アメリカの航空事故調査は特に司法長官が事件性を認定した場合、NTSBが調査した後で調査資料と事故捜査がFBIに移管され、司法機関が捜査を引き継ぐことはある。
近年、医療過誤に対し、自動車事故のように単純に業務上過失致死傷罪に問うべきではない、との批判が医療側や一部の法曹から出ている。その論旨は以下のようなものである[6] [7]。
刑事訴訟は個人責任追及が主眼となりがちで、事故調査機関での例と同様に真実の追究を妨げられ、医療機関や医療制度そのものの問題点の分析がおろそかとなり、医療の安全性向上への取組みや実効的な改善施策の継続がなおざりになる。
したがって、単純ミスを引き起こした背後要因の改善が期待できず、いくら特定の医療従事者個人の責任を追及し厳罰に処しても、ヒューマンエラーは減少しないとの指摘がある。
過失犯の犯罪構成要件の明確性が乏しく、どのような医療過誤をしたら処罰されるのかが曖昧であり、罪刑法定主義の観点から望ましくない。医療の不確実性及び厳しい諸制約を考えれば、事例ごとの総合的判断が必須であり、軽過失と無過失とを分ける注意義務や結果回避義務をあらかじめ明確に想定することも困難である。
刑事罰による威嚇効果が、医療従事者の医療行為の消極性・保守性へと連なり、医療技術を発展を阻害するのみならず、医療の萎縮化という弊害を招く(防衛医療)。特に福島県立大野病院事件は産科医療の崩壊を招いたとの指摘がある。
善意と使命感を持って患者の診療を行う大多数の医療従事者を他の犯罪者同様に取り扱おうとすることは、彼らに許容し難い心情的苦痛を産み出し、患者への善意を減退させ、患者との関係の崩壊に繋がるという点で、倫理的にも誤った考え方である。
例えば自動車等は運行しない時点では何ら危険はなく、自ら運行することによって危険を発生させている。これに対し、医療行為は医療従事者が危険性を創出するわけではなく、既に患者に生命身体の危険(疾患)が存在しており、既存の危険を減少・消滅させたいという患者の求めに応じて治療が行われ、また業務内容において人の死傷に直結するリスクは他の業務と比較して非常に高い。この差異を考えれば、医療過誤を自動車事故等と同列に扱う従来の法の運用は危険責任の本質を見誤っている。
以上から、刑罰には「被害者感情に配慮した応報」という意義しかなく、社会にとっては負の作用の方が大きい。刑事裁判はあくまでも法に則り司法が量刑を与えるものであり、遺族・被害者のための報復という考えは近代民主主義国家の刑事裁判としては受容できないという意見も根強い。
交通事犯については、業務上過失致死傷罪が適用されるのが一般的であるが、重大な結果を伴う悪質な交通事犯に対して厳罰を求める世論に配慮して危険運転致死傷罪が新設された(刑法208条の2)。
同罪は、業務上過失致死傷罪(過失犯)の加重類型でありながら、危険運転という故意行為を行い死傷の結果が生じた場合を処罰するという故意犯(結果的加重犯)の形式をとっている。
危険運転に当たらない悪質な交通事犯にも対応できるように、特別類型として自動車運転過失致死傷罪が新設された(ただし、構成要件上業務上であることが不要となったので、厳密には過失致死傷罪の特別類型ではあっても、業務上過失致死傷罪の特別類型ではない[要出典])。
すなわち、2007年5月17日成立の「刑法の一部を改正する法律」(平成19年5月23日法律第54号)によって、刑法211条2項が次のとおり改正され、自動車による交通死傷事件に対する法定刑が7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金へと引き上げられた。施行は2007年6月12日で、この前日以前の交通事故については、自動車運転過失致死傷罪の新設にかかわらず、従来どおり業務上過失致死傷罪が適用になる。
刑法211条2項 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
上述の定義に当てはまらず、業務上過失といえないような過失であっても、それに匹敵するような重大な過失(重過失)により死傷の結果を発生させた者については、業務上過失があった者と同様の罪責を問われる。何が重過失に当たるかは事案と社会通念に照らして判断されることになる。
下級審ではあるが、重過失致死傷罪の成立が認められた例として、自転車に乗って赤信号を見落とし、横断歩道上の歩行者の一団に突っ込んだ場合(東京高判昭和57年8月10日刑月14巻7=8号603頁)や、原因において自由な行為との関係で、病的酩酊の素質があり過去に度々飲酒酩酊に陥って犯罪を犯していたことを自覚していた者が、飲酒酩酊の上人を傷害した場合(福岡高判昭和28年2月9日高刑6巻1号108頁)などがある。
現行刑法典には、明治40年の制定当初以来、過失致死傷罪についてはその加重類型としての業務上過失致死傷罪の規定が存在していたが、重過失致死傷罪の規定はなく、やがて昭和22年の刑法改正により、過失致死傷罪についてその加重類型としての重過失致死傷罪に関する規定が同法211条後段に追加された。
世界では日本のように業務上の過失致死傷に刑事責任を問う国がある一方、刑事責任を問わない国も存在する。
韓国でも業務上の過失は刑事責任を問われ、2003年2月18日に発生した大邱地下鉄放火事件では事件での対応が不十分だったとして運転士と指令センター職員が業務上重過失致死傷容疑で逮捕・起訴された。
台湾や香港では不小心駕駛罪(不小心とは不注意、駕駛とは運転という意味)という自動車事故の刑事責任を問う罪が存在する。
アメリカでは医療事故・航空事故・鉄道事故で重大な過失が無い限り刑事責任は問わないこととなっている。
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^ 高山俊吉 「 ⇒道路交通法が生まれた背景について…1960年代の話」『 ⇒弁護士高山俊吉WEBSITE』2007年3月22日。
^ ⇒答申(罰金刑の新設等のための刑事法の整備に関する要綱(骨子))
^ 『 ⇒「刑法の一部を改正する法律案(自動車運転過失致死傷事犯関係)」に対する意見書』 日本弁護士連合会、2007年4月20日。
^ ただし、事故の分析、原因、勧告などを除いた「事実背景」については証拠採用が認められている。