醤油は麹を用いて製造することが特徴である。麹を用いた発酵食品は5 - 6世紀頃に中国で発明されたと考えられている。ちなみに500年頃の中国の『斉民要術』には、現代の日本の醤油に似た醤の製造法が記述されている。
現在の醤油の直接の起源は金山寺味噌とされる。
伝承によれば、13世紀頃、南宋鎮江(現中国江蘇省鎮江市)の金山寺で作られていた、刻んだ野菜を味噌につけ込む金山寺味噌の製法を、紀州(和歌山県)の由良興国寺の開祖法燈円明國師(ほうとうえんめいこくし)が日本に伝え、湯浅周辺で金山寺味噌作りが広まった。この味噌の溜(たまり)を調味料としたものが、現代につながるたまり醤油の原型とされている。ただし、この伝承を直接裏付ける史料は見つかっていない。
なお、「たまり」の文献上の初出は1603年に刊行された『日葡辞書』で、同書には「Tamari. Miso(味噌)から取る、非常においしい液体で、食物の調理に用いられるもの」と記述されている。また、同書で「醤油」の別名とされている「スタテ(簀立)」が、1548年成立の古辞書『運歩色葉集』に「簀立 スタテ 味噌汁立簀取之也」と記されていることも、醤油の成立を考える上でともども注目される。
日本国外への醤油の輸出は1647年にオランダ東インド会社によって開始された。伝承によればルイ14世の宮廷料理でも使われたという。フランスでの日本産醤油に関する記述は、『百科全書』(1765年)に現れる。当時の記録によると腐敗防止のために、醤油を一旦沸騰させて陶器に詰めて歴青で密封したという。用いられたビンは「コンプラ瓶」と呼ばれた陶器の瓶であり、多数が現存する。
濃口醤油・淡口醤油の登場うすくち醤油(左)、こいくち醤油(右)
江戸時代初期までは、日本の醤油の主流はたまり醤油で、主な産地は上記の湯浅に代表される近畿と讃岐(引田、小豆島)に集中していた。しかし、たまり醤油は製造開始から出荷まで3年かかり、生産量が需要に追いつかなかった。
1640年代頃、寛永年間、巨大な人口を抱えて醤油の一大消費地となっていた 江戸近辺において、1年で製造できる「こいくち醤油」が考案された。また1666年には、現在の兵庫県たつの市で円尾孫右兵衛が「うすくち醤油」を考案したと言われている。
明治以後、醸造技術及び企業形態の近代化が進む一方で、醤油が生活必需品である事に目をつけた政府が「醤油税」を導入。これは大正期まで続いた。
第二次大戦後、食糧難に伴い主原料の大豆が確保出来ず、日本の醤油製造は危機的状況に陥った。連合国軍最高司令官総司令部が醤油の重要性を理解せず、大豆を酸で加水分解した方が効率良く製造できるとの指導を行ったとも言われる。このため、苦肉の策として大豆の加水分解液を醤油に利用する方法が導入され、戦後しばらくの間はこうした醤油造りが続いた。
しかし、食糧事情の回復とともに本来の醤油造りが復活し、現在ではアミノ分解法等の製法は、ほとんど用いられていない。
現在、減塩食の流行や食事の欧米化に伴い、醤油の国内消費量は減少傾向にある。一方、日本人海外渡航者数の増加や、海外における健康食としての日本食の流行などにより、醤油の輸出量は増加していった。こうした状況を受け、キッコーマンはアメリカ合衆国に工場を建設するなど、醤油はグローバルな調味料として愛好されている。
様々な醤油近年登場した「卵かけ飯専用醤油」台湾の醤油インドネシアのケチャップマニス中国の醤油
日本の醤油には長い歴史があり、各地で独自の風味や味わいを持つ醤油が開発されてきた。日本農林規格(JAS)では、製造方法、原料、特徴などから、「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の5種類に分類されている。そして醤油は「しようゆ」と表記されている。
こいくち(濃口)
関東地方で発達した最も一般的な醤油。醤油の生産高の約9割はこれを占め、通常、単に「醤油」というとこれを指す。様々な料理の味付けに使われる。食堂にある醤油は、まずこれと思ってよい。原料の大豆と小麦の比率は半々程度である。生産地として、千葉県の野田市や銚子市、香川県の小豆島がある。
うすくち(淡口)
1666年に龍野の円尾孫右衛門長徳が考案したとされる。濃口よりも原料の麦を浅く炒り、酒を加えるのが特徴。元々は龍野でのみ消費されていたが、18世紀半ばに京都への出荷が本格化。以降、関西地方で多用されるようになった。濃口に比べると色や香りは薄いが、塩分濃度は高い。食材の色や風味を生かしやすいため、汁物、煮物、うどんつゆなどに好んで使われる。仕込み時に、麹の量を少なく、仕込み塩水の比率を高くする。圧搾前に甘酒を加えることもある。淡口は色が最重要視されることから、酸化して黒みが出たものは価値が低い。そのため、こいくちよりも賞味期限が短くなる。
たまり(溜り)
風味、色ともに濃厚なもの。刺身につけたり、照焼きのタレなどに向く。原料は大豆が中心で、小麦は使わないか使っても少量である。東海3県・九州地方が主産地である。
さいしこみ(再仕込み)
甘露醤油とも呼ばれる、風味、色ともに濃厚なもの。天明年間に周防国の柳井で考案されたと伝えられる。刺身、寿司などに向く。