高温超伝導体は国際電気標準会議(IEC)の国際規定 IEC60050-815(2000)と日本工業規格 JISh7005(1999)により定義されており、「一般的に約25K以上の臨界温度(Tc)を持つ超伝導体」とある。しかし、転移温度が90Kを超えるものが一般的になった今では液体窒素温度(-195.8℃、77K)以上で転移するものを高温超伝導体と呼ぶことが多い。
YBa2Cu3O7-δ (Tc?93K)やBi2Sr2Ca2Cu3O10 (Tc?109K)といった銅酸化物高温超伝導体は全て、ペロブスカイト構造を基礎とした結晶構造をしている。
これら銅酸化物高温超伝導体の構造には以下のような特徴がある。
2次元正方格子CuO2面がシート状に広がっている。
多くの物質では、このシートの上下にはランタノイド等による電気伝導をブロックする層があり、CuO2面とブロック層が交互に積層する構造をとっている。ブロック層が存在しない無限層と呼ばれるものもある。
これらの超伝導体は、構成する元素の頭文字をとって呼ばれることが多い。たとえばYBa2Cu3O7-δはYBCOと呼ばれ、Bi2Sr2Ca2Cu3O10はBSCCO(ビスコ)と呼ばれる。 一方、構成元素の物質量比(モル比)で呼ぶこともある。たとえばYBa2Cu3O7-δはY123、Bi2Sr2Ca2Cu3O10はBi2223などである。
高温超伝導体にはキャリアがホールであるものと、電子のものの2種類がある。前者をホールドープ型、またはp型と呼ばれ、後者は電子ドープ型、またはn型と呼ばれる。
ホールドープ型の高温超伝導体はホール濃度と温度により、右図のような状態をとる。ホール濃度がゼロのとき、反強磁性となり、ドープをすると反強磁性が消え、擬ギャップと呼ばれる状態になる。さらにドープすると超伝導になる。 ドープを増やすと超伝導転移温度は上昇する。この領域をアンダードープ領域と呼ぶ。 さらにドープすると転移温度はさがる。この領域をオーバードープ領域と呼ぶ。 これ以上ドープすると超伝導は消え金属的になる。
高温超伝導においても従来型の超伝導と同様にクーパー対が形成されていることがわかっている。従来型超伝導では、BCS理論により、フォノンを媒介とするクーパー対の形成機構が解明されているのに対し、高温超伝導におけるクーパー対の形成機構に関しては、完全なコンセンサスは得られていない。 高温超伝導体の発見後すぐに行われた同位体効果実験から、高温超伝導機構はフォノン機構では説明できないとされている。 膨大な実験的・理論的な研究により、高温超伝導物質中のCuO22次元面内の電子系における、反強磁性的なスピンの揺らぎを媒介にしたクーパー対形成機構で、高温超伝導のメカニズムを理解できるという立場が主流となっている。 しかし酸素の同位体置換により超伝導電子密度が変化するという報告もあり、フォノンも何らかの寄与をしているものと考えられている。
YBa2Cu3O7-δの発見で転移温度が液体窒素温度を越えてから、高価な液体ヘリウムにかわって安価な液体窒素を使えることから実用への期待が高まった。しかし加工が難しいことや臨界電流密度を高めるのが難しいことから応用はなかなか進んでいない。応用としては送電線、高周波通信用超伝導フィルター、SQUID、磁界検出器、ジェイアール式マグレブ、米海軍の艦船推進用モーターなど。
脚注^ Katharine Sanderson, "Superconductivity research is down but not out", Nature 443, 376-377 (2006). DOI: ⇒10.1038/443376b
^ 村松 秀, 『論文捏造』, 中公新書ラクレ, 中央公論新社、2006年9月. ISBN 978-4121502261
関連項目
超伝導 - 室温超伝導
イットリウム系超伝導体
強相関電子系
結晶構造 - 立方晶 - ペロブスカイト構造
外部リンク
超電導関連用語(JIS)
⇒高温超伝導ケーブルによる送電の実用化実験、アメリカ合衆国
⇒Superconductivity in everyday life: Interactive exhibition
⇒コーネル大学での高温超伝導研究
⇒超伝導の科学と技術
⇒高温超電導体の上で磁石が浮上するビデオ - YouTube
⇒高温超伝導技術
カテゴリ: 超伝導
更新日時:2008年9月10日(水)16:23
取得日時:2008/10/12 16:00