踊る大捜査線シリーズはこの世界設定上の時間軸での1997年1月の出来事を実際の1997年1月に放送する話で始まり、その後も「THE MOVIE」までは放送・公開時期とほぼ同じ時期の出来事を描く形で作られてきた。これは亀山プロデューサーによれば踊る大捜査線シリーズのコンセプトの一つである「リアリティー」の表れの一つであり、映画についても当初は時間軸を大きく遡った時期の話(例えば青島が会社員を辞めて刑事を目指すようになる話など)を描くことも検討されたが結局は上記の原則を踏襲する形となったとされている(なお、「警護官 内田晋三」においても、制作会議の中で「2年だけ遡ろう」という発言が出ていることから見て、「特に必要が無ければ作品中の時間は実際の公開時点と同じにする」という原則はある程度生きていると見られる)。しかしその後は描かれている時期と放送・公開時期が次第に離れてきており、「逃亡者 木島丈一郎」では初めて時系列を遡る話になった。「THE MOVIE」以後は映画で描かれた話の前日譚や後日譚をTVドラマ、舞台、DVD特典映像といったさまざまな手段で描く形をとっており、それぞれの話の前後関係が複雑になっているため下に時間軸に沿った一覧表を掲げる。
時間軸初放送・公開日区分タイトル事件名
1983年〜1985年2005年9月17日本野口江里子の日記−
1997年1月1997年1月7日TVシリーズ第1話サラリーマン刑事と最初の難事件会社役員絞殺事件
1997年1月1997年1月14日TVシリーズ第2話愛と復讐の宅配便湾岸署爆弾未遂事件
1997年1月1997年1月21日TVシリーズ第3話消された調書と彼女の事件盗難傷害事件
1997年1月1997年1月28日TVシリーズ第4話少女の涙と刑事のプライド連続強盗傷害事件・クラブ傷害事件
1997年2月1997年2月4日TVシリーズ第5話彼女の悲鳴が聞こえない広域連続傷害事件
1997年2月1997年2月11日TVシリーズ第6話張り込み 彼女の愛と真実大麻密輸事件・営業マン殺人事件
1997年2月1997年2月18日TVシリーズ第7話タイムリミットは48時間同上
1997年2月1997年2月25日TVシリーズ第8話さらば愛しき刑事栗の木坂男性刺殺事件・空き巣窃盗事件
1997年3月1997年3月4日TVシリーズ第9話湾岸署大パニック 刑事青島危機一髪品川主婦殺人事件
1997年3月1997年3月11日TVシリーズ第10話凶弾・雨に消えた刑事の涙警察官殺人未遂事件
1997年3月1997年3月18日TVシリーズ第11話青島刑事よ永遠に同上
1997年12月29日〜31日1997年12月30日TVスペシャル歳末特別警戒スペシャル第一興和銀行強盗人質事件・大凪町マンション強盗殺人事件
1998年4月1998年6月19日TVスペシャル初夏の交通安全スペシャル小凪町会社役員射殺事件
1998年10月1998年10月6日TVスペシャル秋の犯罪撲滅スペシャル会社内連続婦女暴行事件・曙荘放火殺人未遂事件
THE MOVIEの直前1998年10月12日〜16日TVスペシャル深夜も踊る大捜査線−
1998年11月21日〜23日※1998年10月31日映画THE MOVIE副総監誘拐事件・猟奇殺人事件・署内連続窃盗事件
THE MOVIEの後日譚2003年12月29日DVD特典映像プロジェクトK−
2001年9月2001年9月21日TVスペシャル踊る大ソウル線ゴージャス姉妹強盗殺人事件
2002年3月未映像化潜水艦事件
2003年11月16日〜20日2003年7月14日〜18日TVスペシャル深夜も踊る大捜査線2−
2003年11月21日〜23日※2003年7月19日映画THE MOVIE 2連続猟奇殺人事件・連続婦女暴行事件・連続スリ事件
THE MOVIE2の直後※2003年8月15日〜17日舞台舞台も踊る大捜査線−
2004年10月30日〜31日2005年12月10日TVスペシャル逃亡者 木島丈一郎警察官殺害事件・マンション立て篭もり事件
2004年12月23日2005年5月6日TVスペシャル前日も交渉人 真下正義−
2004年12月24日2005年5月7日映画交渉人 真下正義地下鉄実験車両乗っ取り事件
2004年12月24日
地下鉄事件進行中2007年1月27日TVスペシャル
(トリビアの泉の企画)警護官 内田晋三−
交渉人 真下正義の直後2005年12月17日DVD特典映像広報人 矢野君一−
2005年2月2005年8月27日映画容疑者 室井慎次新宿3丁目強盗殺人事件
2006年3月2006年10月28日TVスペシャル弁護士 灰島秀樹(秋葉原大学生殺害事件)
※「THE MOVIE」は事件の数日後に入院している青島を室井と和久が見舞うシーンで、「THE MOVIE 2」は事件の数ヶ月後に室井と青島が表彰されるが青島が新たな事件の捜査のために表彰式をすっぽかすシーンで終わっている。「舞台も踊る大捜査線」では、「THE MOVIE 2」で発生した事件と表彰式との間のひとこまを描いている。
この他に君塚良一の著書「裏ドラマ」の中に刑事ドラマ「デカ・ウォーズ」(DVD特典の『デカウォーズ』とは同名だが別物)にあこがれていた少年時代(1979年とされる)の青島俊作を描いたシナリオが収録されている。石原隆の提案で執筆したものの諸事情で没になったシナリオという紹介がある。君塚は同書の中で、「このシナリオをきちんと作ったことは青島という人物を深く理解するのに役だった」と述べているものの、この話が正規の時間軸の設定に含まれるのかどうかは不明である。
2001年の9月(踊る大ソウル線の時点)よりは前の時点で発生した「柏木雪乃が爆弾入りの縫いぐるみを抱えて東京湾に飛び込んだ」という未映像化の事件が存在する。「踊る大ソウル線」の中で少し言及されているほか「THE MOVIE 2」のエンドクレジットにそのシーンが一瞬映っているがその詳細は不明である。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
織田裕二演じる青島俊作巡査部長が主人公の「警察ドラマ」。銃撃戦や犯人逮捕までを追う従来の刑事ドラマとは異なり、警察機構を会社組織に置き換え、署内の権力争いや本店(=警視庁)と支店(=所轄署)の綱引きなど人間味あふれる警察官の姿を、湾岸署を中心に描いている。
青島刑事以外にも、恩田すみれ(深津絵里)・和久平八郎(いかりや長介)・真下正義(ユースケ・サンタマリア)などの湾岸署署員や事件の被害者でのちに刑事となる柏木雪乃(水野美紀)、また、湾岸署の署長ら三人組(通称『スリーアミーゴス』)、更には警察庁のキャリア・室井慎次(柳葉敏郎)らにもスポットライトが当てられる、いわゆる「群像劇」の要素が強いドラマであり、それが本作の魅力の一つになっている。
またドラマ内外の事項と連動する、いわゆる「ハイパーリンク」をふんだんに盛り込んで観客を何度も楽しませる手法を取り入れる一方、ストーカー・ドメスティックバイオレンス・少年犯罪問題・監視システムなど今日的社会問題を比較的早く物語に反映しており、この時代感覚を評価する向きもある。
踊る大捜査線は、実際は放送開始当初から高視聴率など期待されていなかった。しかし、製作者サイドはゴールデンドラマということもあり余りにも数字(視聴率)が悪ければストーリーの流れを変えるという枠組みを残しての脚本ということになった。大まかな設定は放送時と大差ないのだが、キャラ設定やストーリー設定に多少の柔軟性を残しながら描かれていった。
初期の構想段階では、和久の娘をすみれに設定し、その和久宅に居候する青島との恋愛も一案にあったそうである。その後は、青島と雪乃、室井とすみれの二本立てでの恋愛路線、また、青島と雪乃とすみれの三角関係も構想されている。実際、青島・雪乃間での恋愛に発展しそうな伏線や、すみれが青島に惹かれてゆく描写も散りばめられている。
だが、この恋愛ドラマ路線は、第1話が放映され視聴率が出た時点で取りやめが決定された。脚本家・君塚良一が著書「テレビ大捜査線」で述べているところでは、同じクールでフジテレビが放映していた恋愛ドラマ(月曜9時枠「バージンロード」のこと)の視聴率が比較的よかったため、同じ恋愛ものをぶつけるのは足の引っ張り合いになりかねないという亀山プロデューサーの判断によるとのこと。