隷書体の主な筆跡には以下のものがある。
乙瑛碑(いつえいひ、八分隷)の全名は『魯相乙瑛置孔廟百石卒史碑(ろしょういつえいちこうびょうひゃくせきそつしひ)』などという。建碑は永興元年(153年)。山東省曲阜の孔子廟に現存する。碑文は、全18行、各行40字で、内容は、桓帝のとき、魯国の相であった乙瑛の申請によって魯の孔子廟に百石の卒史(そつし、漢代の書記の官名)を置いて廟を守らせることになった次第およびその関係者の功績を記したものである。結体(けったい、字形)は緊密で謹厳、筆力は雄健で波磔は力強く、漢代の隷書の中でも優れた碑である。
曹全碑(そうぜんひ、八分隷)の全名は『?陽令曹全碑(こうようれいそうぜんひ)』という。建碑は中平2年(185年)。明の隆慶から萬暦の間に陝西省?陽県の旧城から出土した。碑額は出土の時からないが碑文はほぼ完全に残っており、全20行で初行から19行は各行45字、末行に「中平二年十月丙辰造」の9字で建碑の年月日(185年10月21日)が明記されている。碑陰の文字はやや小さく、建立関係者の名が5列57行で列挙されている。現在は西安碑林にある。
碑は曹全(字は景完)の治績を記した頌徳碑である。曹全は敦煌の人で、光和7年(184年)?陽令となり、黄巾の乱を収拾した功績により建碑された。数多い漢碑の代表的名品であり、完成された八分の技法を示すものである。他の碑と比較して女性的とする評が多い。石質が堅牢で文字が非常に鮮明であり、出土以後拓本によって多くの書人に学ばれている。天保年間に日本へ伝えられた。
特記事項
隷書の代表的な辞典として『隷辨』(れいべん)、顧藹吉(こあいきつ)撰、1718年刊がある。漢碑に見える隷書のさまざまな字体を集めて韻目順に配列し、解説を加えたものである。
現在の日本では、紙幣の額面で隷書体が用いられている。
参考文献
西林昭一『書の文化史〈上〉』二玄社、1991年(ISBN 4544010594)
伏見冲敬『書の歴史 中国篇』二玄社、1960年(ISBN 4544010004)
外部リンク
⇒インターネット書道協会「書道の歴史」
カテゴリ: 漢字書体 | 秦漢
更新日時:2008年10月7日(火)09:58
取得日時:2008/10/08 20:21