逃走罪の中では、単純逃走罪が最も範囲が狭く、被拘禁者奪取罪・逃走援助罪が最も広い。
拘禁された既決の者とは、確定判決を受けて自由刑の執行のために拘置されている者(刑法12条2項・13条2項)と、死刑の言い渡しを受けて、執行までの間に刑事施設に拘置されている者(刑法11条2項)をいう。通説的見解によれば、罰金又は科料を完納することができないために、労役場に留置されている者(刑法18条1項・2項)も含む。
拘禁された未決の者とは、勾留状の執行のために拘禁されている者をいう(札幌高判昭和28年7月9日高刑6巻7号874頁)。また、刑事訴訟法167条及び224条による、鑑定留置に付された者も含まれるというのが通説的見解である(仙台高判昭和33年9月24日高刑11巻追録1頁参照)。一方、逮捕状の執行のために拘禁されている者は、「裁判の執行により」拘禁された者ではないから、加重逃走罪の「勾引状の執行を受けた者」にはあたるが、単純逃走罪の主体とはならないとするのが通説的見解である(東京高判昭和33年7月19日高刑11巻6号347頁参照)。
看守者の実力的支配を脱した状態をいう。未決の者が施設の外へ脱走したが、看守者がすぐに発見して追跡し、まもなく発見された場合、看守者の実力的支配を脱したとはいえないから、逃走未遂罪となるとした下級審の判決がある(福岡高判昭和29年1月12日高刑7巻1号1頁)。
逮捕状については既述。現行犯逮捕や緊急逮捕の場合、逮捕状が発行されていないので本条の主体となりえないとするのが通説的見解である。
通謀を逃走手段とした場合の主体については、二人が通謀して一人を逃走させた場合について、共同正犯の規定が適用されるか否かで争いがある。適用できるとする説もあるが、適用できず、行為の態様により、各人に単純逃走罪、加重逃走罪又は逃走援助罪を適用すべきであるとする見解が有力である。また、各人につき既遂又は未遂の判定をすべきであるとした下級審の判決がある(佐賀地判昭和35年6月27日下刑2巻5=6号938頁)。
暴行とは、保護法益から考えて、公務執行妨害罪と同じく、間接暴行でもよいとされる(広義の暴行)。
損壊とは、物理的損壊を意味するから、手錠及び捕縄を外しただけでは損壊にあたらないとされている(広島高判昭和31年12月25日高刑9巻12号1336頁)。
法的根拠に基づいて公的に拘束されている者を指す。単純逃走罪及び加重逃走罪の主体に加えて、現行犯逮捕や緊急逮捕された者も含まれるというのが通説的見解である。但し、公的とは言っても、児童自立支援施設に入所中の者や、精神保健福祉法により入院措置を受けた者は含まないとされる。一方、少年院に保護処分として収容された者は含まれるとした下級審の判決がある(福岡高宮崎支判昭和30年6月24日高刑特2巻12号628頁)。
器具の提供その他逃走を容易にすべき行為をした時点、あるいは暴行や脅迫をした時点で既遂に達する。実際に拘禁された者が逃走することを要しないとされる。但し、看守者逃走援助罪の場合は、拘禁された者が逃走した時点で既遂に達する。
参考文献
前田雅英 『刑法各論講義-第3版』 東京大学出版会、1999年。
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公務執行妨害罪
刑法「第二編 罪」
97条〜102条
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更新日時:2007年9月28日(金)21:55
取得日時:2008/08/24 17:03