磁石は車両進行方向に対して共にU字型をしており、レールと吸引磁石のU字の頭が互いに対向するように配置される。このU字部分の頭頂部に一致するように横向きの力が働くが、これが案内力となる。
電磁吸引制御式の特徴として、浮上磁石が鉄レールを引き付ける際に、磁界の影響で鉄レール内にはうず電流が発生する。このうず電流と浮上電磁石との間には車両を制動する方向に力が働く(磁気抗力または磁気抵抗)。これを回避するためには、磁束密度を低くし代わりに広い面積で車体の浮上を支えることが有効である。HSSTではモジュール(後述)構造により車両長さ方向をほぼカバーするように浮上磁石を配置している。
片側式リニア誘導モータ(リニアインダクションモータ)が採用されている。車両側に一次側(電機子)コイルを、軌道側に二次側の金属プレート(リアクションプレート)を持つ構造となっている。この方式では、軌道側にコイルを持つ必要はないが、車両側で電機子の磁極切り替え制御を行う必要がある。また一般にリニアインダクションモータはリニアシンクロナスモータに比べて消費電力の効率が悪いとされている。
またHSSTではリニアモータの駆動装置としては、速度が上がると電圧周波数を一定割合で上げていくVVVF方式が採用されている。
一般の鉄道車両の台車相当の部分をHSSTではモジュールと呼ぶ。一般の鉄道の台車と異なり、HSSTのモジュールは車両のほぼ全長にわたって分散するように配置されている。これは横方向磁束方式とも呼ばれる。モジュールは浮上、案内、推進、ブレーキの機能をまとめたものであり、車体の両側に連続的に配置されている。モジュールには2個の浮上・案内電磁石を1組として2組、リニア誘導モータの一次側が1つ、ギャップセンサなどが内蔵されている。モジュールの左右はアンチ・ロール・ビームで接続されている。
車体とモジュール間には空気バネによりモジュール端の4箇所で接続されており、これにより車体への振動緩和を行っている。