中華人民共和国内とは異なり、『香港特別行政区基本法』に基づき、英米法(コモン・ロー)体系が施行されている。基本法の規定により、中華人民共和国内の法律は「別段の定め」がない限り香港では施行されない。よって、基本法の解釈問題以外の法体系はイギリス領時代と全く同一である。したがって、死刑制度も存在しない。
さらに、返還によりイギリス領ではなくなったためにロンドンに終審法廷を求めることはできなくなった。そのために1997年7月の返還と同時に裁判も原則として、香港域内で完結する必要性が生じた。そのため、返還後、最高裁判所に相当する終審法院が設置された。この時点で新たに設置の終審法院の判事のために5名以上のベテラン裁判官がイギリスから招聘された。返還後の司法体制のために旧宗主国から高官にあたるイギリス人の人材を新たに招くという「珍事」は中華人民共和国が英米法を厳格に適用するための人材について不足していることを率直に認めたことを現しており、意外な「柔軟性」あるいは「現実適応性」を持つ面を確認する事象であったといえる。
終審法院の下には高等法院(高裁)、区域法院(地裁)、裁判法院(刑事裁判所)などがある。裁判は三審制である。ただし、基本法の「中央に関する規定」および「中央と香港の関係にかかわる規定」につき、条文の解釈が判決に影響を及ぼす場合、終審法院が判決を下す前に全人代常務委員会に該当条文の解釈を求めることとされる。(香港司法機構を参照。)
詳細は香港の対外関係を参照
香港特別行政区は、基本法の定めにより、経済社会分野の条約を締結したり、国際会議や国際機構に参加することができる。しかし、外交は中央政府の権限である。そのため、外交部駐香港特派員公署が設置され、香港の外交事務を管轄している。
ただし、香港政府も独自の在外駐在機関を設けている。国外の香港経済貿易弁事処は工商及科技局下の工業貿易署が形式上管轄する。中華人民共和国本土にある駐広東香港経済貿易弁事処と香港特別行政區政府駐北京?事處は、政制事務局が管轄している。しかし、前者も実際には、工商及科技局の本来業務の枠を超えた活動をしている。そのため、政制事務局が実質的に香港の対外事務を扱っていると考えられる。
香港域内でも、香港政府に外交権限がないことの不利益が次第に認識されている。香港特別行政區政府駐北京?事處も以前は政務司長(政務長官)の管轄であったが、2005年の行政長官施政方針において対中央(中華人民共和国本土)政策を政制事務局に集中することが打ち出され、現在のようになった。
なお、中華人民共和国と対立している中華民国の航空会社や船舶の香港への乗り入れや、同国民の香港への渡航条件は返還、譲渡前と変わらない。
返還前はイギリス軍が昂船洲(ストーンカッタース)や赤柱(スタンレー)などの基地に正規兵のほかにグルカ兵などの傭兵を含む海軍、陸軍部隊(駐香港イギリス軍)を駐留させていた。同司令官は香港総督の下に位置した。
返還後にはイギリス軍に替わり人民解放軍駐香港部隊が駐留している。人民解放軍駐香港部隊の司令部は、返還前まではイギリス軍の司令部が置かれていたセントラルのプリンス・オブ・ウェールズ・ビル(現在は「中国人民解放軍駐香港部隊大厦」)にある。人民解放軍駐香港部隊司令官は、中央軍事委員会および国務院国防部の下にある。香港行政長官には部隊への指揮権がない。
基本法の規定により、イギリスやイギリスの同盟国であるオーストラリアやアメリカを含む外国艦艇の休暇上陸(レスト&レクリエーション)を含む寄港は返還後も中央政府の同意を経て可能とされている。ただし、中央政府の意向により寄港が許可されないケースもある。
その成立背景から、規制が少なく低税率な自由経済を特徴とする。食料や日用品などの対外依存度が高い。もともとイギリスの対中国貿易の拠点であったことから中継貿易が盛んであった。第二次世界大戦後の1949年に中国共産党率いる中華人民共和国が成立すると、中国大陸本土からの移民が押し寄せた。そのため、安い労働力を活用した繊維産業やプラスティック加工を中心とする製造業へ産業構造を転換した。
1970年代からは、香港政庁が新界の住宅団地開発や地下鉄建設などインフラ建設を開始し(詳細は積極的不介入を参照)し、香港経済は急速な発展を遂げる。そして、1970年代後半になると労働コストの上昇や工業用地不足などの問題にも直面し始めた。
しかし、中華人民共和国の改革開放を受け、1980年代、従来の製造業は広東省の深?市や東莞市を初めとする珠江デルタへと移転した。こうして香港は、中華人民共和国を後背地とする金融センター・物流基地へ転換した。
1997年の返還後も中華人民共和国本土への依存は深まり、2003年には中国本土・香港経済連携緊密化取決めの第一段(CEPA?)が中華人民共和国本土と香港の間で調印され、その後も補充協議が実施・締結されている。さらに広東省のイニシアティブによる汎珠江デルタ協力(9+2協力)にも参加している。
なお、イギリス時代から高度に整備された民法と税制上の優遇措置、高い教育程度と豊富な英語人口などから、オフィスや住宅の家賃がアジア地域のみならず世界でも最も高いとされる。にもかかわらず、多くの欧米企業は中華人民共和国や日本を含む東アジア全域またはアジア全域を管轄する地域統括本部を香港に設けることが多い。
香港のGDPの80%をサービス産業が占める。また観光産業がGDPの約5%を占める他、古くから映画産業が盛んである。香港経済界の代表的人物は長江集団を率いる李嘉誠である。
香港の企業一覧も参照
電力や通信などのインフラストラクチャーから建設や運輸、金融や流通、サービス業やマスコミまで、様々な業種の大企業が揃っており、東南アジア圏内や中華人民共和国、日本へ進出している企業も多い。