0.999...
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1 と 0.999... との距離は、任意に与えられた任意の正の数より小さい(これは上記の数列で定義される閉区間三角不等式を用いて形式的に証明できる)。したがって、この距離は 0 であり、それゆえ 1 と 0.999... は等しい。このことを用いると 例えば 0.333... = 1/3 である理由も説明することができる。

整数や有限小数の場合と異なり、それ以外の表記法は1つの数をいくつかの方法で表すことができる。例えば、分数を用いると、 1/3 = 2/6 となる。 しかしながら、無限小数は一つの数を高々2通りの方法でしか表すことができない。もし、2つの方法があったとすると、そのうちの1つは最後に 9 が無限に続く形であり、もう1つは有限で終わる形である(すなわち、あるところから先は 0 が繰り返す列からなる)。


桁ごとの操作


分数を用いた証明

無限小数が有限小数の必然的な拡張である1つの理由は、無限小数によりすべての分数を表現できることである。筆算を用いると 1/3 のような、整数の単純な割り算が循環小数 0.333... となる。ここで 3 は終わることなく永遠に続く。 この小数を用いて、0.999... = 1 を即座に証明することができる。3と3の積は各桁に 9 を生ずるので、 3 × 0.333...は 0.999... に等しい。一方、3 × 1/3 は 1 である。したがって 0.999...=1 である[1]。この証明の別の形として、1/9 = 0.111... に 9 を掛けることもできる。


代数的な証明

もう一つの証明はもっと簡潔に他の循環小数にも適用できる。十進法で表現された数に 10 を掛けると、数字は変化することなく、小数点が1つ右に移動する。ゆえに 10 × 0.999... は 9.999... に等しく、これはもとの数に比べて 9 大きい。このことを見るために、0.999... を 9.999... から引くときに、引き算が桁ごとに扱えるとみなすと、小数点以下各桁において、その結果は 9?9 すなわち 0 である。ところが、小数点のあとに永遠に続く 0 は数を変化させないので、この差はまさしく 9 である。最後の段階では代数を用いる。問題の小数 0.999... を c と呼ぶ。すると、 10c ? c = 9 であり、これは 9c = 9 と同値である。両辺を 9 で割ることにより、c=1 が得られ、証明が完了する [1]。数式を用いて書くと以下のようになる。

以上2つの証明における桁ごとの操作(つまり...の部分への掛算や引算)は「無限回の手順」をふくむ形式的な操作であり、その正当性は直ちに明らかというわけではない。この方針にたった証明は "小数"と "小数が表す数" の間の基本的な関係をはっきりさせることによって厳密なものにすることができる。有限小数に関しては、この過程は実数の計算法則にのみ依存している。この操作が無限小数にも適用できることを証明するためには、実解析の手法を必要とする。


実解析

0.999... の問題は数学の式の変形・誘導には影響を与えないので、これは実解析の基本的な定理や命題が証明されるまでは考慮しないでおくことができる。この際の1つの目標は、実数を表現するための記法である十進法小数の特性を明確にしておくことにある。(それにより実解析による証明が位どり記数法とどの様に関係しているのかがはっきりする。)これは、『符号、整数部分を形成する任意個数の数字の有限列、小数点、そして小数部分を形成する数字の列』から構成される。 0.999... を議論する目的においては、整数部分は一桁の b0 によって表されているときを考えれば十分である。また、負の数は考えなくてよいので、考察するべき小数展開は

の形である。整数部分と違って、小数部分は有限の桁数に制限されないことが肝心である。これは 位取り記数法であるから、500 における "5" は 50 における "5" の10倍の大きさに寄与する。また、0.05 における "5" は 0.5 における "5" の 1/10 倍の大きさに寄与する。


無限数列と無限級数

おそらく、小数展開の最も一般的な展開の仕方は、小数展開を無限数列の和として定義することである。一般的には

と表される。

ここで0.999... という小数展開に対して無限等比級数に関する有力な収束定理 [2] ならば

を適用することが可能である。

0.999... はこの和において公比を としたものであるから、この定理により

と簡単に問題を解決することができる。この(実際には 10=9.999... の)証明は早くも 1770 年のレオンハルト・オイラーによるElements of Algebra[3]において見られる。Limits: The unit interval, including the base-4 decimal sequence (.3, .33, .333, …) converging to 1.

等比数列の和の公式それ自身はオイラー以前の成果である。代表的な18世紀の導出法においては上記の証明と同じような項ごとの操作を用いていた。1811年になってやっと、Bonnycastle の教科書 An Introduction to Algebra では等比級数に関するこのような議論が 0.999... と同様の「巧妙な操作」を正当化するために用いられている[4]。 このような寛大な求和法に対抗した19世紀の反動により「無限数列の和はその部分和の極限として定義される」という、現在においても支配的な定義が生み出された。この定理に相当する証明ではこの数列を系統だてて計算しており、それは証明に基づいた微積分学や解析学の入門書に見られる[5]

数列 {x0, x1, x2, …} は n が増加するにしたがって距離 | x ? xn | が 0 に近づくとき極限 x をもつ。 等式 0.999...=1 自身は以下のように極限として表すことにより証明される。[6]

最後のステップ ( lim 1/10n = 0 ) は、実数が アルキメデス性 (Archimedean property) をもつという公理を用いて説明される。また、極限に基づく 0.999... に対するこの姿勢は、幾分わかりやすいがいくらか不正確な言葉を用いて説明されることがある。例えば、1846年の教科書 The University Arithmetic は「0.999...と無限に続く数は1である。なぜなら 9 を積み重ねるたびにその値は 1 に近づくからである」と説明しており、1895年の Arithmetic for Schools は「9 を十分多く用いれば、1 と 0.999... の距離は驚くほど小さい値である」と説明している[7]。 このような発見的指導法においては、生徒に「0.999...それ自身は 1 より小さい」という印象をもたせがちである。詳しくは 後述


区間縮小法と上限Nested intervals: in base 3, 1 = 1.000… = 0.222…

前述の級数による定義は小数展開によって実数を定義する簡単な方法である。もう一つのアプローチは逆の手順をたどるものである。すなわち、先に実数を与え、その実数を表す小数展開を定義する方法である。

実数 x が 閉区間 [0, 10] (すなわち 0 以上 10 以下)に属することが知られているとする。ここでこの区間を、端点のみで重なる 10 個の区間 [0, 1], [1, 2], [2, 3], ... , [9, 10] に分割する。実数 x はこのうちの少なくとも1つの区間に属する。例えば、それが区間 [2, 3] に属するときには、数字 "2" を記録することにする。さらにこれを [2, 2.1], [2.1, 2.2], …, [2.8, 2.9], [2.9, 3] なる区間に分割する。この操作を繰り返すと b0, b1, b2, b3, … という無限数列により名づけられた縮小区間が生じ、x = b0.b1b2b3…

と記録される。

この表現形式に従えば、実数 1 は区間 [0, 1] と区間 [1, 2] のいずれにも属し、数字を選ぶときにどちらの区間を選ぶこともできるので、1=1.000... と 1=0.999... の2通りの表現が得られることになる。この表現形式が記号 "=" の濫用でないことを保証するためには、それぞれの小数に対し唯一の実数を構成しなおす方法が必要になる。このことは極限を用いてなされるが、順序の議論を続ける別の構成方法もある[8]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki