一見したところ、金星大気と地球大気は全くの別物である。しかし両者とも、かつてはほとんど同じような大気から成っていたとする説がある。この説によると、
太古の地球と金星はどちらも現在の金星に似た濃厚な二酸化炭素の大気を持っていた。
惑星の形成段階が終わりに近づき大気が冷却されると、地球では海が形成されたため、そこに二酸化炭素が溶け込んだ。二酸化炭素はさらに炭酸塩として岩石に組み込まれ、地球大気中から二酸化炭素が取り除かれた。
金星では海が形成されなかったか、形成されたとしてもその後に蒸発し消滅した。そのため大気中の二酸化炭素が取り除かれず、現在のような大気になった。
もし地球の地殻に炭酸塩や炭素化合物として取り込まれた二酸化炭素をすべて大気に戻したとすると、地球の大気は約70気圧になると計算されている。また、成分は主に二酸化炭素で、これに1.5%程度の窒素が含まれるものになる。これは現在の金星の大気にかなり似たものであり、この説を裏付ける材料になっている。
一方で、地球と金星の大気の違いは地球の月を形成したような巨大衝突の有無によるという考え方があるが、金星の地軸の傾きの原因は巨大衝突だという説もあるため、これらは両立しない。
また、地球に生命が誕生した、という事実も見逃すべきではない。なぜなら、地球に生命が誕生していなければ、金星のような姿になっていた、という仮説も存在するからである。この説によれば、
地球では海が形成されたため、そこに二酸化炭素が溶け込んだ。二酸化炭素はさらに炭酸塩として岩石に組み込まれ、地球大気中から二酸化炭素が取り除かれた。だが、生命が誕生し、微生物によって二酸化炭素の吸収及び固定が進まなければ、海が形成されたとしても、温室効果のため後に蒸発し消滅した可能性がある。結果、海中ならびに岩石中の二酸化炭素が再び放出され、金星のような大気になっていたとも考えられる。
さらに生命がなければ植物による光合成も起こり得なかった。結果、大気中に酸素が放出される事もないので、地球上に於いて冷却効果による寒冷化は起こらなかった。もちろん、オゾン層も形成されないので陸上に生命が進出する事もなかった。
二酸化炭素の固定に伴う大気中の二酸化炭素の減少は、多細胞生物が出現する古生代に活発になる。が、生命が地球上にいなければ、このような変化は起こりえなかった。それどころか、現在に至るまで、金星のような大気を持ったまま何の変化も起こらなかった事も考えられる。
このように、生命誕生がなければ、金星と地球はほぼ同じ姿になっていたとも考えられている。
先に触れたように、金星大気の上層部には4日で金星を一周するような強い風が吹いている。この風は自転 (rotation) 速度を越えて吹く風という意味でスーパーローテーションと言われる。風速は秒速100mに達し金星の自転の実に40倍の速さを持っていることになる。このことが実際に確かめられるまでは、昼の面で暖められた大気が上昇して夜の面に向かい、そこで冷却して下降するという単純な循環の様式が予想されていた。この現象は多くの人々の興味を引くこととなり様々な理論が提示されてきたが、未だに解明には至っておらず、金星最大の謎 の一つとされている。
なお、金星と同様に自転の遅い土星の衛星タイタンにも似たような風が観測されていることから、大気を持った自転の遅い天体に普遍的に存在する現象なのではないかともされる。
金星の赤道傾斜角は178°である。即ち、金星は自転軸がほぼ完全に倒立しているため、他の惑星と逆方向に自転していることになる。地球など金星以外の惑星では太陽が東から昇り西に沈むが、金星では西から昇って東に沈む。金星の自転がなぜ逆回転をしているのかはわかっていないが、おそらく大きな星との衝突の結果と考えられている。また、逆算すると金星の赤道傾斜角は、2°ぐらいしか傾いておらず、自転軸が倒立しているとは言え、ほぼ垂直になっていることになる。このため、地球などに見られるような、気象現象の季節変化はほとんどないと推測されている。
金星の自転は、地球との接近周期とシンクロしており、最接近の際に地球からはいつも金星の同じ側しか見ることができない(接近周期は金星の5.001日にあたる)。これが潮汐力の共振によるものなのか、単なる偶然の一致なのかについてもよくわかっていない。
地形金星の地図 金星はきわめて自転が遅いため、回転楕円体ではなく球形となっている。しかしながら、地表には凹凸があり最も高い白い部分は黒で示した平均半径 (6052km)、いわば「標高0m」から約12km程度持ち上がっている。経度0度、北緯65度の地点である。白と赤、黄色、緑はこの順で高く、青は標高0m未満の部分であり、最大1.5km窪んでいる
金星の地名には各国の神話における女神の名が多く冠せられている。例えばアフロディーテ大陸、メティス平原、フェーベ区域、ディオーネ区域、レダ平原、ニオベ平原、アルテミス峡谷(以上ギリシア神話)、ディアナ峡谷(ローマ神話)、イシュタール大陸(バビロニア神話)、ラクシュミ平原(インド神話)、セドナ平原(イヌイット神話)、ギネヴィア平原(アーサー王伝説の王妃)などがある。
金星表面には地球にある大陸に似て大きな平野を持つ高地が二つ存在する。イシュタル大陸はオーストラリア大陸ほどの大きさで北側に位置する。高さ11kmのマクスウェル山を含むラクシュミ高原などがある。南側の大陸はアフロディーテ大陸と呼ばれ、南アメリカ大陸ほどの大きさである。
有名な金星表面の立体画像としてマゼランが観測したデータに基づくものがある。しかしこの画像は、レーダーによって観測された地形データに着色し起伏を強調したコンピューター画像で、実際の金星の地表の様子からかけ離れたものであるので注意が必要である。この画像と紫外線画像が金色に描かれている事と「灼熱地獄」というイメージとが相まって、金星は起伏に富んだ山岳を白熱した溶岩が流れる惑星であるという誤解されることがある。実際の金星の表面は地球や火星と比較するとむしろ起伏に乏しいとされる。
欧米ではローマ神話よりヴィーナスと呼ばれている。メソポタミアでその美しさ(明るさ)故に美の女神イシュタルの名を得て以来、ギリシャではアフロディーテなど、世界各国で金星の名前には女性名が当てられていることが多い。天使の長にして悪魔の総帥とされたルシファー(Lucifer、光を帯びた者)も元々は明けの明星の神格化である。
日本では、平安時代に宵の明星を「夕星(ゆうづつ)」と呼んでいた。清少納言の随筆「枕草子」第254段「星はすばる。