雨氷が降った後、気温が上昇するなどして氷が融けてしまえば大きな被害は発生しない。アメリカでは、発生する雨氷の99%が2時間以内で終わってしまうとされており、雨氷が止んだ後はたいてい南から暖かい空気が押し寄せてきて雨氷が溶けてしまう[18]。しかし、融けずに長時間固まったままであれば、さらに雨氷や雪が積もって厚くなり、大きな被害をもたらす。
類似の被害をもたらす現象と比較した雨氷による被害の特徴として、その性質の違いによるものが挙げられる。新雪、押しつぶされた雪、霜、霧氷、雪や霜が融けた後に再凍結した氷などと比較しても、雨氷は気泡が少なく密度が高い(比重は約0.9[2]で、同0.9168[19]の純粋な氷とほぼ同じ)。そのため、熱伝導率も高く、冷却効果が比較的高い。また、比較的頑丈で、割って取り除くのは難しい。
雨氷は高山で発生することが多いため、山地で局地的に雨氷が発生し、樹木への被害をもたらす例が多数報告されている。雨氷が樹木にもたらす被害は、枝のみが折れる軽微なものもあるが、傾いたり、大きく曲がったり、地面に倒れこんだり、根ごと倒れたり、途中でごと折れたりといった深刻なものもあり、林業にとっては大きな打撃となる[2]。
雪が樹木の上部や外部にのみ付着するのに対し、雨氷は樹木の枝葉1つ1つに氷がついて重くなるため、雪の半分程度の降水量で折れ曲がったり倒壊してしまう。ある調査では、樹木に付着する雨氷の重さは、平均で木の総重量の5〜16倍に達していたといい[2]、15mの木に総重量4.5トンの雨氷が付着した例もある[20]。木の重さの雨氷により樹木が倒壊すると、土壌がむき出しとなり土砂災害を起こしやすくなるため、二次災害を誘発する。
市街で発生した場合は、特に被害が大きくなる。雨氷はあらゆる物にくっついて凍るため、外気に触れている構造物のほとんどに硬い氷が付着し、どんどんと成長していく。また、氷が付着した物は、重みを増した上に氷により表面積が増えているため、強風に弱くなる。北米では、冬に多く見られる、雨氷を伴った天候を ⇒ice storm(アイスストーム)と言う[3]。
送電線に付着した氷の重みで電柱が倒壊し、氷の量が多い場合には送電線の鉄塔でさえ倒れることもある。鉄道の架線に付着した場合は、給電がストップして運行ができなくなるが、雨氷を取り除く作業にも時間がかかり、運行再開は遅れがちになる[21]。また、電線の一定の方向にだけ雨氷が付着すると、強風によりギャロッピング現象と呼ばれる振動現象を起こし、電線同士が接触するなどしてショートし、断線することがある[22]。
雨氷が道路を覆うと、表面は硬く滑らかなため非常に滑りやすい状態となり、車はスリップし、歩行者も転倒しやすくなる。雨氷に覆われた道路の制動距離は、乾いている場合の10倍、雪に覆われている場合の2倍といわれている[20]。雨氷は表面が滑らかで透明なため、道路が雨氷に覆われていることに気付きにくく、そのために誤って怪我をしてしまうことが多い[13]。また、鉄道の線路や飛行場の滑走路も凍結した場合、交通網の深刻な停滞・麻痺を来たす。
また、特に雨氷の場合に留意しなければならないのが、停電に伴う影響である。雨氷は電線に付着して停電を起こしやすいため、ガスや電気の代わりとして暖房に火を使うことになる。それによって火災の危険性が高まり、締め切った室内で暖房器具や発電機を使うことで一酸化炭素中毒の危険性も高まる。実際、1998年1月上旬に北米を襲ったアイスストームでは、多数の一酸化炭素中毒患者が出ている[23]。
雨氷に前後して強い寒波が訪れ、低温が長期間続くと、これに水道管の凍結などが加わり、ライフラインがほぼ全て停止するほどの大きな影響が出ることがある。氷が融けない状態が続けば、被害は長期化する。
地上に限らず、上空でも雨氷は発生する。航空機などは、雨氷が付着すると視界が悪くなったり、機体の重みが増したりすることで、航行に支障が生じることがある[8]。ただ、雨氷だけではなく、その他の着氷も航行への支障の原因となる。
雨氷と景観花や葉の表面を覆う氷小型のリンゴ(crab apple)に付着した雨氷
雨氷が物体に付着すると、独特の景観がもたらされる。木々に付着した雨氷は、透明な氷の層を形成し、光が当たるとガラスのように光り輝く。また、山の斜面に帯状の雨氷ができ、それが白く輝いて見えることがある。これらは観光や自然観賞の対象となり、寒い時期に見られる美しい景観として親しまれている。廬山や黄山をはじめとして、山でよく見られる景観として捉えられている地域もあれば[24]、平野部の居住地でも身近に見ることができる景観として捉えられている地域もある。
雨氷を見ることができる地域では、雨氷がもたらす美しい景観やその情緒が、さまざまな形で芸術に表現されている。雨氷をテーマとした文化作品や芸術作品を以下に挙げる。
『雨氷の朝』(詩) - 尾崎喜八 『自註富士見高原詩集』、1969年、日本
『Freezing rain』(歌) - m.o.v.e アルバム『Deep Calm』、2004年、日本
『Freezing Rain Freezin'』(歌) - トロイ・グレゴリー( ⇒Troy Gregory)、2002年、アメリカ
北米やヨーロッパでは、冬を中心に、低気圧の通過時に平野部でも雨氷が発生することがある。以下に顕著な被害を出した例を挙げる。
1994年10月31日 - アメリカ インディアナ州上空を飛行中のアメリカン・イーグル4184便が雨氷に遭遇し、着氷により操縦不能に。