世界中のほとんどの社会では、社会の発展に伴う貧富の差や権力の分化により、歴史的に何らかの階級(階層)制度が存在してきた。戦前までの日本においても、法律によって認められた階級(階層)制度があったし、現在も社会的な慣習や、経済的な格差などに起因する階層意識は存在する。
社会的な階級のほとんどは、人の出自した人種や門地、所属する宗教や信奉する思想など、様々な指標に基づいて振り分けられるもので、他者に認められることによって成立する。歴史的にみれば、階級は、生まれや家柄によって固定され、一生涯の間には大きく変動することが少ないものが多かったが、現代の社会では一代の社会に対する貢献や、比較的自由に行われるようになった階級をまたぐ婚姻、改宗などによって変動しうるものである。
また、近代以降、資産による階級格差は世界的な資本主義経済の発展の中で拡大を続けてきたが、経済の発展は同時に、貴族のような歴史的な階級であっても資産の裏付けがなくしては優位の階級としての地位を保てず、新たに企業家や、高級官僚のような新興階級に交代してきた。近代の社会では、経済界や官界において高位を得るには出自のみならず高い教育を受けることが望まれるようになり、世襲の財産や地位それ自体よりも、高い教育を施す資力を持つという意味において、資産階級の実質的世襲が実現しているとの指摘もある(階層再生産論)。
階級による区別・差別は、主に次のとおり分けられる。これらは、法律により定められている場合と、社会に受け入れられた慣習としてに行われているものに分けることができる。
社会的な名望(名士としての扱い)
社会の中で受ける待遇(権利、権限や、各種の待遇の差)
社会に対する威信、信用(投資、結婚、就職などの局面における優遇または差別的扱い)
職業上得られ、職階に基づいて受ける階級的な扱いは、本来は職業、職務に基づき、職業、職務の範囲の中でしか認められないものであるが、実際には(1)のような名望を伴い、さらには(3)のような威信さえも伴う階層上の特典となることもある。
世界的に見て、(2)による区別・差別は職階に起因する待遇・権限上の格差を除いて撤廃される傾向があるが、(1)については名誉に伴うものとして歓迎されることが多く、また(3)は根強く残る傾向にある。もっとも(1)については、従来は世襲によって継承されるものであったが、現在は世襲されないことがかえって好ましいと考えられることもある。
イギリスは歴史的に階級社会であるとされる。
地主・貴族を中心とする上流階級、実業家・専門職などの中流階級、そしていわゆる労働者階級に大別されるが、個々の階級内においても上層・下層の区別が存在すると言われる。
王室と世襲貴族を頂点に、爵位に基づく称号と栄典上の階級が大規模に存続しているのもイギリスの大きな特徴である。歴史的には上流階級の代表者であった世襲貴族は、特権が撤廃されつつあるが、社会の様々な分野で活躍・貢献した者は一代貴族や勲爵士として叙せられ、社会的な名誉を与えられる。勲爵士の称号は国外では単なるイギリス王室から与えられた勲章に過ぎないが、イギリス国内では「Sir」の称号など、ある程度の特権を受ける事ができる。
一方で、イギリスにおける階級は、世襲大貴族の階級的権威が彼らがもつ広大な荘園などの世襲財産とそれに基づいた生活習慣にあったように、文化、職業、生活スタイル、そして本人と周囲による認識によって規定されるものである。従って、叙勲を受けたからといって上流階級の一員とみなされないのが普通である。さらに現在では階級は必ずしも経済力を反映してはいない現状があり、特に下層上流と上層中流、下層中流と上層労働者において、しばしば経済状態の逆転が見られる。
ドイツは、マイスター制に示されるように、職業により階層と職階が分けられている。
かつて、それらの階層間での差別は少なく、かえって他の階層を尊敬する風潮もみられていた。これらの階層は、学校もカリキュラムも別々であったが、教育の共通化が計られるようになると、日本のような学校の序列が出来上がり、これが職業階層の差別と繋がるような風潮も出て来てはいる。
なお、階層の直接世襲は無いものの、移動は少なくかなり固定されている。また、旧東西ドイツが統一した後、その経済力の差により旧東西ドイツ国民の間での新たな階層が生まれることとなった。更には、単純作業者として国外の労働者を招き入れた結果、これが新たな階層と化している。
インドでは、法律上すでに階級は存在しないが、四大文明当時からの、一般にカースト制として知られる独自の身分制度が存在している。
カーストはバラモン・クシャトリア・ヴァイシャ・シュードラの四身分に大別されるといわれるが、実際には、各身分内においても世襲職業などに応じて無数の区分が行われている。さらに、四身分に含まれる事すら許されない不可触民(アンタッチャブル)が存在している。これらの身分制度は宗教・生活と不可分に結びついており、インド全体の近代化において大きな妨げと指摘されるところであるが、インド人の間に現在も強く根付いており、問題視しない人も多いとされる。
タイは、爵位制度が存在する社会である。ラーチャウォン(王族)と呼ばれる人々がこの爵位制度によって階級分けされており、全部で5つ存在する。ラーチャウォンと呼ばれる人々には階級に応じて年金などの特権が存在する一方で、階級によっては政治関与などに制約がかかっている場合もある。(詳しくはラーチャウォンを参照。)
一方、アユタヤ王朝時代に作られたクンナーンと呼ばれる官僚にはバンダーサックと呼ばれる階級が存在した。バンダーサックは元々貸し与えられる耕作面積に応じて階級分けがなされたが、チャクリー王朝期には徐々に名誉的な階級に変化し、その人がどれだけ有力かと言うことを示す階級となった。これは、立憲革命時に新たなバンダーサックの下賜は廃止されたが、国王に剥奪されない限り名乗ることができたため、20世紀中期まで、バンダーサックを有する官僚らが活躍した。仮にバンダーサックを立憲革命以前に下賜された人が居たとして現に生存している場合、そのバンダーサックは公式にも使われるため、見方によっては現存の階級制度と見なすこともできる。
また警察や軍隊も階級(大将、軍曹など)を保持しており、公式な場では必ずこの階級が利用される。これを保持している場合、平民の敬称であるナーイ、ナーンなどは使われない。これは一度保有すると昇級や剥奪されない限りそのまま使い続けることができ、退職してもそのまま使い続ける事ができる。たとえば過去のタイの総理大臣であるプレーク・ピブーンソンクラームは元帥から退いた後も元帥の階級を保持しており、現在でも元帥という階級と共に呼ばれる。
アメリカ南部州では、かつては人種差別が立法されていた。60年代の公民権運動以来、差別法は廃止となっていった。一方、資産による区別は激しくなる傾向にあり、資産階級は犯罪時の対応や住宅街へ通じる道路の補修といった形での様々な恩恵を受けることもある。