実数は非常に便利な数体系を形成しており、"0.999..." という表記法が実数を意味するものと考えることは根本的には『慣習』である。ウィリアム・ティモシー・ガワーズ (William Timothy Gowers) は Mathematics: A Very Short Introduction において、等式 0.999...=1 を結論することも同様に『慣習』であると述べている。すなわち、「しかしながら、それは決して独裁的な慣習ではない。なぜなら、それを受け入れなければ、一風変わった新しい対象を発明するか、または算数のよく知られた規則のいくつかを諦めるかのどちらかが強制されるからである[31]。」
新しい対象もしくは知られていない規則を用いて上の証明を再び解釈すると、0.999...≠1 であるような仮説の数体系に制限を加えることができる。リッチマンが述べたように、『ある人の証明は、別の人にとっては背理法である。(one man's proof is another man's reductio ad absurdum.)[32]』もし、 0.999... が 1 と異なれば、上の証明で立てられた少なくとも1つの仮定は潰れなければならない。
0.999...=1 のいくつかの証明は、通常の実数がアルキメデス的であること、すなわち、"0でない無限小は存在しない" ことに依存している。 通常の実数に代わるいくつかのものを含むような、数学的に理路整然とした順序の導入された代数構造があるが、それは非アルキメデス的である。例えば、二元数は新しい無限小の要素 ε を含む。これは ε2 = 0 であることを除けば 複素数 における虚数単位 i の類似である。結果として生じる構造は、記号処理系のための微分の理論 (automatic differentiation) で有用である。二元数には辞書式順序を与えることができ、この場合において ε の倍数は非アルキメデス的要素になる[33]。実数に代わる構造を構成するもう一つの方法は、(特殊な例ではあるが)集合論や古典的な理論ではなく、トポス理論やそれに代わる諸論理を用いることである。例えば、『滑らかな無限小解析(smooth infinitesimal analysis)』 では逆元のない無限小が存在する[34]。
超準解析によってたくさんの無限小量(やその逆数)を含んだ体系が得られることはよく知られているが、これによって、普通とは異なり、しかもより直感的と思われる微積分へのアプローチが可能になる[35]。1972年にライトストーン (A.H. Lightstone) は超準解析に基づき、(0, 1) に属する超実数に対して一意的な "超小数展開" を対応させる考え方を展開した。ここで超小数展開とは超自然数で添字づけられた数字の列のことである。この枠組みにおいて、素朴には0.333... に対応する表示を2種類考えることができるが
0.333...;...000... は正確には超小数と見なすことができないが
0.333...;...333... はちょうど1?3と一致する
のでいずれにせよ0.333...と1?3の差は無限小ですらない[36]。
組合せゲーム理論も同様に、とくに関連のある一つの例として "無限二色ハッケンブッシュゲーム (infinite Blue-Red Hackenbush)" をもつ実数の代替構造を与える。1974年に、エルウィン・バールカンプ (Elwyn Berlekamp) はデータ圧縮のアイディアに刺激されて ハッケンブッシュ文字列と実数の2進展開の関係について述べた。例えば、"ハッケンブッシュ文字列 (Hackenbush string)" LRRLRLRL... の値は 0.010101... = 1/3 である。しかしながら、文字列 LRLLL... (0.111...に対応する) の値は 1 に比べてごくわずかだけ小さい。 これらの2数(LRLLL... と 1)の差は 超実数 (surreal number) 1/ω である。これに関連するゲームは LRRRR… すなわち 0.000… である[37]。なお、ω は最初の 無限序数(infinite ordinal) である。
証明が崩されてしまうもう一つのパターンは単に 1 − 0.999… が存在しないのかどうか、という点である。なぜなら、減法は必ずしも可能でないからである。加法の演算をもつが、減法をもたない数学的構造は、可換半群、可換モノイド、半環 (semiring) を包括している。リッチマンは 0.999...<1 となるようにデザインされた、そのような2つの構造を考えた。
まず、リッチマンは負でない decimal number を文字通り小数展開となるように定義する。彼は辞書式順序と加法を定義した。ここでは 0.999... < 1 であることに注意する。なぜなら単に、一の位において 0 < 1 となるからである。しかし、どんな「無限小数」 x に対しても 0.999... + x = 1 + x である。だから、decimal number に特徴的な一つのことは、加法が必ずしも打ち消しあわないということであり、もう一つは 1/3 に対応する decimal number は存在しないということである。乗法を定義すると、decimal number は正値全順序可換半環をなす[38]。
乗法を定義する際、リッチマンはまた、"cut D" と呼ばれる別の構造を定義する。これは小数の切断の集合である。通常この定義は実数を導くが、彼は小数 d に対して、切断(−∞, d ) と "principal cut" (−∞, d ] の両方を許す。その結果、実数たちは小数と「不安定な状態で共存する(living uneasily together with)」ことになる。したがって、再び 0.999... < 1 を得る。"cut D" には正の無限小は存在しないが、"一種の負の無限小" 0− が存在する。0− には小数展開は存在しない。彼は0.999... = 1 + 0− であると結論したが、一方、方程式 "0.999... + x = 1" は解をもたない[39]。
1 − 0.999... は何かと尋ねられると、生徒たちは数 "0.000...1" をしばしば発明する。これが意味を持つか持たないかには関係なく、直観的な到達点は明らかである。すなわち、0.999... の "最後の 9" に 1 を足すことですべての 9 が 0 に変わって上の桁に送られ、一の位に 1 を残す、ということである。他の理由もあって、この考え方は正しくない。なぜなら 0.999... には "最後の9" がないからである[40]。『最後の9』を持つ無限な文字列を探すためには、どこか他のところを見なければならない。The 4-adic integers (black points), including the sequence (3, 33, 333, …) converging to −1. The 10-adic analogue is ...999 = −1.
p-進数は整数論で興味がもたれている実数に代わる数体系である。実数と同様に、p-進数はコーシー列を経由して有理数から作ることができる。ただしこの構成には、0 は 1 よりも p に近く、pn にはもっと近いという、普通と異なった距離を用いる。p-進数は素数 p に対しては体をなし、他の p (10 を含む)に対しては環をなす。したがって、p-進数に計算を実行することができ、無限小は存在しない。
『10-進数』は小数展開の類似であり、左の方へ進んでいく。10-進展開 ...999 はまさに "最後の 9" をもつが、"最初の9" はもたない。一の位に 1 を加えることができるが、すると 0 だけが残されて繰り上がりが続き、その結果 1 + ...999 = ...000 = 0 となる。すなわち、...999 = −1 である[41]。もう一つの誘導の仕方は等比級数を用いる。"...999" の意味をもつ無限等比級数は実数においては収束しないが、10-進数では収束し、よく知られた公式を再び用いることができて[42]
となる。(前述の等比級数と比較せよ。)3番目の誘導方法はある中学1年生によって発明された。その生徒は教師が 0.999...=1 を極限を用いて行った議論に疑いをもったが、上記の 10 を掛ける証明を反対の方向へ用いてみようとした。