雨氷の大きな特徴として、物体に付着して次々と積もり、厚く硬い氷として成長していくことが挙げられる。液体として大気中を落下してきた過冷却の雨氷が、屋根のように物体の空に向いた面に触れると、物体に触れた面から凍結が始まり、まだ液体のままの部分は凍結した部分の周囲に広がりながら凍結していく。壁のように地面に対して横を向いた面に触れると、下に向かって滴りながら凍結する。電線のように筒状で地面と平行な物体に触れると、滴りながら凍結してつららのような氷をつくる。地面に積もる量としては、極度に激しい雨氷の場合、最大でおよそ4?6インチ(10?15センチメートル)程度の厚さになる[13]。
雨氷は、集中豪雨などと同じように、現象が起こる範囲が狭い、いわゆる局地現象である。気温わずか10℃程度の変化で雨から雨氷、凍雨、雪へと変わるほど発生の条件が限られており、そういった気象状態は幅およそ50kmまでの範囲にしか発生しない。
雨氷の予測に適しているのが、気温の鉛直分布を調べることである。雨氷の場合は、逆転層の構造となり、かつ地面付近に分布する気温0℃以下の部分が狭く、その上の0℃以上の部分が広いことが特徴である。また、風向や風速の鉛直分布を調べることもよいとされる。これらは気象レーダーの観測によって調べられる。[14][15]
アメリカでは、雨氷または着氷性霧雨によって道路等の凍結で交通状況が悪くなることが予想される場合に「Winter Weather Advisory」、雨氷が1/4インチ(約6.3mm)以上積もることが予想される場合に「Ice Storm Warning」が、アメリカ海洋大気圏局(NOAA)の気象業務部(NWS)によってそれぞれ発令され、警戒が呼びかけられる[16]。カナダでは、7時間以上着氷性霧雨が降り続くことが予想される場合や大量の着氷性霧雨が降ることが予想される場合は「Special Weather Statement」に付随する注意情報または「Freezing Drizzle Warning」が、1?4時間以上雨氷が降り続くことが予想される場合や2mm以上雨氷が降り積もることが予想される場合は「Freezing Rain Warning」が、カナダ環境省の気象庁(MSC)によってそれぞれ発令される[17]。
雨氷による災害雨氷の重さで傾いた電柱、20世紀初頭のカナダ・オンタリオ州にて激しい雨氷により厚い氷が付着したベンチ、レマン湖畔
雨氷が降った後、気温が上昇するなどして氷が融けてしまえば大きな被害は発生しない。アメリカでは、発生する雨氷の99%が2時間以内で終わってしまうとされており、雨氷が止んだ後はたいてい南から暖かい空気が押し寄せてきて雨氷が溶けてしまう[18]。しかし、融けずに長時間固まったままであれば、さらに雨氷や雪が積もって厚くなり、大きな被害をもたらす。
類似の被害をもたらす現象と比較した雨氷による被害の特徴として、その性質の違いによるものが挙げられる。新雪、押しつぶされた雪、霜、霧氷、雪や霜が融けた後に再凍結した氷などと比較しても、雨氷は気泡が少なく密度が高い(比重は約0.9[2]で、同0.9168[19]の純粋な氷とほぼ同じ)。そのため、熱伝導率も高く、冷却効果が比較的高い。また、比較的頑丈で、割って取り除くのは難しい。
雨氷は高山で発生することが多いため、山地で局地的に雨氷が発生し、樹木への被害をもたらす例が多数報告されている。雨氷が樹木にもたらす被害は、枝のみが折れる軽微なものもあるが、傾いたり、大きく曲がったり、地面に倒れこんだり、根ごと倒れたり、途中でごと折れたりといった深刻なものもあり、林業にとっては大きな打撃となる[2]。
雪が樹木の上部や外部にのみ付着するのに対し、雨氷は樹木の枝葉1つ1つに氷がついて重くなるため、雪の半分程度の降水量で折れ曲がったり倒壊してしまう。ある調査では、樹木に付着する雨氷の重さは、平均で木の総重量の5?16倍に達していたといい[2]、15mの木に総重量4.5トンの雨氷が付着した例もある[20]。木の重さの雨氷により樹木が倒壊すると、土壌がむき出しとなり土砂災害を起こしやすくなるため、二次災害を誘発する。
市街で発生した場合は、特に被害が大きくなる。雨氷はあらゆる物にくっついて凍るため、外気に触れている構造物のほとんどに硬い氷が付着し、どんどんと成長していく。また、氷が付着した物は、重みを増した上に氷により表面積が増えているため、強風に弱くなる。北米では、冬に多く見られる、雨氷を伴った天候を ⇒ice storm(アイスストーム)と言う[3]。
送電線に付着した氷の重みで電柱が倒壊し、氷の量が多い場合には送電線の鉄塔でさえ倒れることもある。鉄道の架線に付着した場合は、給電がストップして運行ができなくなるが、雨氷を取り除く作業にも時間がかかり、運行再開は遅れがちになる[21]。また、電線の一定の方向にだけ雨氷が付着すると、強風によりギャロッピング現象と呼ばれる振動現象を起こし、電線同士が接触するなどしてショートし、断線することがある[22]。
雨氷が道路を覆うと、表面は硬く滑らかなため非常に滑りやすい状態となり、車はスリップし、歩行者も転倒しやすくなる。雨氷に覆われた道路の制動距離は、乾いている場合の10倍、雪に覆われている場合の2倍といわれている[20]。雨氷は表面が滑らかで透明なため、道路が雨氷に覆われていることに気付きにくく、そのために誤って怪我をしてしまうことが多い[13]。また、鉄道の線路や飛行場の滑走路も凍結した場合、交通網の深刻な停滞・麻痺を来たす。
また、特に雨氷の場合に留意しなければならないのが、停電に伴う影響である。雨氷は電線に付着して停電を起こしやすいため、ガスや電気の代わりとして暖房に火を使うことになる。それによって火災の危険性が高まり、締め切った室内で暖房器具や発電機を使うことで一酸化炭素中毒の危険性も高まる。実際、1998年1月上旬に北米を襲ったアイスストームでは、多数の一酸化炭素中毒患者が出ている[23]。
雨氷に前後して強い寒波が訪れ、低温が長期間続くと、これに水道管の凍結などが加わり、ライフラインがほぼ全て停止するほどの大きな影響が出ることがある。