以前は「証券取引法」という名称であったが、2006年3月に「証券取引法等の一部を改正する法律」が国会に提出され、同年6月に成立したことにより、金融先物取引法などの金融商品に関する法律群をこの法律に統合し、それに伴い、名称が「金融商品取引法」に改題されることが決定し、2007年9月30日に施行された。
この改正は、
投資性の強い金融商品を幅広く対象とする横断的な制度の整備
公開買付に関する開示制度や大量保有報告制度の整備
四半期報告制度の導入
財務報告に係る内部統制の強化等に関する制度の整備
開示書類の虚偽記載及び不公正取引(インサイダー取引)の罰則強化
などを主内容としている。
日本では90年代後半から日本版ビッグバンに代表される金融システムの改革・再編に関する議論が盛んであり、今回の金融商品取引法の制定もその流れの延長線上に位置付けられる。
日本の証券取引法の母法であるアメリカの証券法における「証券」概念はそもそも幅広い対象を予定するものであった。またその他の諸国においても、イギリスでは2000年金融サービス・市場法(FSMA)において定義された「投資物件」概念、ドイツの2004年証券取引法改正、EUで2004年4月に採択された金融商品市場指令(Mi-FID)において導入された「金融商品」概念など、各投資商品(金融商品)について横断的な規制を及ぼす方向に移行しつつあり、国際的な金融市場の整備という点からも同様の横断的な規制を及ぼす必要が生じていた。
従来の証券取引法で用いられていた語句のうち、「証券」との語が付く用語は、原則として「金融商品」が付く語に置き換えられている。このため、金融商品取引法においては、いくつかの章のタイトルも変更されている。
以下の章は、章名が従来どおりである。
第1章,第2章,第2章の2,第2章の3,第4章の2,第5章の4,第6章,第6章の2,第7章,第8章,第9章,附則
以下の章は、章名が変更される。
第3章は「金融商品取引業者等」に、第3章の2は「金融商品仲介業者」に、第4章は「金融商品取引業協会」に、第5章は「金融商品取引所」に、第5章の2は「外国金融商品取引所」に、第5章3は「金融商品取引清算機関等」になる。
なお、以前の証券取引所、証券会社は、法律上の用語としては、「金融商品取引所」「金融商品取引業者」となったが、経過措置として「証券取引所」、「証券会社」の名称・商号を継続して使用することが認められている。
廃止された法律
外国証券業者に関する法律
有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律
抵当証券業の規制等に関する法律
金融先物取引法
この法律の制定前後においては「投資サービス法」という名称が仮称として、官庁の文書などを含めて使用された。ただし正式名称として金融商品取引法という名が採用されてからは、投資サービス法という名はもはやあまり聞かれなくなった。なお、「投資サービス法」と並べて用いられた言葉が「金融サービス法」であった。前者は投資商品(投資性のある金融商品)のみを規制の対象とするものとして、後者は投資性のないものも含めたあらゆる金融商品を規制の対象とするものとして用いられた。金融商品取引法は投資性のあるもののみを「金融商品」として規制対象とするので「金融サービス法」ではなく「投資サービス法」なのである。
この法律の一部について経済界、監査法人などを中心に「日本版SOX法」あるいは「J-SOX法」(オリジナルのSOX法はアメリカ連邦法)と呼称されている。これは金融商品取引法全体を指すのではなく、新たに義務付けられた内部統制報告書の提出に関する部分についてのみを指すのが一般的である。内部統制報告書ないしは内部統制システムについての詳細な基準については、内閣府令に委ねられている。「日本版SOX法」による日本の内部統制については「内部統制」の項にて詳述。
「この法律は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」とされている。これが原則であるが、ただし規定によっては別個の施行期日が定められている(外部リンク参照)。
金融商品取引法(証券取引法)改正の歴史
1948年:アメリカの法制を参考に証券取引法制定。証券取引委員会設立。情報開示制度の充実化。
1952年:証券取引委員会廃止。大蔵省理財局証券課・証券取引審議会へ移管。
1953年:証券業者・証券取引所の監督制度の強化。
1965年:経済不況に伴う不祥事の多発を受けた抜本改正。証券会社の免許制導入など規制強化。証券外務員の登録制度導入。
1971年:有価証券報告書の提出義務の拡大。半期報告書・臨時報告書制度の導入。公開買付制度の整備。
1981年:公共債の証券業務を金融機関に解禁。
1988年:証券先物取引の導入、社債への規制、内部者取引規制の導入。
1990年:株式などの大量保有の開示制度。公開買付制度の改正。
1991年:損失保証・損失補填の禁止。一任勘定取引の禁止。
1992年:子会社による銀行と証券の相互参入の解禁。有価証券の定義の変更。公募・私募の区別の明確化、情報開示制度の整備。
1997年:証券不祥事の続発を受けた各種の規制の強化。
1998年:店頭デリバティブ取引を定義。証券投資法人制度の創設。情報開示制度の連結ベース化。取引所集中義務の廃止。株式売買手数料の自由化。証券業の免許制の廃止(登録制)、投資者保護基金の創設。
2005年:時間外取引によって3分の1以上の発行済み株式を取得する場合に、一定の情報公開を義務付ける。虚偽申請企業に対する課徴金制度の制定。会社法改正に伴う修正。
2006年:大量保有報告書制度、公開買付制度の規制の整備。金融商品関連の規制の全体的な見直し・統合措置に伴い、法律の名称を金融商品取引法へ改題。各種の用語の変更。
参考文献・資料
松尾直彦・岡田大・尾崎輝宏「金融商品取引法制の概要」(旬刊商事法務1771号4ページ)