日本の近世以前の用水路は、主に農業用水路として使われており、また土を掘って踏み固めただけのものであることが多かった。その形態は自然河川に近いものがあるが、ただし利水のための水路であるが故に頻繁に人手が入り、また渇水や人間の水利用によってその水量にも大きく影響を受ける、特殊な環境であった。
しかし、日本に灌漑農業が導入された弥生時代以降 2〜3千年の間に、この特殊な環境に巧みに適応し、農業用水路の環境を生活に組み込む生物が数多く存在する。 まず、比較的流れが緩やかで水深が浅く日当たりが良いため、プランクトンやコケなどの生育がよく、また土の河床ではミミズなども生息可能で、それを食糧にするタニシやオタマジャクシ(カエルの幼生)、魚類のメダカやヨシノボリなどが住み着く。すると、それを捕食する甲殻類のザリガニ、昆虫のタガメやヤゴ(トンボの幼生)などの生活を支える。さらに、それらを捕食するコウノトリやサギなどの生活も支える。人為的に造られた環境が、長い年月をかけて自然と一体化し、里山のそれと同様に、独特の生態系を築き上げてゆくこととなった。
なお、農業用水路における生態系は水田とほぼ一体であり、用水路と田を行き来して生活するものも多い。併せて田#環境としての「田」も参照のこと。
ところが、明治以降の近代になると、この状況が急激に変化する。土木技術の進展に伴う水路のコンクリート護岸化や、堰による水路の分断、暗渠化による日光の遮断、田畑での農薬利用などにより、稲作と共生してきた生物はその生活環境が激変し、生命が脅かされることとなる。さらに近年の都市化による生活排水・工業排水の流入や田畑の宅地化が追い打ちをかけ、その結果、かつてありふれた存在であったメダカやタガメなどが日本人の生活から姿を消し、さらには食物連鎖でその上位にいたコウノトリやタンチョウなども姿を消しはじめ、それぞれ現在では絶滅が危惧されるまでになり、トキのように絶滅したものも少なくない。裏返せば、彼等はそれだけ日本人の稲作文化と共生していたのである。
メダカ等の絶滅危惧種指定は、稲作文化が支えた生態系の存在を日本人に認識させることとなり、現在はたとえば兵庫県豊岡市でコウノトリが生活できる稲作環境を保全するといった取り組みにつながってゆく。経済と生活環境の共存は、現代社会における課題のひとつとして認識され、各所で取り組まれはじめている。
( )内は完成または供用開始年と水源(水系)、現在の流域自治体。複数の都道府県をまたいで流れる用水路の場合、区間が長いほうの都道府県の項目にいれる。
北海道・東北地方
真駒内用水(1879年、真駒内川、北海道札幌市)
北海幹線用水路(1929年、空知川、北海道空知支庁)
安積疏水(1884年、猪苗代湖、福島県郡山市)
茨城県
小場江用水(1656年、那珂川、茨城県常陸大宮市 - ひたちなか市)
霞ヶ浦用水(1994年、茨城県)
栃木県
蟇沼用水(江戸時代慶長年間、蛇尾川、栃木県那須塩原市)
巻川用水(1647年、熊川、栃木県那須塩原市)
木ノ俣用水(1765年、那珂川、栃木県那須塩原市)
穴沢用水
山口堀
新木ノ俣用水
徳次郎用水(1827年頃、田川、栃木県宇都宮市)
宝木用水(1859年、徳次郎用水、栃木県宇都宮市)
新川(1894年、宝木用水、栃木県宇都宮市 - 下野市)
那須疏水(1885年、那珂川、栃木県那須塩原市)
埼玉県
野火止用水(1655年、玉川上水、埼玉県新座市)
葛西用水路(1660年、利根川、埼玉県行田市 - 東京都足立区)
見沼代用水(1728年、利根川、埼玉県行田市 - 東縁西縁分岐点)
見沼代用水東縁 (東縁西縁分岐点 - 東京都足立区 )
見沼代用水西縁 (東縁西縁分岐点 - 埼玉県川口市 )
高沼用水(埼玉県大宮市 - さいたま市)
高沼用水東縁
高沼用水西縁
辻用水(埼玉県川口市 - さいたま市)