H-IIロケット8号機の失敗の原因となった、液体水素ターボポンプ用インデューサの改良。1号機の物では低速動作時に不安定だったため、形状を変更し、作動領域の拡大・耐久性の向上・旋回キャビテーションの抑制を行った。2号機以降で適用済み。
第1段エンジン(LE-7A)のノズルスカートの長ノズル化
元々H-IIAロケットでは、搭載する衛星・探査機に応じて長ノズル・短ノズルを使い分けての運用を想定していた。より打ち上げ能力が要求される場合には、再生冷却型の上部ノズルにフィルム冷却方式の下部ノズルスカートを追加してエンジンの能力を上げる予定だったが、エンジン始動および停止時に上部と下部との境目で起きる燃焼ガスの流れの乱れ(剥離)のため、過大な横方向の振動がおき、エンジンの向きを変えるためのアクチュエータに大きな負荷が掛かる問題が発生した。 このため、1号機以降のしばらくの間は短ノズルのみで運用を行っていた。8号機以降は、これらの問題を解決するために開発された新たな一体型の完全再生冷却型長ノズルの適用が開始されている。
第2段エンジン(LE-5B)の振動問題
LE-5Bは燃焼時の機軸方向(ロケットの長手方向)の振動が当初の想定より過大であった。原因は、第2段機体の固有振動に起因するLE-5Bエンジンの燃焼圧の変動であるとされている。10号機以降は、第2段推進薬タンクの加圧を若干増加させることで振動を軽減している。より抜本的な対策として、燃焼圧の変動を抑えた改良型LE-5BエンジンLE-5B-2の開発が進められ、14号機から適用されている。
SRB-Aのノズル形状変更と能力回復
元々SRB-Aにおけるノズルの局所エロージョン(侵食)問題は深刻であり、当初からノズルの外周を補強するなどの対策を取っていたが、とうとう6号機でノズルに穴が開き、ロケット打ち上げ失敗の原因となった。 7号機から13号機まではノズル形状をそれまでのコーン型(円錐型)から局所エロージョンの起きにくいベル型(釣鐘型)に変更し、さらに燃焼パターンを変更して燃焼圧を抑える事によって安全を確保していた。 この対策により低下したSRB-Aの能力を回復させるためSRB-A3の開発が行われ、2007年10月に認定型モータの燃焼試験を終えた。14号機に適用されたものは、安全性に余裕を持たせるため、7号機?13号機と同様の厚肉型のノズルになっている。
対策中のもの
第1段エンジン(LE-7A)の液体酸素用ターボポンプの改良
吸い込み性能の向上と、旋回キャビテーションによるインデューサの軸振動抑制のための改良が進められている。
状況H-IIA打上げ (11号機)上昇するH-IIA (11号機)
H-Iロケット以前はアメリカからの技術導入によって打ち上げていた。しかし、純国産技術で作られた H-II、その技術を用いて発展した H-IIA が打ち上げられるまでになった。
H-IIAロケットは、第1段・第2段に液体酸素・液体水素ロケットエンジンを用いている。これは酸素と水素を反応させ、燃焼後に水だけを生成する。このエンジン技術については、アメリカの企業からもデルタIIIの上段用としてLE-5Bの引き合いが来たが、軍事に利用される恐れがあるとの理由から日本政府は許可を出していない。
6号機の事故の原因は、ロケットの両脇にある固体ロケットブースター(SRB-A)のノズルが熱で破損したことである。この失敗から、以降のSRB-Aのノズルはベル型に変更された。しかし、元はロケット開発に十分な開発資金が与えられなかった事がその原因であり、「技術を知らない人間が金を出す」というような役人主導の科学技術政策の弱さが出た結果だとの批判もある(JAXAの予算規模および関連文献1参照)。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、H-IIA 6号機の失敗を受け、SRB-A の改良に着手した。燃焼試験を繰り返して信頼性を確認し、失敗から約1年3ヶ月ぶりの2005年2月26日に7号機を打ち上げた。
打ち上げは無事成功したが、H-IIAロケットへの信頼を取り戻すにためには、今後継続して打ち上げを成功させて実績を積む必要がある。打ち上げ後の記者会見で、井口宇宙開発委員会委員長は「今後13回連続で成功すると成功率95%に達するが、安定したといえるためにはこれくらいの成功率が必要であり、それを目指したい」という考えを示した。
H-IIAロケットの前身であるH-IIロケットは日本で初めての純国産大型液体燃料ロケットであり、H-IIロケットの登場により、それまで米国との契約によって制約されてきた数々の独自事業を行うことができるようになった。当時すでに民間衛星ロケット打ち上げ企業としてヨーロッパのアリアンスペース社がシェアを伸ばしつつあった。日本でもH-IIロケットの開発により同事業への参入が目指され、ロケットシステム(RSC)が設立された。
RSCは衛星打ち上げサービスの受注から打ち上げロケットの製造管理・輸送・射場の安全確保等の打ち上げサービス全般を実施することとして設立された。RSCは試験的にH-IIロケット試験3号機の受注を行うものの、NASDA(当時)によるH-IIロケットの打ち上げが安定したら正式に移管実施される予定であった。1996年にRSCは、衛星メーカーであるヒューズ(現ボーイング)と20機、スペースシステムズロラールと10機の商業衛星打ち上げ仮契約を行ったが、H-IIロケットの打ち上げは8機で終了するため、これらの衛星はH-IIAロケットで打ち上げることになる。こうして、ようやく日本のロケットが商業市場参入を果たしたかに思われた。
しかしH-IIロケット5号機および8号機の連続打ち上げ失敗により、H-IIロケットを即座に廃止し、円高の進展により既に開発中であった低コストなH-IIAに開発リソースを集中する事となった。このためRSCへの正式移管はH-IIAロケットの打ち上げが安定するまでさらに見送られた。信頼を失ったRSCは、2000年にはヒューズから契約解除を通告され、ロラールもH-IIAの開発遅れで打ち上げが間に合わなくなった2機を解約した。2003年にはロラールが倒産し、ついにRSCは全ての商業打ち上げ契約を失った。
RSCによるH-IIAロケットの打ち上げは7号機から行われたが、法律上の制約により打ち上げ作業そのものはJAXAに業務委託した。しかしながら、この頃には国際的な衛星打ち上げ需要が減少しつつあり、また、アリアンスペースだけでなく、中国、ロシアなどがより低価格でのビジネスを展開するようになったため、今後RSCが安定的にビジネスを継続できる見込みがなくなり、RSCはH-IIロケット試験3号機、H-IIAロケット7号機および9号機の打ち上げを履行した後、解散した。
三菱重工(MHI)は以前よりH-IIAの製造を行っているが、2007年の13号機から、打ち上げ作業を含めてH-IIAロケット打ち上げ関連業務のほとんどが民間企業である三菱重工に移管された。また、かつてRSCが行っていたような商業打ち上げの受注活動も、三菱重工が行うことになった。
ロケットの開発も含めて移管されるため、H-IIAで使用される機器や構成についてもある程度三菱重工自身の判断で変更できるようになる。このため三菱重工は今後打ち上げるH-IIAロケットの構成をH2A202とH2A204の二つの形式に絞ると発表している。
また、打ち上げ費用を70?80億円に抑えて商用衛星の打ち上げ市場で受注を獲得するため、従来は打ち上げ費用に含まれていた射場の点検費や修繕費、ロケットの飛行データの提供費などとして、1回当たり20?30億円程の公的負担を、JAXAを通じて国に求めている。
移管後の初めての打ち上げとなる13号機では、以下の点が変更された。
ロケット打ち上げ前の極低温点検の省略
これまでのH-IIAロケットの打ち上げでは、必ず極低温試験が実施されていた。これにより、数億円単位での費用が節約できる。
第1段上部に、三菱重工のスリーダイヤのマークが入る。
これまでは、RSCが打ち上げサービスを行った7号機および9号機はRSCのロゴが、それ以外の機体にはNASDAまたはJAXAのロゴが、SRB-Aの側面に入っていた。13号機のSRB-Aには何もかかれていない。
天候判断を含む打ち上げ作業そのものが、三菱重工によって行われる。