交通事犯については、業務上過失致死傷罪が適用されるのが一般的であるが、重大な結果を伴う悪質な交通事犯に対して厳罰を求める世論に配慮して危険運転致死傷罪が新設された(刑法208条の2)。
同罪は、業務上過失致死傷罪(過失犯)の加重類型でありながら、危険運転という故意行為を行い死傷の結果が生じた場合を処罰するという故意犯(結果的加重犯)の形式をとっている。
危険運転に当たらない悪質な交通事犯にも対応できるように、特別類型として自動車運転過失致死傷罪が新設された(ただし、構成要件上業務上であることが不要となったので、厳密には過失致死傷罪の特別類型ではあっても、業務上過失致死傷罪の特別類型ではない)。
すなわち、2007年5月17日成立の「刑法の一部を改正する法律」(平成19年5月23日法律第54号)によって、刑法211条2項が次のとおり改正され、自動車による交通死傷事件に対する法定刑が7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金へと引き上げられた。施行は2007年6月12日で、この前日以前の交通事故については、自動車運転過失致死傷罪の新設にかかわらず、従来どおり業務上過失致死傷罪が適用になる。
刑法211条2項 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
罪数
道路交通法上の酒酔い運転の罪と業務上過失致死罪は併合罪となる(最大判昭和49年5月29日刑集28巻4号114頁)。
業務者が一個の過失行為で数名を死亡させた場合、業務上過失致死罪の観念的競合となる(大判大正2年11月24日刑録19輯1326頁)。
上述の定義に当てはまらず、業務上過失といえないような過失であっても、それに匹敵するような重大な過失(重過失)により死傷の結果を発生させた者については、業務上過失があった者と同様の罪責を問われる。何が重過失に当たるかは事案と社会通念に照らして判断されることになる。
下級審ではあるが、重過失致死傷罪の成立が認められた例として、自転車に乗って赤信号を見落とし、横断歩道上の歩行者の一団に突っ込んだ場合(東京高判昭和57年8月10日刑月14巻7=8号603頁)や、原因において自由な行為との関係で、病的酩酊の素質があり過去に度々飲酒酩酊に陥って犯罪を犯していたことを自覚していた者が、飲酒酩酊の上人を傷害した場合(福岡高判昭和28年2月9日高刑6巻1号108頁)などがある。
現行刑法典には、明治40年の制定当初以来、過失致死傷罪についてはその加重類型としての業務上過失致死傷罪の規定が存在していたが、重過失致死傷罪の規定はなく、やがて昭和22年の刑法改正により、過失致死傷罪についてその加重類型としての重過失致死傷罪に関する規定が同法211条後段に追加された。
韓国でも業務上の過失は刑事責任を問われ、2003年2月18日に発生した大邱地下鉄放火事件では事件での対応が不十分だったとして運転士と指令センター職員が業務上重過失致死傷容疑で逮捕・起訴された。
台湾や香港では不小心駕駛罪(不小心とは不注意、駕駛とは運転という意味)という自動車事故の刑事責任を問う罪が存在する。
アメリカでは医療事故・航空事故・鉄道事故で重大な過失が無い限り刑事責任は問わないこととなっている。
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^ ⇒答申(罰金刑の新設等のための刑事法の整備に関する要綱(骨子))
^ 高山俊吉 「 ⇒道路交通法が生まれた背景について…1960年代の話」『 ⇒弁護士高山俊吉WEBSITE』2007年3月22日。
^ 『 ⇒「刑法の一部を改正する法律案(自動車運転過失致死傷事犯関係)」に対する意見書』 日本弁護士連合会、2007年4月20日。
^ 上岡直見 『 ⇒原因解明を妨げる警察の「押収主義」─美浜事故に関して』 JANJAN、2004年8月21日。
^ 井上清成 『 ⇒医療現場を萎縮させる医師の刑事処分』週刊医療タイムスNo.1661、2004年3月1日。
^ 『 ⇒「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方」に関する見解と要望』日本産科婦人科学会、2008年2月29日。
関連項目ウィキブックスに ⇒刑法各論関連の教科書や解説書があります。
過失犯
重過失致死傷罪
過失致死傷罪
危険運転致死傷罪 - 過失犯ではなく、故意犯の一種である。
航空・鉄道事故調査委員会
割箸事故
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更新日時:2008年6月30日(月)05:58
取得日時:2008/07/16 03:13