責任能力
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刑事未成年

刑法第41条は14歳に満たない者を刑事未成年とし、その行為の不処罰を定めている。これは14歳未満の者を一律に責任無能力者とすることにより、その処罰を控えるという政策的意味を持つものと解されている。14歳に満たずに触法行為をした者は、少年法により触法少年として審判に付され、要保護性に応じて保護処分を受けることになる。


関連項目(刑法)

刑法

責任主義

原因において自由な行為

少年法

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律


民法上の責任能力

民法における責任能力とは、すなわち不法行為に関する責任を負う能力であり、その行為の責任を弁識するに足るべき知能を備えていることが要求される( ⇒712条)。責任能力を持たないものに対しては不法行為責任が認められず、損害賠償を請求することができない。

その場合には、これら責任無能力者の監督者が原則として責任を負うことになっている( ⇒714条)。ここで監督者とは、親権者成年後見人等の監督義務者、代理監督者、事実上の監督者であり、監督者としての義務を怠ったことについて責任を負うのであり、責任無能力者の違法行為自体について直接責任を負うのではない。また、責任能力が肯定された未成年者の監督者についても、監督義務違反があれば未成年者との共同不法行為( ⇒719条)という形で責任が認められる場合がある。


未成年者の責任能力

不法行為における未成年者の責任能力には、刑事事件における刑事未成年のような画一的基準は存在しない。従って、各事例において行為の種類および当該少年の成育度などを考慮して判断されることになる。一般的には12歳ぐらい(小学校卒業程度)を基準として責任能力の有無が判断されると言われている。


心神喪失者の責任能力

713条は、精神上の障害によって行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある者について、その状態にあるときに行った不法行為の損害賠償責任を負わない旨を定めている。ただし、故意または過失によって一時的に心神喪失状態に陥った者は不法行為責任を免れないとしている。


関連項目(民法)

民法

自然人

権利能力

行為能力

不法行為

原因において自由な行為


備考

責任能力の認識に関しては、歴史背景によって変遷が認められる。 法令上の処遇として文献確認できる最古のものに、「養老律令」(718年)が挙げられる。 身体や精神の障碍を軽い順から残疾、癈疾、篤疾の三段階に分け、それぞれの状態に応じて税負担軽減や減刑処置が定められていた。 「獄令 三九 年八十。十歳。及癈疾。懐孕。侏儒之類。雖犯死罪。亦散禁。」 (獄令三九 80歳以上、10歳以下、癈疾の者、懐妊中の者、侏儒は死罪にあたる罪を犯しても拘禁されなかった。)  ※「散禁」とは刑具を免ずるとの意。 ただ癲狂は免責の対象になる一方で職業上の制限もあったことが同律令に記されている。[1]

近代日本史において、責任能力という観点が強調されてくるのは、明治時代以後である。それ以前の江戸時代においては「御定書百箇条」78条に「乱心にて人を殺し候うとも、下手人となすべく候 然れども乱心の証拠、慥にこれ有る上、殺され候うものの主人ならびに親類等、下手人御免を願い申すにおいては詮議を遂げ、相伺うべき事 但し、主殺し親殺したりといえども、乱気紛れ無きにおいては死罪」とあり、当時の刑事法制では心神喪失や刑事未成年に対しては減刑が考慮される可能性のみに留まり、親殺しなどの大罪については一般の犯罪者と同様に直ちに極刑にされた(殺害された被害者が乱心の殺害者より身分が低い場合被害者の主人と親類など身内が許すと死刑でなく一族により家に閉じ込められる押し込めにされた。[2]また刑事未成年に対しては死刑を執行せずに15歳まで親戚の監視下に置かれた後に15歳になってから遠島の処分が執行され、入墨以下の刑については年齢を問わずにそのまま執行された)とされる。これは、当時においては今日の刑法学でいうところの客観主義を採用して故意・過失を問わずに行為の存在のみで同一の犯罪が成立したこと、縁座連座)に代表されるように社会的な見せしめのために犯罪者の血縁者という理由のみで未成年者への死刑が行われることもあった当時において、行為者の内面や状況を積極的に評価する意識が低かったことによるものである。


参考文献

浅田和茂『刑事責任能力の研究 限定責任能力論を中心として』成文堂、1983年8月、ISBN 479231058X

浅田和茂『刑事責任能力の研究』成文堂、1999年12月、ISBN 4792315123

岩井宜子『精神障害者福祉と司法』尚学社、1997年3月、ISBN 4915750485、増補改訂版: 2004年3月、ISBN 4860310187

大谷実『刑事責任論の展望』成文堂、1983年4月、ISBN 4792310407

小田晋作田明、西村由貴(共著)『刑法39条 なぜ精神障害者は許されるのか 少年犯罪少年法/犯罪捜査プロファイリング』新書館、2006年1月、ISBN 4403261043

アルトゥール・カウフマン (Arthur Kaufmann) 『責任原理 刑法的・法哲学的研究』九州大学出版会、2000年1月、ISBN 4873786029

呉智英佐藤幹夫(共編著)『刑法三九条は削除せよ!是か非か』洋泉社、2004年10月、ISBN 489691855X

最高裁判所事務総局編『責任能力に関する刑事裁判例集』法曹会、1990年3月、 ⇒[1]

佐藤直樹『大人の<責任>、子どもの<責任> 刑事責任の現象学』青弓社、1993年7月、ISBN 4787230670、増補版: 1998年12月、ISBN 4787231588

佐藤直樹『刑法39条はもういらない』青弓社、2006年6月、ISBN 4787232584


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki